ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月6日放送)に上智大学教授・政治学者の前嶋和弘が出演。国連の世界知的所有権機関(WIPO)の次期事務局長にダレン・タン氏が当選したニュースについて解説した。
国連の世界知的所有権機関(WIPO)の次期事務局長にダレン・タン氏が当選
国連の世界知的所有権機関(WIPO)の次期事務局長を選ぶ選挙が4日、スイス・ジュネーブの本部で行われ、シンガポールのダレン・タン知的財産権庁長官が、中国の女性、王彬穎WIPO事務次長を55対28の大差で破り当選した。2009年から事務次長を務める中国の王氏は、アフリカ諸国などから支持を集め有力候補と見られていたが、「知的財産を盗用している」などと中国を批判するアメリカが、知的財産の保護を促進するWIPOのトップに中国出身者が就任するのを警戒した他、15ある国連の専門組織のうち4機関でトップを占める中国が影響力を一層拡大することを懸念して、日本やアメリカ、ヨーロッパなどがタン氏を推していた。
アメリカとしてはここだけは中国に渡してはいけない本丸
飯田)知的財産権というのは、米中のなかでも本丸ですよね。
前嶋)本丸です。ですので、トランプ政権はあまり国連に働きかけることはないのですが、これに関してはポンペオ国務長官が動きました。「ここだけは中国がトップに行ってはいけない」と。そもそも、ここに特許等を出して来ることが中国は圧倒的に多いのです。そのなかでもファーウェイや5G、あるいはロボティクスなど、まさに安全保障の中心になるものばかりです。だからここは中国に行かせてはいけないと、トランプ政権としてはかなり動いたようです。
飯田)シンガポールの方がトップに就くことになります。法律的にはイギリスの法体制が入っていて、西側諸国の法の支配というものを理解されているということですか?
前嶋)そうです。この人だったら一緒にやって行ける。面白いのが、ダレン・タンさんも中国の王さんも、アメリカで学位を取っているのですよね。
飯田)そうなのですか。
前嶋)2人ともアメリカが何を持っているのかわかりながら、アメリカとしては「絶対にダレン・タンだ」と動いたようです。
飯田)国際機関のトップに就くとなると、自分の国から離れた価値観でやるイメージがありますが、中国出身の方はそうはならないということですか?
前嶋)言いにくいけれど、そうだと思います。今回も中国は、アフリカ諸国からの支持を集めています。いろいろな関係が背景にありますので、アメリカとしてはかなり警戒しています。いまのところ国連の中国人がトップのところは、例えば国連食糧農業機関(FAO)など、「ここを取られてもアメリカは文句を言わないよね」というところを攻めています。でも、世界知的所有権機関(WIPO)は違うということです。
国際民間航空機関(ICAO)を中国に取られた反省も
飯田)周辺国としては、国際民間航空機関(ICAO)を取られてしまうと、タイや台湾のことを考えるとどうかと思いますが。
前嶋)それもあります。その対応が遅かったという反省が、トランプ政権にあるのです。アメリカは国連機関から引いて行くものだと考えているところがありますが、一方では引き過ぎるのもいけないという意見もあります。
飯田)トランプ政権も、その辺りを意識し始めたということですか?
前嶋)スタッフがわかって来たということです。トランプ政権になって4年近くなりますので、政権のなかで話がまとまって来ているのでしょう。
飯田)スタッフたちも、どうすれば大統領に通るのかという技術が増して来た。
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