番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは、おにぎりを売る小さなお店「ロス フェリシス」を経営するお母さんと、店先に立つ中学生の娘さんやご家族のグッとストーリーです。
東京・世田谷区、千歳船橋商店街。小田急線・千歳船橋駅を出て、通称「森繁通り」をまっすぐ行くと、「ロス フェリシス」という小さなお店があります。2017年の暮れにオープンした持ち帰り専門のおにぎりのお店で、週1回で手作りのカレーも販売しています。
中学生の女の子が店先に立って、「こんにちは~!」「おにぎり、いかがですか~!」と元気に声を掛ける姿が評判になり、道行く人と語らうこともしょっちゅう。いつしか街の人たちのコミュニケーションの場となり、閉店する店も増えた商店街に、活気を取り戻しています。
「看板娘は長女なんですけど、私も娘も大阪生まれで、人と話すのが好きなんですよ(笑)」と語るのは、「ロス フェリシス」を経営する鈴木裕子さん・39歳。裕子さんは、中2・小6・0歳の3人の女の子の母親ですが、10年前に大阪から上京。
「上の娘2人は前の夫との子で、2人とも“子役”をやっていたんです」
長女が歌が大好きだったことから、習い事をさせる感覚で2人を大阪のある児童専門プロダクションに入れたところ、東京でもドラマやCMの仕事が入るようになりました。
「そのうち娘も私も、大阪と東京の往復がだんだんしんどくなって来て……前の夫と離婚したのをきっかけに、娘たちと一緒に東京へ行こうと決心したんです」
シングルマザーとして、まだ幼かった娘2人と上京した裕子さん。世田谷区のマンションを借りて住み始めました。社交的な性格で、ママ友たちや近所の人たちとすぐに仲良くなり、ホームパーティーを開くなかで、1歳上のご主人・規友さんと出逢います。
「最初はただの“飲み友達”だったんですけど、私からアタックしたんです(笑)」
現在はITエンジニアの規友さんですが、当時は会社を辞めたばかり。フリーでプログラミングの仕事をしながら、社員時代に貯めたお金で暮らしていて、とくに結婚願望はなかったそうですが、裕子さんと付き合ううちに子どもたちとも仲良くなって行きました。規友さんは初婚でしたが、「2人のパパになろう」と決意しゴールイン。結婚後、規友さんは裕子さんにこう言いました。
「子どもたちのことだけど……子役はもう、やめさせた方がいいんじゃないかな」
子どもたちは学校でからかわれるなどのストレスで、中2の長女は難聴になったり、転校も経験。小6の次女は学校に行かなくなり、不登校の子が通う世田谷区の教育支援センターに通っています。また、売れっ子になることで金銭感覚がおかしくなり、将来2人が地に足のついた生活ができなくなることを心配した規友さんは、こう言いました。
「君がお店を始めて、子どもたちに手伝わせたらいい。いまのうちに地道にお金を稼ぐことを覚えさせないと。……軌道に乗るまで、生活費は僕が働いて何とかするから」
規友さんはコツコツ貯めた貯金をはたいて、空きがあった住居付きの店舗を購入。一家でそこに引っ越して、裕子さんはおにぎりの店「ロス フェリシス」をオープンしたのです。
「長女が『私も手伝うから、ママ、一緒にやろう』と言ってくれたので、このお店を始める決心がついたんです」と言う裕子さん。長女は子役の経験を活かし、学校が終わるとお店の前に立って、街の人たちに元気よく声を掛けるようになりました。
普段から裕子さんは外国人支援施設や、障がい者施設でボランティア活動を行っていましたが、お店で障がい者の就労訓練を行ったり、お店を閉めようかと考えているお年寄りの相談に乗って、商店街をどう活性化するかを考える場にも使っています。長女も、お手伝いをしている児童館の子どもたちや、支援施設で知り合った外国人の友だちをお店に連れて来るようになりました。普段から地域貢献に積極的に取り組んでいる、裕子さんの背中を見て育ったからです。
裕子さんは言います。「『ロス フェリシス』は、スペイン語で「みんな楽しく」という意味があるんです。このお店が地域の人たちを結び、楽しく語らえる場所になったら最高ですね」
Los Felices(ロス フェリシス)
場所:東京都世田谷区船橋1-6-4
(小田急線・千歳船橋駅から徒歩3分 千歳船橋商店街・森繁通り沿い)
定休日:不定休
営業時間:曜日により異なります
電話:03-6413-0076
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
番組情報
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