ノーベル賞、COP25…環境問題を考える

By -  公開:  更新:

「報道部畑中デスクの独り言」(第165回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんの会見と、COP25で取り上げられた環境問題について---

成田空港で開かれた吉野彰さんの帰国会見 久美子夫人も同席し、和やかな雰囲気だった(12月15日撮影)

今年(2019年)のノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰さんが、授賞式が開かれたスウェーデンのストックホルムから12月15日、帰国しました。帰国後、成田空港の一室で記者会見も行われ、私も出席しました。

「長かったようで、あっという間に終わったようで…無事終わってホッとしている。きつねうどんが食べたい」

授賞が決まったときと同様、笑顔の吉野さん、そして久美子夫人も同席しました。会見では渋く輝く授賞のメダルも披露されました。

「ずっしり重みを感じる」

その重みは協力してくれた人への思い、そして、環境問題に対する答えを出す責務であると吉野さんは話します。吉野さんは滞在中、最も印象に残ったこととして、現地の学校を訪れた際の、子どもたちの環境問題への関心の高さを挙げました。

吉野彰さんはノーベル賞のメダルも披露「ずっしり重みを感じる」(12月15日撮影)

「子どもたちは直感的に、いまの環境問題に恐怖心をもっている。誰もその答えを示してくれない。こういう道筋で、将来このようになって行く。心配することはない…そういうことを大人が言わないといけない」

そして今後については、研究者としてどうあるべきかの「旗振り役」を目指すとともに、環境問題解決への意欲を語りました。

「環境問題に対して道筋をつけることはわれわれの責任、そういう活動をして行きたい」

会見は15分あまりという短い時間ではありましたが、和やかななかにも濃密で考えさせられる内容だったと思います。

ノーベル賞授賞式前の公式記者会見に臨み、共同受賞者の米ニューヨーク州立大のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム特別教授と握手する吉野彰・旭化成名誉フェロー=2019年12月7日 スウェーデン王立科学アカデミー 写真提供:産経新聞社

一方、吉野さんの渡欧とほぼ“同時進行”で、スペインのマドリードで開かれていたCOP25=国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議は、まことにお粗末な結果となりました。

共同通信によりますと、12月2日から始まった協議は会期を2日延長し、徹夜の議論にもなりましたが対立は解けず、温室効果ガス排出削減をめぐるパリ協定の実施ルールづくりの合意は、次回会合に先送りとなったのです。

会議にはスウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥンべリさんも参加し、マドリード市内では若者らが対策強化を求めてデモ行進をしたと言います。このあたりはまさに、吉野さんの「環境問題に恐怖心」という発言とも符合します。

日本代表として出席した小泉進次郎環境大臣は、合意を目指して各国閣僚と30回以上の会談を重ねたことなどを挙げ、「日本のプレゼンスが高まった」と成果を強調しました。

しかし、日本は石炭火力発電をめぐって批判され、気候行動ネットワークから「化石賞」なる、ありがたくない称号もいただきました。これについて小泉大臣は、「冒頭は石炭祭りだった」と語っています。

フロン類の適切な回収・処理に向けた国際枠組みの設立を宣言した小泉進次郎環境相(左から4人目)=2019年12月10日、スペイン・マドリード 写真提供:時事通信

環境問題がなかなか国際的な合意を得られないのは、それぞれの国・地域の事情もあるでしょう。EU=欧州連合が2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を公表したのに対し、中国、アメリカ、日本など“大排出国”が沈黙しました。先進国と発展途上国で考え方の違いもあります。

足元の日本国内について考えると、関心が高まらない理由の1つは、やはり政治。つまり、環境問題は「票にならない」ということなのだと思います。今年実施された参議院選挙の自民党公約集を振り返りますと、最初に出て来るのは外交、そして、アベノミクスの実績、経済、社会保障、地方創生、防災、憲法改正と続きます。

ラストの憲法改正は、映画やドラマ出演クレジットの「トメ」にあたるものでしょう。どれも重要な課題ですが、こと環境問題については経済の項に「エネルギー・環境」、防災の項で「地球環境」と記されているものの、いずれも各項の最後。

優先順位は低いと言わざるを得ず、同時に有権者の関心も低いということを示していると思います。どうしたら環境対策が「票を左右するテーマ」になるのか…政治家だけでなく、有権者が考えて行かなくてはなりません。

脱炭素社会への取り組み「チャレンジ・ゼロ」を発表した経団連・中西宏明会長(12月9日撮影)

こうしたなか、経団連が「チャレンジ・ゼロ」と題し、脱炭素社会(低炭素社会ではない!)への構想を打ち出すなど、経済界も重い腰を上げ始めました。

日本は今年の台風の襲来を引き合いに出すまでもなく、毎年のように大災害に見舞われるようになりました。その背景には地球温暖化、気候変動の影響があるのは論を俟ちません。環境問題への取り組みをお題目に終わらせないことが、文字通り「災い転じて福となす」ことにつながるのではないかと思います。(了)

Page top