「報道部畑中デスクの独り言」(第155回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、台風19号による被害と、災害に関する今後の課題について---
高校で地理を学んだ方は、ケッペンの気候区分をご存知かと思います。世界の気候を気温などに応じて熱帯(A)、乾燥帯(B)、温帯(C)、冷帯(D)、寒帯(E)に分けるというものです。
日本の気候は北海道を除いて温帯に属しますが(温暖湿潤気候Cfa 温帯は「最も寒い月の平均気温がマイナス3度以上18度未満、最も暖かい月の平均気温が10度以上」を指す)、次から次へと来る自然の牙に、日本列島は気候的に別のステージに移ったのではないか…こんなことを考えます。
「気候変動の面で新たな局面を迎えたと改めて感じる」小泉環境大臣の弁です。
9月の台風15号に続き、今回の台風19号も広い範囲で甚大な被害をもたらしました。直撃した伊豆半島、関東のみならず、進路から離れた東北、信越地方でも多くの河川が氾濫・決壊…北陸新幹線の車両が水没するなど、「現在進行形」の被害が続いています。
私は一部で氾濫した多摩川周辺を取材しました。丸子橋の南詰=川崎市側。安全を確保した上で中継レポートを行いました。
普段、河川敷ではグラウンドで野球やサッカー、テニス、ラクロスに興じる人たちがいます。そのほか、ゴルフ練習場、ランニングコースがあり、バーベキューを楽しむ人たちもいます。いわば市民の憩いの場なのですが、10月12日にはそれらがすべて水没。堤防護岸のコンクリートにまで泥水の濁流が達し、グラウンドに植えられた大木がわずかに顔を出しているという危険な状況でした。
濁流は大量の流木を運んでいます。雨はこれでもかという感じで垂直にたたきつけるときもあれば、いたる方向から殴りかかるように頬をたたき、目が痛くなるほどでした。堤防では消防の救助工作車が止まり、消防隊員は行方不明になった人がいないか確認をしていました。
その後、多摩川周辺は東京・世田谷区の二子玉川付近で氾濫。川崎市でも、高津区で支流の川の水が“本流”の多摩川に行く手を遮られる「バックウォーター現象」が発生し、男性1人が死亡。中原区では、地下の水路で水が逆流することで起こる「内水氾濫」がありました。マンホールから水が噴き出し、腰元あたりまで浸かった住宅も。
私は12日夜、多摩川から約1.5km離れた武蔵小杉駅でのレポートで、周辺の南武沿線道路が冠水し、駅の東側が通行止めになっていることをお伝えしましたが、その先でさらなる浸水被害がもたらされていたわけです。
一夜が明けた多摩川は晴れた空のなかでも、依然、濁り水が急流をつくっていました。上流ではまだ惨状が続いていることを物語ります。中原区の上丸子地区は、浸水が解消した後、住民が後片付けに追われていました。うずたかく積まれた災害ゴミ。いすや机などの家具、水をかぶって使えなくなった掃除機などの電化製品もありました。
「道路からだと1m20cm(まで水が来た)。2階に避難したが、1階に母親がいておんぶして上に上がった」「家のなかぐちゃぐちゃ。冷蔵庫ひっくり返っちゃった。ここは土地が低いから」がっかりした表情で住民が話していました。
「下水を流す場所が悪いんじゃないのか。一丁目は何ともないのに。腹立つ」…やり場のない怒りの声も。浸水した一帯は以前、川があり、暗渠になっているところも多いと言います。ハザードマップとも符合する地域だったということです。
数多くの課題が突きつけられた今回の台風被害。この他、取材で感じた課題は「ペットの避難」です。
12日夜、武蔵小杉駅の改札前には15人ほどの人たちがいました。なかにはビニールシートを敷いて座り込んでいる人も。電車を待っているのかと思いきや、「ペットを避難所に入れられないからここに来た」と話します。このほかにも荒れた天気のなか、犬を散歩させている人を何人も見ました。
「こんな天気のなか、なぜ?」と思われるかもしれませんが、犬は運動をさせないとダメになってしまうそうです。思えば、昨年(2018年)の北海道胆振東部地震のときも避難所の奥に、車にロープでくくりつけられている犬がいました。
人命優先、またアレルギーの問題もあるため、ペット同伴が難しいところもあるのですが、少子化・高齢化社会のなか、ペットを家族の一員と考えている人も少なくありません。避難所でのペットとの「共存」は今後、避けられない課題になって来ると思います。
次から次へと課題を突き付け、「学び」を必要とする自然の猛威。いまお伝えしたのは被害のごく一部。台風被害はまだまだ「現在進行形」です。(了)