中国の影響力に屈して台湾を排除するWHO~新型肺炎感染拡大と国際政治

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月4日放送)にジャーナリストの有本香が出演。新型コロナウイルス問題からみる中国と台湾の問題について解説した。飯田浩司が休みのため新行市佳が進行を務めた。

談話を発表する台湾の蔡英文総統。中国からの選挙介入を防止する「反浸透法」に署名し公布したことを明らかにした =2020年1月15日 台北の総統府 写真提供:産経新聞社

中国が「旧正月の増発便」の名目で、武漢の台湾人にチャーター機を用意

新型コロナウイルスによる肺炎の問題で封鎖された中国・武漢市に残っていた台湾人の一部が3日夜、旧正月の増発便の名目で、中国側が用意した民間機で台湾に向かった。

新行)武漢にはこれまで約400人の台湾人が足止めされているとみられており、現地の台湾人を帰国させようと、台湾側はチャーター機の派遣を中国当局に打診していました。しかし回答がなかなか得られず、台湾の蔡英文総統は1月30日に働きかけを続ける方針を示していました。

有本)日本国内でも、何とか台湾のために力になれないかという声がありました。私は皮肉として、中国は常に台湾は中国の一部だと言っているのだから、自国民を送り届けることはしなくてよいのかと言っていました。チャーター機に関して、日本は他よりも早く3機を飛ばし、多くの方々が帰って来られている。その分、感染が発覚した人が多いということも言えますけれども。しかし、日本に帰って来るチャーター便は、いつも明け方など朝早くに着いていますよね。なぜだかわかりますか?

新行)国によって順番があるからですか?

【新型肺炎 武漢滞在の邦人帰国へ】中国・武漢に滞在する邦人を帰国させるため、出発の準備を行うチャーター機=2020年1月28日午後、羽田空港 写真提供:産経新聞社

中国が昼間に飛行機を飛ばしたくない理由

有本)もちろんアメリカなど、中国が政治的に大切にしておこうという国は、受け入れる順番が早かったということはあります。しかしそうではなく、飛行機を飛ばす時間帯というのは、みんなが寝静まった夜なのです。昼間などに飛ばした場合、外国の飛行機が飛んでいるということが市民に見えると、「外国人は脱出しているではないか」と言われてしまうからです。つまり、市民は封じ込まれているわけです。習近平国家主席が、初動に問題があったということを認めた。ただ、これも結局は武漢市長が悪いという話になるかもしれないので、非常に曖昧ではあります。要するに自分たちが責めを負わないよう、そういった部分にはかなり気を配っているのです。

WHO本部の大会議室(世界保健機関-Wikipediaより)

WHO緊急会議から排除された台湾~「防疫に抜け穴があってはならない」

有本)また今回、台湾の国内でチャーター機が飛ばせないとなって、蔡さんに「何をやっているのだ」という声が上がると思いきや、そうではありませんでした。これ以上ぐずぐずしていると、「やはり中国はとんでもない」と反中感情を大きくしてしまうということで、送り届ける便を「旧正月の増発便」という名目で出した。とても政治的な決着をしたわけです。さらに台湾に関して言うと、今回もさまざまな問題がはっきりしました。これはSARSのときから何ひとつ変わっていません。今回、WHOが台湾を排除していましたよね。

新行)はい。

有本)私は武漢が閉鎖される前の22日~23日くらいに、偶然ある人を取材しました。そうしたら、日本の有力国会議員のところにも台湾の関係者が相談に来ていました。台湾がWHOの緊急会議から排除されましたが、台湾側は感染症によって自国でどういうことが起きているのか、WHOに報告を上げています。一般的には、報告を上げたらWHOからもフィードバックがもらえるのが普通ですが、台湾は報告を上げても上げてもまったくフィードバックがない。これはあまりにもひどいだろうということで、蔡英文総統も国連機関への呼びかけなどをして、「防疫に抜け穴があっては意味がない」と言っています。その通りだと思います。中国の政治的な影響力にWHOが屈して、台湾を排除している。そんなことを行っていたら、感染症は国境を越えて蔓延してしまうものなのだから、意味がないだろうということです。SARSのときと今回とで、ほとんど変化していない。むしろ嫌がらせの度合いが強くなっている。これは大問題です。WHOの存在意義が今回も問われました。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

発展途上国への感染拡大を恐れる中国

有本)さらに中国側が恐れていると言われている問題ですが、途上国にも感染が広がっています。例えばネパール、スリランカ、ベトナム。そしていま感染者数が出て来ていないのが、アフリカと中南米なのです。これは実態がわからないのではないかと言われていて、アフリカ辺りに感染が飛び火していたら大変なことになります。医療の行き届かない場所ですし、衛生状態もあまりよくない地域が多くあります。また中国はここ10年以上、アフリカに投資をして来ています。しかし自分たちの国で発生した感染症によって、アフリカ自体が大変なことになってしまう危険性があることに関して、かなり焦っているのではないでしょうか。台湾との関係についても、蔡英文総統がいろいろな形でアメリカとの連携を強めている。1月11日の総統選挙で蔡英文総統が再選されたときに、ランニングメイトであった副総統の頼清徳さんという方がいます。蔡英文さんが任期いっぱいまで務めたら、次は頼清徳さんにバトンタッチするのではないかと言われています。市長経験もある人ですが、この方が今度アメリカに行くのです。

台南市長時代に公開されたポートレート(2017年)(頼清徳-Wikipediaより)

日本はWHO、TPPへの台湾参加を後押しすべき

有本)彼は蔡英文さんよりも旗幟鮮明に、台湾独立を言って来た人間です。この人の顔見せの意味もあるのでしょう。アメリカに行ってトランプ大統領とも面会する、アメリカ政府高官とも会うと言っています。トランプ政権になってから台湾旅行法という法律をつくって、トランプ大統領が署名をしましたよね。つまりアメリカと台湾との間で、トップを含めた高官が行き来します。中国にも気兼ねしないという、新しい段階に入ったということを実践するわけです。中国はこれに対して、何かを言う余裕はいまはありません。一応、頼清徳さんは私的な立場で行くと言っていますが、中国がこういった状況にあって、台湾も政治的に1歩前に出るようなことをやっています。私はここでWHOに台湾が入るということを、日本が強力に後押しすべきだと思います。日本はTPPの実質的な事務局でもあります。台湾はTPPに入りたがっているし、入ることによってメリットがある。全会一致でなければ新しい仲間は入れることができないので、残りの国々を日本が説得し、さまざまな国を迎えるなかに台湾も入れて、TPPを完成させる必要があるでしょう。アメリカと台湾がこれだけ前に出て来て、中国がいま苦戦している状況です。日本も日米同盟をさらに強化する意味で、台湾との実質上の同盟関係をつくるような1歩を、今年(2020年)は踏み出すべきだと思います。

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