災害時の情報伝達のあり方とは?【みんなの防災】

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「報道部畑中デスクの独り言」(第87回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、防災に関する情報伝達について解説する。

真備町の避難所の1つ、二万小学校。奥にある体育館が避難所になった(8月20日撮影)

防災の日の特別番組の後、台風21号、北海道の地震と大きな災害が相次ぎ、小欄のテーマも今月は『みんなの防災』と称して災害関連一色になりました。
北海道地震の項では、正しい情報を正しいタイミングで発信することの重要性についてお伝えしました。また、9月1日に放送した特別番組のなかでも、情報伝達のあり方について触れました。今回は大雨に関する情報について、その歴史を含め、改めておさらいをします。

気象情報というのは、基本的に、注意報と警報で構成されるのはご存知かと思います。現在でも「警報」が発表されると、ニッポン放送でも速報でお伝えしますし、「警報」と聞いて、身構える方が多いと思います。
ただ、最近はこのほかにも様々な防災情報があります。これらは大災害が起きるたびに、教訓として新設されたケースがほとんどです。

避難所で住民は段ボールで仕切られたスペースで過ごしていた(真備町の二万小。住民の許可を得て撮影)

例えば、今回の西日本豪雨では11の府県に大雨特別警報が発表されました。特別警報というのは、「特別」というぐらいですから、いわば防災情報の「最高峰」です。ご存知の通り、2011年の東日本大震災や紀伊半島豪雨をきっかけに2013年に設けられました。
定義としては数十年に1度の豪雨があった時、あるいは予想される時、それが都道府県のような広い範囲に渡る時に発表されますが、気象庁の関係者に言わせると、「もうアカン時」です。それまでに「手を打ちましょう」ということで、様々な情報があります。

まずは記録的短時間大雨情報、これは大雨警報発表中に出されます。数年に1回程度しか起こらないような、1時間に100ミリ前後の猛烈な雨、「息苦しくなるような圧迫感のある降り方」と表現されますが、これが観測・解析された場合に気象台から発表される情報です。これはいまから36年前、1982年に起きた「長崎大水害」をきっかけに設けられました。このときは1時間に187ミリの雨が観測されました。この記録は現在も破られていません。

次に土砂災害警戒情報、これも大雨警報発表中に発表されます。土砂災害の危険性が高まった場合に、気象台と都道府県が共同で発表する情報です。これも実は1999年に広島で起きた豪雨をきっかけに、大雨警報の見出し文に使われるようになり、2008年の3月にすべての都道府県で発表する体制が整いました。

そのほか、指定河川洪水予報、お住まいの近くの川について、氾濫の可能性をも伝える情報です。川の水位や予想される雨の量を基に、4段階あります。下から、氾濫注意情報、氾濫警戒情報、氾濫危険情報、一番上は氾濫発生情報です。

ちなみにこれは河川に関わる情報ですので、管轄によって「国土交通省と気象庁」もしくは「都道府県と気象庁」が共同で発表することになっています。水位と予想される雨量のデータを見ることからこうなっていますが、片や河川管理のため、片や気象情報のため、これがときに「縄張り意識」の状況を生むことがあるようです。

二万小学校の近隣では仮設住宅の建設が着々と進んでいた(8月20日撮影)

そして、こうした情報を基に市町村長、つまり自治体が出すのが、避難情報です。この歴史は古く、1961年に施行された災害対策基本法にさかのぼります。この法律は1959年の伊勢湾台風を機に制定されましたが、第60条に次のように記されています。
「災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人の生命又は身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、避難のための立退きを勧告し、及び急を要すると認めるときは、これらの者に対し、避難のための立退きを指示することができる」。

この災害対策基本法に基づいてガイドラインが制定され、「避難勧告」「避難指示」という表現となりました。
この避難情報、現在は3段階あります。まずは「避難準備・高齢者等避難開始」。これは高齢者や体の不自由な方に早めの避難行動を促すものです。2004年の新潟・福島豪雨を機に「避難準備情報」と設けられました。

しかし、おととし2016年の台風10号…西へ東へ行ったり戻ったりしたうえに、北に向きを変えて、東北に上陸したという「迷走台風」でしたが、このとき岩手県を中心に高齢者に大きな被害が出ました。これがきっかけで高齢者への浸透を図るため、名称が「避難準備・高齢者等避難開始」に改められたのです。

「避難勧告」は速やかな避難を勧め、促すもの。そして最も緊急度の高い情報が「避難指示(緊急)」です。これも当初は単なる「避難指示」でしたが、避難準備情報の名称変更の際に、末尾に(緊急)が加えられて現在に至っています。テレビをよ~く見るとそう書いてありますし、各情報を色分けするなどの工夫をしています。

真備町では新たな形の仮設住宅の建設が進んでいた(写真右は森田解説委員)

このように情報は大災害が起きるたびに多様になっていきました。西日本豪雨でも取材で詰めていた気象庁では、きめ細かな解説が行われていました。
しかし、こうした情報は受け手にとってはどう映るのでしょうか、被災地で話を聞くと、「携帯に警告音がひっきりなしに鳴るので、無視してしまった」という声が聞かれました。避難のきっかけは「長男から電話があった」「防災無線の声がただならぬ状況だった」など、口コミや肌感覚という人が多かったのが現状です(なお、こうした判断は決して間違ってはいないです)。

コンテナ型の仮設住宅。家屋部分の組立は別の場所で行う

また「避難勧告」と「避難指示(緊急)」の違いを、この豪雨で初めて知った人もいました。東京都内で聞いたなかでも、「避難勧告の方が上ではないか」「避難勧告は“まだ避難しなくてもいい”」など、誤った認識を持っている人もいたのです。
こうしたことから特に「避難指示」について、『避難命令』や『すぐ逃げろ情報』にした方がいい」という意見もあります。特別番組に出演した山村武彦さんもこう話していました。

一方、内閣府の担当者に話を聞いたところ、担当者は個人的意見としながら、「避難というのは人から言われてやるものではない」「命令にすると住民の判断を奪い、人から言われるまで待ってしまう」「出なければ動かないという状況になってしまうのではないかという懸念がある」と話していました。罰則が伴うイメージもあるので適切ではないということのようです。こう聞くと、何やら「お上の目線」「責任逃れ」という印象を持ってしまうのですが…難しいところです。

トレーラー型の仮設住宅。結構おしゃれなデザインで、100年はもつという

ただ、避難情報はあくまでもガイドラインに沿って市町村長が判断をするもので、ガイドラインに法的拘束力はありません。よって、本当に危険だと思えば、防災無線などで「これは命令です!」「すぐ逃げて下さい!」というような強い言葉で避難を促しても法律違反にはならないということです。市町村長自身がそうした発言に対する責任を取れるかどうかの話です。

コンテナ型仮設住宅の室内

仮に「避難指示」を「避難命令」に変更する場合は、災害対策基本法の改正が必要になるだろうと内閣府では話しています。情報のスリム化や法改正検討の余地は大いにありますが、こうした現状では、各々の情報を私たちが正しく認識することが重要です。
気象庁のHPには、内閣府の「避難勧告などに関するガイドライン」を基に作成した一覧表があります。報道部でもこれを印刷し、目につくところに貼ってあります。
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/images/arasute_5.png

なお、小欄では防災の日の特別番組でもお伝えした、西日本豪雨の被災地の避難所及び仮設住宅についての画像もあわせて掲載いたします。建設中の画像もありますが、いずれも番組の取材に訪れた8月20日に撮影したものです。(了)


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