“あおり運転”厳罰化へ~暴行罪よりも重い量刑
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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月3日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。「あおり運転」の厳罰化について解説した。
政府が“あおり運転”厳罰化などを閣議決定
政府は3日「道路交通法改正案」の柱の1つとして、“あおり運転”の厳罰化などを閣議決定した。このなかで、前方のクルマとの距離を詰めるなどの「あおり運転」に対して、最高で「5年以下の懲役、または100万円以下の罰金」、違反点数は”15点以上”で、即「免許取り消し」となる。今国会で成立すれば、夏までに実施される見通し。
森田耕次解説委員)3日に閣議決定された「道路交通法改正案」では「あおり運転」を「妨害運転」と規定した上で、対象となる行為を「通行妨害目的の車間距離不保持」とし、クラクションは幅寄せ、道路の逆走、急ブレーキ、左側からの追い越し、蛇行運転と明記しています。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金で、高速道路での停車など著しい危険を生じさせた場合は懲役5年以下、罰金を100万円以下にする内容になっています。今国会中の成立を目指していまして、あおり運転関連は今年の夏にも施行される見通しということですね。
即免許取り消しも検討
野村)とにかく大きな社会問題になりました。そのときによく皆さんが議論されていたのは、「あおり運転そのものを処罰するルールが足りない」という問題でした。さらに、運転免許についてもすぐに免許取り消しになる仕組みが整っていないということなので、甘過ぎるという議論だったのです。ただ、そのときに問題となっていたのは、「あおり運転」を処罰するということになると「あおり運転」をどう定義するのかということです。「罪刑法定主義」という言葉があるのですが、刑罰を科すためには何が罪になるのかということを明確に定めることが必要なので、抽象的な「あおり運転」を処罰するのはなかなか難しいということで苦労してきたわけです。3日に閣議決定された「道路交通法改正案」ですが、この案によるとさまざまな具体的行為が「あおり運転」になることを定めることができるということに至ったので、厳しく処罰しようということになったのですよね。
森田)違反点数も酒気帯び運転の25点、酒酔い運転の35点を基準に検討すると見られていまして、15点以上になると即免許取り消しということですから、その方向のようですね。
野村)海外などでは二度と免許が取れない制度があるので、国会の審議では、一度免許を取り消した後で取れるのかということが議論されるかもしれません。他方、もう1つの法律がありまして、「危険運転致死傷罪」という犯罪に該当するのかということが「あおり運転」では問題になっていました。これは東名高速で「あおり運転」をした人が車を停めさせて、降りてきて外に出したら、後ろから来た車が追突して亡くなったという事故がありました。
森田)3年前の事故でしたね。
これまで適用してきた暴行罪よりも刑が重い
野村)このときには「あおり運転」という行為ではなく、高速道路で車を停めて外に出させるという行為自体が「危険運転致死傷罪」のなかに明記されていないことが問題でした。最終的にはその前の「あおり運転」行為と停止した行為に因果関係があるということで、「危険運転致死傷罪」を適用する判断をしたわけですが、直接的な適用にはなりませんでした。難しい問題を含んでいたということが言えるのですが、今回はそこをきちんと危険運転の行為に入れることによって、最大20年の懲役を科す余地も検討していこうとしているわけなのですよね。
森田)本当に悪質な場合には、刑法の殺人罪を適用するケースも考えられるのでしょうか。
野村)考えられますが、当然、ケースによります。故意で人を殺すために「あおり運転」を利用する場合がありますから、「あおり運転」が軽いというわけではないと思います。
森田)「あおり運転」はいまの道交法でも「車間距離不保持」というのは摘発件数が多く、2019年は1万5000件と前年よりも2000件以上多く摘発されたということですから、明確化されて罰則も厳しくなったということで、「あおり運転」をいかになくすかということですね。
野村)これまでは刑法をなんとか適用しようということで、暴行罪を適用してきました。暴行というと物理的に殴る行為を想像しがちですが、必ずしも接触しなくても暴行罪は成立するのです。圧を加える行為が間接的なものであったとしても、暴行にあたるということなのですが、こういったものを適用しても2年以下の懲役というのが暴行罪ですから、それよりも刑を重くする厳罰化が図られるということなのですね。
森田)もう1つは高齢ドライバー対策です。一定の運転違反歴がある75歳以上に運転技能検査、実車試験を義務付けて、安全運転サポート車限定の免許も創設しようということで、2022年度をめどに運用を開始するために道交法改正案に盛り込むということです。
番組情報
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パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。