「水引アーティスト」舟木香織~グッチも魅了した水引の美しさ
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番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
祝儀袋でもおなじみの、古くから伝わる伝統の飾り「水引(みずひき)」。この水引を「アート」として手掛け、様々な模様や絵柄を表現。国内だけでなく海外でも注目されている女性作家がいます。彼女はなぜ「水引アート」を始め、どうやって世界へ活動の場を広げて行ったのでしょうか?
きょうは、水引が結んだ世界との縁をめぐるストーリーをご紹介します。
細長く切った和紙を紐のように縒って、水のりを引いて固めた「水引」。祝儀袋や結納品、水引細工の材料として使われ、慶弔にまつわる日本の伝統文化を彩って来ました。
水引には「あわじ結び」「梅結び」「松結び」など、いろいろな結び方があります。これを組み合わせて鶴や亀などの縁起物や、ト音記号、トランペット、さらには立体の竜まで、様々なものを表現して注目されているのが、水引アーティストの舟木香織さん・43歳。
「水引は紙だけでできているんですと言うと、『え? 紙なのにどうしてあんなに丈夫なの?』と驚く方もたくさんいらっしゃいますよ」と言う香織さん。
もともと、ディスプレイデザイナーだった香織さん。企業で社内デザイナーの仕事をしているご主人・渉さんと9年前に結婚した際、結納飾りの立体的な水引を初めて目にして、その魅力に惹かれました。
「水引でこんなことができるんだ、こんな世界があったんだと感動して、私もやってみようと思ったんです」。
香織さんは、師匠でもある水引アーティスト・梶政華さんの教室に通い始め、アパレルの仕事をしながら、やがて自分でも水引で様々なアートを作るようになって行きました。
ちょうどその頃、実家の父親が病気で手術を受けることになり、仕事も辞め、水引教室に通うのも一時中断して看病に当たった香織さん。父親が元気になるまで、8ヵ月ほどブランクができました。
「何か作らないと、腕がなまってしまうなと思って……空いた時間にカラフルな和紙と水引を組み合わせて、ポップな感じの祝儀袋を作ってみたんです」
その写真をツイッターに載せると、予想以上に大きな反響を呼び、ネットで販売することに。ご主人の渉さんも背中を押してくれて、本格的に「水引アート」の製作を始めました。
もう1つ、「水引をライフワークにしよう」と決心するきっかけになった出来事がありました。当時、香織さんは子宝に恵まれず、不妊治療を受けていましたが、ようやく授かった子どもを流産。それでも諦めずに治療を続け、2度目の妊娠をしますが、1ヵ月後、再び流産してしまいます。
「不思議なんですけど、夢に赤ちゃんが出て来たんです。お別れを言いに来たんでしょうね。子どもとは縁がなかったけれど、私は人と人とを結ぶ水引で生きて行こう、って決めました」
2017年6月、香織さんは正式に師匠から独立し、「水引アーティスト」としての活動をスタート。最初の頃はなかなか注文が入りませんでしたが、コツコツ作り上げた「黄金の鳳凰」の画像をアップするなど、地道な努力を続けた香織さん。
そんなある日、思いがけないところから仕事依頼のメールが届きます。何と、イタリアの有名ブランド・グッチからでした。
「グッチ青山をリニューアルオープンするので、パーティーで水引アートの実演をやってもらえませんか?」……ホームページに掲載していた「黄金の鳳凰」が、パーティーにふさわしい日本の伝統的アートを探していたグッチ・イタリア本社の担当者の目に留まったのです。
去年(2018年)9月に行った水引アートの実演は大成功。これをきっかけに注目された香織さんのもとには、有名企業や一般のお客さんからの注文が続々と入るようになりました。また香織さんは、海外での普及活動も積極的に行っています。今年(2019年)2月には、知人が住んでいるインド南部の街・チェンナイで、水引アートのワークショップを行いました。
「海外に行って実感したことは、水引を贈られて喜ぶのは日本人だけではないってことです。水引は人と人の縁を結び、笑顔を引き出す世界共通のアイテム。これからも歴史と伝統をふまえつつ、新しいアイデアを採り入れた水引アートを作って行きたいですね」
八木亜希子 LOVE&MELODY
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