国家やテロ組織によるサイバー攻撃~東京オリンピックは標的になる

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月5日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。深刻化するサイバー攻撃の増加について解説した。

陸上自衛隊と米陸軍が実施したサイバー競技会で、問題に取り組む陸自隊員ら=2019年8月22日、防衛省 写真提供:時事通信社

陸上自衛隊と米陸軍が実施したサイバー競技会で、問題に取り組む陸自隊員ら=2019年8月22日、防衛省 写真提供:時事通信社

サイバー攻撃4192回~警察庁が警戒強化

警察庁が2019年1年間で検知したサイバー攻撃関連のアクセス数は1日平均4192件に上り、2018年からおよそ1.5倍に急増。過去最多を更新した。警察庁は各地の警察施設でセンサーを設置し、24時間体制でサイバー攻撃の疑いがある通信を検知している。

森田耕次解説委員)警察庁は各地の警察の施設でセンサーを設置しておりまして、24時間体制でサイバー攻撃の疑いがある通信を検知しています。検知件数が1日平均4000件以上と2018年に比べて1.5倍に急増した背景には、ネット接続可能な家電製品などIoT機器の利用が進んでサイバー攻撃先が一層広がったことも要因だと見られています。また、警察庁が全国およそ8100の事業者と情報共有する枠組みで把握した「標的型メール攻撃」は5300件に上ったということです。2015年と比べるとおよそ1.4倍で、引き続き対策が必要な状態です。不正アクセス禁止法違反も816件で、その多くがIDやパスワードを盗み取って悪用する手口でした。被害が目立つのはインターネットバンキングに関連した不正送金で、被害額は前年の5倍以上となる25億2100万円ということです。サイバー攻撃は年々増加している傾向にありますね。

佐藤)いまのところお金を狙うサイバー攻撃が多いです。そこのところは防衛の方法がいろいろありますが、怖いのは国家やテロ組織のサイバー攻撃です。これは台風や地震のときに仕掛けてくるのですよ。そうすると、サイバー攻撃なのか天災地変によるものなのかよくわかりません。そういった怖さがあるので、水道や信号、発電所、鉄道などのサイバー防衛体制は整えなければいけません。

森田)2020年は1月以降に三菱電機やNECなどに大規模なサイバー攻撃が相次いで発覚しました。

佐藤)あれは情報を取るのが目的でしょう。そうではなくて、この社会を混乱させるもの。信号を止めてしまう、水道のポンプを止めてしまうような攻撃は、本格的なものは日本はかけられたことがないと思います。

森田)今回、警察庁が発表したようなサイバー攻撃はお金に関するものや情報を盗もうとするものですが、そうではないと。

佐藤)犯罪の方の話ですよね。むしろ国家やテロ組織の工作、破壊活動のサイバー攻撃に注意しなければいけません。

森田)世界では大国間でそういったサイバー攻撃を仕掛けようと、さまざまな技術が進歩していると聞きます。

国家やテロ組織によるサイバー攻撃~東京オリンピックは標的になる

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政府が関与しているとは限らない~見極めるのも能力

佐藤)その通りです。もう1つは、民間もそうなのですよ。例えば、ロシアの会社がインターネットに入ってきて、選挙に影響を与えようと悪さをしている。そのときに、ロシア政府がやっているとは限らないわけです。

森田)民間がやっているのですね。

佐藤)西側諸国の敵対陣営が、能力が高いからロシアの会社に依頼するのです。それから、ロシアの会社だとどこがやっているのか追跡してくれと言っても、ロシア政府はそういったことに協力しません。だから、使い勝手がいいわけです。

森田)三菱電機が狙われたところも、サイバーの組織でしたものね。バックに政府がいるのかどうかもわかりづらいし。

佐藤)仮に政府がいる場合にも「関与していない」と言いますし、いずれにせよそれ以外の答えはこないのですよ。ロシアや中国だけでなく、アメリカもそうです。どの国も「関与していない」との答えしかしませんから、そこで関与しているのか見極めるのも攻撃された側の能力になってくるのです。

日本のサイバー防衛能力~人手は不足している

森田)その辺り、日本の能力はどうなのでしょうか。

佐藤)日本の能力は決して低くはないのです。ただ、これは攻撃している人しか攻撃のやり方がわかりません。日本の場合、国としてこういった攻撃はしていません。そこは問題ですよね。

森田)人が足りないので、経済産業省はセキュリティ政策の統括を担当する審議官クラスの職員を公募する状況になっています。

佐藤)いわゆるネットに詳しくて、引きこもってしまっている人で私の友人にも専門家がいるのですが、経済産業省がやっている1年に2日ある演習があるそうです。紅組と白組に分けてサイバー攻撃をするようですが、その演習に参加しているようですね。それから、自衛隊のサイバー部隊出身の人が、リタイアしてから経済産業省に雇われて、この人はその分野の専門家ですから、それなりのレベルはあるのです。

森田)人材を確保しておかなければいけないわけですね。

佐藤)ただ、まだ裾野が広がっていないのです。

森田)イスラエルは軍にサイバー諜報部隊があるようですね。

佐藤)学校に行かないでゲームばかりやっている子を集めて部隊をつくって、それで無人飛行機などを飛ばして、レバノンのヒズボラの拠点などを攻撃したりしていますからね。

森田)すごい状況ですね。米中も宇宙とサイバーが次の主戦場になっていますね。

佐藤)サイバー攻撃に強くて、守りがしっかりしているのは北朝鮮なのですよ。だって、鉄道だっていまだにダイヤグラムを引いているでしょう。それから、発電所だってネットと繋がっていないじゃないですか。繋がっていないから、もっとも強いのです。攻撃はできるわけですが、防御に関してはネットと繋がっていないから攻撃のしようがないわけです。定規で引いているダイヤグラムで動く鉄道を攻撃できるわけがありませんから、いちばん強いのです。

森田)日本はこれから東京オリンピック・パラリンピックに合わせてサイバー攻撃の増加があるのではないかということで、ここが心配です。

佐藤)確実にあるでしょうね。攻撃されて防衛すると、攻撃の能力が上がるイタチごっこなのですよ。付き合い続けなければいけないということですね。

森田)オリンピックのときにサイバー攻撃をされて、交通機関が止まってしまったらパニック状態になりますね。

佐藤)怖いですよね。しかも、コロナの話もありますから、そういったものが複合的に合わさったシミュレートをしておかなければいけません。

番組情報

ザ・フォーカス

火曜〜木曜 18:00-21:20

番組HP

錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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