今年の東京モーターショー、新境地を開けるか?
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「報道部畑中デスクの独り言」(第152回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、開催時期が迫る2019年の「東京モーターショー」について---
2年に1度のクルマの祭典、「東京モーターショー」の季節になって来ました。2019年、今回で46回目。東京・江東区の「東京ビッグサイト」などで開かれます。10月に入って、各社の出展内容も徐々に明らかになって来ています。
主催の日本自動車工業会によりますと、今回のキャッチフレーズは「OPEN FUTURE」。これまでの展示中心のショーから転換し、多様な業界と協力して未来の乗り物を体感できる内容にするということです。
先ほど、東京ビッグサイト“など”と申し上げましたが、会場は「青海エリア」と「有明エリア」に分かれ、トヨタ自動車のショールーム「MEGA WEB」も活用されます。
「FUTURE EXPO」と名付けられたゾーンでは、自動運転車両はもちろんのこと、NECの空飛ぶクルマ試作車、トヨタの月面探査車などの宇宙技術も披露。盛りだくさんで会場を回るのが大変そうですが、会場の移動もパーソナルモビリティなどの次世代車両で、試乗しながら行う機会が設けられるということです。
「日本の様々な産業が集まり、楽しい未来をつくろうというのが今回のお祭りだ」
トヨタ自動車社長で日本自動車工業会の豊田章男会長は、9月26日の記者会見でこのように話しました。来場者の目標は100万人を掲げます。豊田会長は「100万人集まると誰もが知っているイベントになる」と、その理由を語るとともに、次のように述べました。
「販売促進の手段として、東京モーターショーの意味合いはかなり薄れて来た。現在の実力値では(来場者数は)70万人が限度ではないか。自動車だけで未来を表現するには限界があるのではないか」
東京モーターショーは「全日本自動車ショウ」として、1954年に産声をあげました。当初、会場はニッポン放送のすぐ近くの日比谷公園。その後、後楽園競輪場や晴海の国際見本市会場、千葉の幕張メッセへと会場を移します。
バブル期の1989年に会場を移転したのが幕張メッセ。規模も大きくなり、出展社も約350社に拡大。1991年には来場者数が200万人を突破し、乗用車と商用車に分けて、毎年行われていた時期もありました。
しかし、リーマン・ショック後の2009年、海外のメーカーが軒並み撤退、ブースが“スカスカ”になってしまいました。自動車メーカーのブースが陣取る「一等地」には、従来は会場の片隅に「脇役」として固めていたトミカやチョロQ、プレステソフトのブースが、出展を見送った海外メーカーのブースを埋めていたことに、少なからぬ衝撃を受けたことを思い出します。
この年の来場者数は61万4400人あまり。前回2007年の142万5800人の半分以下でした。思えば、あのころから東京モーターショーは「曲がり角」にさしかかったのかもしれません。
2011年からは会場は再び東京に戻り、東京ビッグサイトでの開催となりましたが、スケールが縮小されたことは否めず、来場者はこれまでに77万人~90万人程度。次世代技術のショールーム的な性格を強める一方で、臨海副都心のエリアで副次的なイベントを行うなど、様々な試行錯誤を続けています。
自動車のショーというのは世界的にも頭打ちとは言え、電機・エレクトロニクスのショーとの融合が進んでいると言われます。伝統的なデトロイト自動車ショーを持つアメリカでも、CES(Consumer Electronics Show)での新車発表が増えているという現状があります。
日本でも、日本版のCESに相当するCEATECと呼ばれる見本市がありますが、そうしたものと将来、一本化されてしまうのではないかという見方もあります。
「(自動車ショーは)CESのように生活全体の未来が示される場で、いっしょに未来をつくろうというやり方に変わって来ている。東京モーターショーもそういった場にモデルチェンジして行かないといけない。そうでなければいわゆる“ジリ貧”のまま、東京モーターショー自体が終わってしまうのではないか」(豊田会長)
今回の東京モーターショーは、各メーカーの若手が知恵を出し合ったそうですが、こうした自動車業界の流れに対する「危機感」が現れているとも言えるでしょう。やや“ごった煮”感のある印象ですが、今回の取り組みがどのような結果になるのか、注目したいと思います。
東京モーターショーは、10月24日~(一般公開は25日から)11月4日までの開催です。(了)