ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月20日放送)に、外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。新型コロナウイルス感染拡大によるアメリカ国務省の海外渡航中止勧告について解説した。
アメリカが全国民に渡航中止と帰国を勧告
アメリカ国務省は3月19日、新型コロナウイルス感染拡大を受け全世界の警戒レベルを最高の4に引き上げ国民にすべての渡航の中止、帰国などを勧告した。
宮家)私がケンタッキーに行き、帰国したのは3月7日です。今日現在でちょうど2週間たったのですが、あれからアメリカではすごい勢いで感染が広がりました。当時、私は「静かなパニック」と申し上げましたよね。それがいまでは本当のパニックになっていますよね。なぜこんなことが起きるのか考えてみると、アメリカが良い悪いということではありません。イタリアでも起き、アメリカでも起きた。ヨーロッパじゅうに広がっていますね。ということは、欧米ということですね。そこで思いつくことは、彼らの個人主義です。
飯田)個人主義。
宮家)実は私の娘がいまサンフランシスコに住んでいます。そこにいる娘がビデオメッセージを送ってきたのですが、孫娘が外に出たくて仕方がない様子でした。長靴をはいて「外に行きたいー」と言っているのですね。それに対して娘が「ダメ」と言うと、大声で泣くのです。それは、サンフランシスコでは外出禁止となっているためなのですね。ところが、19日にCNNを見ていたら外出禁止のサンフランシスコのはずなのですが、若者がみなが手をつないで橋を渡ったりしているのです。この状況はおかしいだろうと思いました。彼らはまったく専門家の言うことを聞いていません。つまり、コロナウイルスはなんとかなるのだと甘く見た国は危険、ということです。
飯田)たしかにミラノやヴェネツィアなどは遊歩道に人が大勢出ているという写真が出ましたよね。
宮家)アメリカのフロリダではみな泳いでいますからね。
飯田)そうですよね。マイアミビーチ、すごく人がいましたよね。
宮家)それは自分だけは大丈夫だとみな思うからかもしれませんが、やはり日本のほうが、あまり厳しい強制力はないかもしれませんが、ルールを守っていますよね。ですので、こういった点が理由なのかなと思いました。
追い詰められて強い政策を出さざるを得ないアメリカの混乱
飯田)そうなると個人主義の国民に対してどうすべきかとなるとかなり強い政策を準備しなくてはなりませんね。
宮家)そうです。これは中国と同じですよね。
飯田)なるほど。
宮家)それ自体は間違っているとは思わないのですが、全国民に渡航禁止というのはひどい話です。さらによく読むと「外国に行くなら勝手にしろ」と。「あなたの旅行は途中で禁止になる恐れがあり責任が持てません。保護はしない」という内容なのですね。国務省や外務省は在外邦人の在外の自国民の保護が仕事です。それをだめだというのは鎖国ですよね。
飯田)そう読む必要があるのですね。
宮家)ずいぶんと変わってしまったなと思いました。
飯田)自国民を保護するというのが任務のはずだったのですが「ひょっとしたらできないかもしれないよ」ということですね。
宮家)そうです。「だから行くなよ」と言っているのです。
飯田)なるほど。
宮家)これはふつうでしたらすごいことなのですが、そのくらい追い詰められているのですね。また、現在のアメリカの病院で何が足りないかというとベッドと人工呼吸器、マスクなのだそうです。医者が言うには、1000人もの患者が来てもその分の人工呼吸器はないそうです。
飯田)しかし、肺炎が重くなるとまさにそれが必要になってきますよね。
宮家)またアメリカのメーカーが「ボランティアでかわりに作りましょう」といっても、自動車メーカーが人工呼吸器を作るのは大変ですよね。ですので、いま大混乱ですよ。
飯田)アメリカでもやはりスーパーの棚から物はなくなるのだとすごく驚きました。
宮家)やはり社会全体として組織的に規則正しく動くことに慣れていない、そこの違いというのは結構あるのだなとつくづく思いましたね。
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