ミスタードラゴンズ逝く……在りし日の想い出

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「報道部畑中デスクの独り言」(第170回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、2020年1月17日に亡くなった“ミスタードラゴンズ”、高木守道さんについて---

プロ野球 中日の高木守道のバッテング=1980年9月13日 写真提供:産経新聞社

中日ドラゴンズで名二塁手として活躍した元監督の高木守道さんが亡くなりました。享年78歳。亡くなる5日前には地元のラジオ番組にも出演していたといいますから、まさに急逝でした。

中日で「ミスタードラゴンズ」として必ず名前の挙がる人物は、西沢道夫さん、立浪和義さん、そして高木さんの3人ですが、特に高木さんは片や「ミスタージャイアンツ」と呼ばれた長嶋茂雄さんと活躍の時期が重なっていたこともあり、この称号が最もふさわしい人と言っていいでしょう。

「攻・走・守の三拍子」、この言葉は高木さんのためにあるようなもので、なかでも「バックトス」に代表される美しい守備は多くのファンを魅了しました。監督時代は1994年10月8日、「10・8対決」と呼ばれる「長嶋・巨人」との死闘がいまも語り草になっています(この試合の平均視聴率はプロ野球中継史上最高の48.8%を記録しました 関東地区 ビデオリサーチ調べ)。

「土壇場」…数々の名シーンが思い浮かぶなか、私が最も印象に残っている試合は、1974年10月11日のヤクルト対中日戦です。

優勝へのマジックナンバー3で臨んだ神宮球場の一戦は、2対3のビハインド。この試合に敗れると、残り4試合。大洋(現・横浜D℮NA)戦2試合、巨人戦2試合で、優勝の行方はV10に向けて猛追する巨人との直接対決に持ち越される可能性がありました(もしそうなれば「10・8対決」と同様、歴史的な一戦になったでしょうが…)。

何としても負けられない試合でしたが、9回表、二死三塁の状況で、高木さんは三遊間をゴロで破るタイムリーヒットを放ったのです。「やった、やったー」。当時小学2年生、ラジオでこの試合を聞いていた私は、うれしさとともに力が抜けたのを覚えています。

ただ、引き分けでもマジックが減るということを当時は知らず、試合終了後、実況アナが「これで中日のマジックは1つ減って2になりました」というコメントを聞き、マジックの意味を知ったのでした。

プロ野球中日 退任の会見を行った高木守道監督=2013年10月8日 写真提供:産経新聞社

翌日の中日新聞のスポーツ欄で印象的だったことがあります。当時の記事には各選手の打撃成績とともに、試合結果が「(勝利チーム)○-○(敗戦チーム)」(○には得点が入ります)という形で記されていました。引き分けの場合は本来「(ホームチーム)○-○(ビジターチーム)」になるのですが、この日の記事は「ヤクルト3-3中日」ではなく、「中日3-3ヤクルト」となっていました。

球団の親会社である中日新聞ということもあったのでしょうが、この試合がいかに中日にとって「勝ち」に等しい引き分けであり、高木さんのヒットが「値千金の一打」だったことを示していたと思います。中日はその後、大洋に連勝し、20年ぶり2回目のリーグ優勝を果たします。

優勝の瞬間をテレビで見ていたこのときの私は「ガッツポーズ」でした。最終成績は中日70勝49敗11分け、巨人が71勝50敗9分け、ゲーム差ゼロ、わずか1厘差の優勝でした。

私の故郷・岐阜の神社では、毎年12月に「みそぎ祭り」が行われます。厳冬の長良川に男たちが褌一丁で入り、みそぎをするというお祭り。神社周辺は縁日などでにぎわいますが、中日が20年ぶりに優勝したこの年、そこに高木さんが参拝したのです。

「あー高木守道だ…」

私はボーっと高木さんを見ていました。夢のようなひととき…神社の雰囲気もあったのでしょうが、拝殿の前に現れた浅黒い顔の高木さんには、子ども心に近寄りがたいオーラがあったのです。高木さんは県岐阜商の出身、まさに地元のスターでした。

その年の祭りでは高木さんのサインボールも販売されましたが、お値段は500円。親からもらったお小遣いは200円…当時、小学校の遠足のおやつ代の上限が150円の時代でしたから、200円も子どもにとっては大金なのですが、買えずに泣く泣くあきらめたことを覚えています。

クラス仲間で行うフットベースボールはもちろんセカンド、背番号1が人気でした。クラスの文集では将来の夢として「プロ野球選手」と書いた男子が圧倒的にトップ。私も実はその1人でした。

おととし(2018年)亡くなった星野仙一さん同様、昭和のドラゴンズの熱い時代を駆け抜けた高木さん。ドラファンにとって1人1人に想い出があると思います。そして、私も少年時代の想い出は永遠の宝物、高木さんに感謝とともに、ご冥福をお祈りいたします。(了)

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