韓国が日本との軍事協定の破棄発表~日本の国益を見直すいい機会
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月23日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。日韓関係の悪化について、アメリカの視点も踏まえて解説した。
韓国が日本との軍事協定破棄を発表
韓国大統領府は22日、日本と結んでいる軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄することを決めたと発表した。GSOMIAは主に北朝鮮などの脅威に対応することを想定して、日韓双方が機密情報をやり取りする際のルールを定めたもので、朴槿恵前政権下の2016年11月に締結して以来、日韓両政府による安全保障上の連携の象徴とされて来た。
飯田)24日までに日本に通告、協定は11月22日を最後に終了となります。メールやツイッターでもご意見をいただいています。“かずだるま”さんから、「GSOMIA破棄、この問題は話題になると思いますが、これについて左や右などの意見ではなく、中立公平的な観点からお話が聞きたいです。日本にとってのメリット・デメリット、第3者の立場からの意見が聞きたいです。通勤時に聞いています」といただきました。
宮家)私が適当な人間かどうかはわからないけれども。GSOMIA破棄について、きょう(23日)のニューヨークタイムズに何が書いてあるかと思って、早速見たのですよ。朝刊の紙面だったのですが、どこにも載っていないのですよね。インターネットバージョンでは、5時間くらい前に出ていましたが。日韓では大騒ぎだけれど、ニューヨークタイムズの紙面には一言も載っていなかったのです。
飯田)22日の夕方に一報が入りましたよね。
宮家)1つくらい記事があってもいいではないですか。ニューヨークタイムズだけが新聞ではないけれどね。
日韓について関心のないアメリカ
宮家)私が申し上げたいのは、要するにアメリカはあまり関心がないように見えるということです。もちろん関心を持つ人はいますけれども。できるだけ中立的に言えば、日韓は大騒ぎで、北朝鮮や中国も関心を示しているけれど、アメリカのほとんどの人は知らず、アジア関係の学者、研究者が言っているだけという状況なのです。我々は渦中にいるから大嵐に見えるけれども、実はコップのなかの嵐のように見られているということが、今回分かったことですね。それが何を意味するかと言うと、実はアメリカ人の多くはこの問題に関心がないということです。日韓関係がおかしくなったのは、特に韓国に問題があることは事実なのだけれども、それが前提でもう少し中立的に言えば、アメリカも何をしてくれているのかと言いたいのですよね。いまごろ「失望」を表明したりしていますが、一体何を言っているのかと思います。
北朝鮮に会うと決めたのはトランプ大統領
宮家)このGSOMIAの問題は、1965年の基本条約に韓国の最高裁が手を付けたときから、必ず問題になることはわかっていました。アメリカを批判するつもりはありませんが、大きな流れのなかで言えば、トランプさんが去年(2018年)3月、急に金正恩さんに会うと言い始めた。6月12日、シンガポールで実際に会いましたよね。そのシナリオは、文在寅さんが金正恩さんと話をしてやったものだと思います。トランプさんにそのような意図があったかどうかは別として、文在寅さんからすると、「アメリカは韓国のやり方を支持してくれているのだ」と思う。北朝鮮に会う必要もないのに会ってしまう、文在寅さんをその気にさせてしまう、でも、それを仕向けたのはトランプさんではないですか。彼に深い外交戦略があってやっているのならばいいけれども、要するにパフォーマンスでやっているだけではないのか。文在寅さんからすると、アメリカの支持を得られれば日本との連携なんて関係ない、我々はアメリカや北朝鮮と直接話すのだといって、どんどん日本との関係をないがしろにすることになります。
韓米日の同盟関係が離れつつある
宮家)もう1つ大事なことは、いつも私が言っていることですが、韓米日の冷戦時代の同盟関係から、韓国が明らかに離れつつあることですよね。東アジア地域の国際環境が変わったことが関係しているのだろうけれど、もう少し早くからアメリカがもっと強く言うべきだったと私は思います。GSOMIA問題を放置して、いまごろ失望したと言われても困る。安易に北朝鮮と会わないで、むしろ既存の同盟関係を重視するべきだったのですよ。それを重視しない方向にどんどん進んで行けば、文在寅さんだって「だったら日本との関係改善はやらない」という方向に進んで行くに決まっています。来るところまで来てしまったし、今後も行くところまで行くと思うけれども、決して日本や韓国、アメリカにとってもいいことはないですよ。笑っているのは北朝鮮と中国なのですから。そして、遠目でそれを笑っているのはプーチンさんです。何でこうなってしまったのか、全体が緩んで来ているなというのが、できるだけ客観的に見た見方ですよね。
日本の将来を考える機会になる
飯田)文在寅さんの個人的な資質がまったくないわけではないけれども、全体の流れとして、例えば韓国の大統領がこれから変わったとしても、状況は変わらないということですか?
宮家)そうですね。悪い意味ではなく、これは一種のポピュリズムだと思います。韓国はどちらかと言うと、左派のポピュリズムですよね。アメリカは右派のポピュリズムです。そういうものを見ていると、日本も気を付けなくてはと思いますよね。いまは冷静にものを見て、日本の国益は何かということを見直すいい機会だと思います。韓国はどうしようもないので、この敵でも友好国でもない状態を維持するのが精一杯だと思いますけれども。将来大きく東アジア安全保障情勢が変わって行くときに、日本はどのようにして生き延びるのかということを考える、いい機会になればと思います。
飯田)安全保障の専門家が指摘するのは、かつてアチソンラインというものがありましたが、対馬海峡が最前線になるかという。
宮家)1950年1月ですね。
飯田)でも、同じようなことになるのでしょうか。
宮家)韓国のずるいところと言ったら申し訳ないですが、中国や北朝鮮と関係改善をしたい一方で、米韓同盟もいまのまま維持したいという部分がある。日本は切り捨ててもいいけれど、アメリカは必ずついて来ると思っているのかもしれません。あれだけの基地を提供して米軍プレゼンスがあるのだから、まさかアメリカは撤退なんてしないだろうと、どこかで高を括っているところがあると思うのですよ。でもアメリカの反応を見ていると、本当に韓国は同盟国として大丈夫なのかということになれば結局、韓国の大統領は自国の首を絞めることになります。本当にそれでいいのかと言いたいですね。
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