防災の日特別番組を終えて…首都圏での備え【みんなの防災】
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【報道部畑中デスクの独り言 第85回】
9月1日の防災の日、特別番組を放送した次の週、台風21号と北海道の地震による被害が相次ぎ、小欄でも緊急取材によるコラムを展開しました。まさに今年の日本は「災害列島」と言っても過言ではない年になりそうです。
一方、防災の日の特別番組では1時間半という限られた時間のなかで伝えきれないテーマもありました。いささか旧聞に属しますが、ここで改めて取り上げていきます。
今年は本当に数多くの台風が襲来していますが、そればかりでなく前線や低気圧、突然、大気の状態が不安定になることで発生する豪雨は、首都圏でいつ起きてもおかしくありません。台風21号で顕在化した暴風や高潮への警戒についても同様です。
東京の水害については番組でも「江東5区」と呼ばれる墨田・江東・足立・葛飾・江戸川の各区で大規模水害が発生した場合の被害想定などをお伝えしました。また、地下鉄の対応についても取り上げました。
実は首都圏の地下鉄の水害対策で大きな柱になっているのは、2009年1月に中央防災会議の専門調査会がとりまとめた「荒川堤防決壊時における地下鉄等の浸水被害想定」です。この想定では、3日間に550ミリ以上の雨が降り、荒川の岩淵水門付近で堤防が決壊し、東京都内では北区、荒川区、台東区、中央区など隅田川周辺に大規模な浸水が発生するとしています。
具体的には東京メトロの場合、堤防の決壊から10分後には地下鉄南北線赤羽岩淵駅で浸水が始まるなど、最大で17路線97駅、延長およそ147kmの線路が水没する可能性があるということです。
特に丸ノ内や大手町付近では地表に到達するよりも6時間ほど早く、トンネル経由で洪水が到達すると想定されています。つまりトンネルが導水管となって被害が拡大する危険があるというわけです。
東京メトロではこれらの被害想定を含めた「ハザードマップ」を基準にし、対応しているということで、具体的には駅の出入り口の多くに止水板、防水扉を設置しています。要町駅などでは入口がシャッターになっているところもあります。また、トンネルにつながる換気口には浸水防止機という水が浸入を防ぐ板があり、大雨洪水警報が発表されると一斉に閉鎖される仕組みです。
さらにトンネルには防水壁や防水ゲートを設置していますが、これを使って閉鎖するには、操作時間のほか、列車が電気を止めたりして準備作業には1時間程度が必要だということで、これは“最後の手段”と言えそうです。
一方、水害はこうした大規模河川だけがもたらすものではありません。西日本豪雨でも支流の川が「バックウォーター」と呼ばれる現象により、氾濫や堤防決壊に至りました。東京の中小河川の場合は大丈夫なのか?
まずは河道の容量…川が許容できる水の量を増やすことが必要です。川幅を広げたり、川底を掘り下げるなどの方法がありますが、都市の河川ではどうしても限界があります。
これに代わる方法の一つが調節池です。豪雨で増えた水を調節池に向けることで、河川の増水を抑えるというものです。
都庁担当の時にこの調節池を見たことがありますが、巨大なトンネル状になっていて、こんな所に水をためるのか…と驚いたことを覚えています。東京都建設局によりますと、現在は都内で28個あり、7個が整備中です。基準については、当初は1時間雨量50ミリでしたが、ゲリラ豪雨の増加に伴い、2012年からは東京23区では75ミリ、多摩地区では65ミリに引き上げられました。
都内で最も大きい調節池は神田川・環状七号線地下調節池。25mプール1,800杯分にあたる54万立方mの水をためることができます。調節池にはこれまでに41回、水が入ったことがあります。2013年9月に上陸した台風18号では日本各地で甚大な被害をもたらし、大雨特別警報が初めて発表されました(京都・滋賀・福井)が、この時に調節池の水は満杯になったといいます。
そして、私たちが映像などで目にするのはマンホールから水が噴き出す場面です。マンホールの対策についてはどうなっているのか…?
東京都下水道局によると、マンホールの下には下水道管が通っています。雨が集中したときを想定し、この下水管は余裕をもって大きなものが使われていますが、想定雨量を超えた場合や、ポンプで吐き出しても間に合わない場合は、マンホールから水が噴き出す可能性があるそうです。
その想定雨量ですが、現状では1時間に50ミリとされています。これは気象庁の予報用語では「非常に激しい雨」…滝のように降る雨と形容されます。しかし、昨今の「ゲリラ豪雨」のような現象に対応するため、1時間に75ミリの雨に対応できるように対策を進めているということです。しかし、先月には東京・世田谷区で1時間に110ミリの雨が解析され、記録的短時間大雨情報が発表されました。このような100ミリ以上の雨については今後の課題と言えそうです。
ちなみに、マンホールから水が噴き出すと、人が転落する危険があります。このため東京23区では、マンホールのふたと穴の部分をフックで止め、水が噴き出た場合は何センチか浮くような“遊び”を持たせているそうです。こうして水を逃がすことでマンホールが外れてしまうことを防いでいます。23区では大半のマンホールにこのような措置がとられているということです。
首都圏の水害対策も常に進化しています。これからも進化することが求められます。
番組終了後には、ゲストとして出演した防災システム研究所所長、防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんに、携帯している防災グッズを見せていただきました。
マスク、使い捨てカイロ、ポンチョ、非常用トイレ、煙から身を守るフード、笛、乾電池式の携帯充電器、首にかけるライト、ラジオ、ライト、スマホに接続できるTVチューナー、飴、チョコレート、洗口液…これだけのものがポーチの中にコンパクトに収まっていました。なるほどこれならば持ち運びも苦にはなりません。やはり専門家の防災への心構えは違う…改めて感じました。(了)