「老後2000万円報告書」は撤回するべきなのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月19日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。金融庁が撤回することを決めた「老後2000万円報告書」について解説した。
金融庁、老後2000万が必要とする報告書の撤回決定
2019年6月に公表された95歳まで生きるには夫婦でおよそ2000万円の蓄えが必要とする、金融庁金融審議会市場ワーキング・グループの報告書案について18日、撤回されることがわかった。また報告書は隠蔽との批判を封印するために、案のまま放置し、金融庁のホームページ上でも掲載を続ける。
飯田)いまもPDFで確かにありますね。
鈴木)これはどう思いますか? 当時、老後2000万円に対して「ふざけるな」という声がけっこうありました。でも、逆に言うと年金問題、もっと広げれば社会保障や高齢者の貧困問題はけっこうあって、それを議論するためのいいきっかけになったのですよ。だから2000万円がなぜ必要なのか、という議論のきっかけにすればいいのです。それから、これは金融庁が「このように投資する方法もありますよ」ということを示す意味合いもあったのです。
飯田)あれは投資パンフレットのような書き方でしたからね。
鈴木)金融庁からしてみれば、「そんなつもりで言ったのではないのだけれど……」というところでしょう。
飯田)年金の話をするつもりではなかったのですね。
未来についての議論のきっかけになった
鈴木)これは結果的に、議論をするいいきっかけになったのです。社会保障は待ったなし、少子化はどんどん進む。私はいつも言っていますが、年金制度は破綻しますよ。そういうなかで、どういった社会保障をするのか。財源を考えたときに、消費税増税は国民は嫌ですが、財政負担をしなければいけません。それから、いまの社会保障制度が年金、医療、介護を含めて高齢者に偏って来ています。若い人はどうすればいいのか。全世代型なんて言われていますが、この言葉はちょっと怪しいと思います。お年寄りの年金を切ってしまいたいがために、と僕は思うのですが、そういったことを議論するきっかけにすればいいのですよ。文書は残しておいて、案のままで正式なものではないというのは、逃げ回っている感じがします。
飯田)撤回だったら、間違いを認めればいいと。
今度の臨時国会では社会保障などについて議論をすべき
鈴木)撤回しないで、これは議論のいいきっかけになると思うのですが、安倍さんも「出せ」と言えばいいのだろうけれど、選挙があったでしょう。選挙対策で対応に矛盾が出て来て、塞いでしまっている気がします。もう1つ、財政検証があったでしょう。夏休みの終わりにこっそりと出して、もうみんな忘れてしまっているけれど、経済成長は今後見込めないだろうというなかで、年金は大丈夫かという数字が出ています。これも議論しなければいけません。2000万円とセットでしょう。今度の臨時国会では、年金、医療、介護、社会保障の議論を早急に始めるべきだと思います。そのきっかけが2000万円の話だし、財政検証ということになりませんか?
飯田)そうですね。もともと年金そのものの位置付けは何かと言うと、いい暮らしをするために年金があるわけではなくて、普通の暮らしができるくらいのものです。ただ、その普通の暮らしのレベルが高くなっているのではないかという話もあって、そうすると蓄えも必要で、前々から準備しましょうね、ということを金融庁は訴えたかったのかもしれません。
鈴木)金融庁の意図は、いいか悪いかは別にして議論する材料をくれているのだから、これを曖昧にする必要は何もないですよ。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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