新型肺炎、行政の臨機応変な対応は評価できる~経過観察期間の延長、フェリーの有効活用

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月6日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。「ダイヤモンド・プリンセス」での新型コロナウイルス感染者拡大について解説した。

【新型肺炎 クルーズ船】横浜・大黒ふ頭に着岸したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。救急車などが岸に止まり、乗客らが不安そうに見つめていた=2020年2月6日午前、横浜市 写真提供:産経新聞社

新型コロナウイルス~クルーズ船で新たな感染者確認

厚生労働省は6日、新型コロナウイルスの感染者が乗っていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、新たに乗客10人の感染が確認されたと発表した。5日も10人の感染がわかっており、同じ船内での感染者は、先に感染が判明していた1人を除いて合計20人となった。このクルーズ船をめぐっては、まだ171人が検査中で、感染者は更に増える可能性がある(※編集部注:7日、新たに乗客41人の感染が確認され、合計61人となった)。

森田耕次解説委員)クルーズ船は6日朝、食料などの物資補給のために横浜港に着岸しています。乗員、乗客3,700人が依然船内で待機しておりまして、14日間待機するということですから、2月19日までの滞在ということです。厚生労働省の担当者が6日に記者会見を行いました。

 

厚生労働省担当者)クルーズ船に対する検疫は現在も継続しておりますが、この船内におきまして、発熱などの症状のある方や濃厚接触者等の検体を採取致しまして、そのうち新たに10名の方から陽性反応が確認されています。本日、これらの方々には下船していただき、神奈川県内の医療機関に搬送致します。

ダイヤモンド・プリンセス -Wikipediaより

クルーズ船の感染しやすい環境

佐藤)残念ながら、もっと増えてくるでしょう。クルーズ船には私も乗ったことがあるのですが、手すりが非常に多いのですよ。ですから、あちこち触るのですよ。いまもみんなが注意をして、手洗いやアルコール消毒をしていると思いますが、それをする前に触ってしまって、粘膜に手がいってしまった人がどれだけいるのかということです。まだ症状が出ていない、あるいは濃厚接触者ではないにしても、手すりや机を通じて接触している人はかなりいると思いますから、思ったよりも多くの患者が出てくる可能性も排除されないと思います。

森田)いまは基本的に個室での滞在やマスクの着用、食事のときは周囲と2メートルほど距離を取るといったことを求めているようですが、香港人の80歳男性の感染が確認された後も自由に行き来していたようですからね。

佐藤)それと同時に、個室ではなくほとんど2人部屋以上で、部屋によっては4人部屋ですからね。となると、症状が出ていなくても感染している場合、同じ部屋の空間にいるというのは非常にうつりやすいですよね。

【さっぽろ雪まつり】メイン会場となる大通公園ではマスク姿の人が目立った=2020年2月4日、札幌市中央区 写真提供:産経新聞社

マスクよりも手洗いうがいの徹底を

森田)外務省は武漢から日本人を帰国させるチャーター機の第4便について、6日の夜8時ごろ羽田空港を出発する予定であると発表しています。7日の午前に羽田空港へ帰国するということで、中国籍の配偶者らの搭乗を中国政府が認めるようです。搭乗予定者は全体で200人くらいになるだろうと菅官房長官が明らかにしています(※編集部注:中国籍の配偶者ら計198人を乗せチャーター機第4便が7日午前羽田空港に到着)。

佐藤)これは大きな話です。他方、いま肺炎、肺炎とニュースでは非常に大きくなっているのですが、いままでの非常に広がりやすい感染症と比べると、数字を見る限りは致死率がそれほど高くありません。ただ、感染力はあるようです。厚労省に聞いたところだと、2018年1月から12月までにインフルエンザによって国内で亡くなった方は3,325人もおられるそうです。

森田)インフルエンザで年間3,000人以上も亡くなっているのですね。

佐藤)そう考えると、インフルエンザはそれだけ怖いものです。それと比較した場合、ものすごく死の危険があるような大きな病気が日本列島を覆い始めているわけではないのです。ですから、冷静になることも重要です。そして、手洗いうがいの励行に非常に効果があります。マスクをしていれば喉を傷めませんし、思わず手をやってしまうのを防ぐ効果がありますが、小さな砂糖の粒をテニスのネットで防ぐようなことと同じなので、マスクをしていればウイルスが入ってくるのを防げるというわけではありません。

森田)難しいのですね。

佐藤)粉塵防止用のマスクでも無理です。マスクがない、と大パニックになっていますが、その辺りは冷静に考えた方がいいです。

森田)でも、たくさん人がいるところではマスクをしたくなってしまいますよね。

佐藤)それはわかります。でも、効果があるのは手洗いやアルコール消毒なのだと思います。

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(中央)=2020年1月30日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

行政の臨機応変な対応

森田)武漢から帰国した日本人についてなのですが、感染が疑われる人の健康状態の経過観察期間を12.5日にすることに見直されました。最初は10日間にすることを発表したのですが、これを12.5日にするということで、勝浦のホテルに滞在している人の退出日は当初の9日から12日以降にずれ込む見通しになりました。それから、防衛省が「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客支援のために自衛隊員を派遣して、船内で健康相談などを行うようです。防衛省が契約する民間フェリーの「はくおう」を横浜港に接岸させて、隊員の宿泊などに使うということです。当初は第4便以降に帰国する日本人たちの受け入れを検討していたのですが、このフェリーは隔離できる個室が少ないということで、結局自衛隊員が使ってクルーズ船の支援拠点にしようということになっています。対応がその日によって変わってきますね。

佐藤)裏返すと、臨機応変に1回決めたことに対して固執していないのです。WHOが12.5日の可能性があると言ったらそこに合わせるとか、最初はクルーズ船で隔離しようとしていたところを、個室が少ないということで自衛隊のような訓練を受けた人たちの拠点にするという対応は、しっかりやっているなと思います。

森田)なかなか行政でこれだけ臨機応変にというのは難しいですからね。

佐藤)最初は6日間の周知期間を徹底しなければいけない、罰則のあることだからと言っていたのだけれど、WHOが緊急事態宣言、鈴木宗男さんの厳しい質問を受けて変わるという。

森田)そして、あまり恐れ過ぎないことが大事ですね。

佐藤)全体的な流れのなかで、敢えてそう考えるのも少し重要かなと思います。

番組情報

ザ・フォーカス

月曜〜木曜 18:00-20:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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