飲食店での喫煙は完全に規制すべきか~個人店の文化を守るには
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月1日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。改正健康増進法について解説した。
改正健康増進法
受動喫煙を防ぎ、飲食店やオフィス内を原則禁煙とする改正健康増進法が、1日から全面施行された。また、東京都でも1日から受動喫煙防止条例が全面施行され、都内の飲食店の84%が原則禁煙となる。
日本の個人店の多様性
飯田)1日から年度が変わるということで、いろいろと制度変更があるのですが、その1つがタバコについてです。
佐々木)正直、少し前までは禁煙が当然で、小規模店はタバコOKなんておかしいと思っていたのですが、今回の新型コロナウイルスで考えてみると、小さい店でタバコが吸えるようなところをもう少し許容してもいいのではないかと、気持ちが少し変わったのですよね。なぜかというと日本の飲食店、特に東京は無数にお店があるではないですか。しかも、多様性に富んでいます。例えばイタリアのローマへ行くと、イタリア料理店とピザ店しかありません。でも、日本はイタリア料理店もピザ店もあるし、フランス料理店もある。日本料理店だけでもそば、鰻から牛丼まであります。
飯田)日本料理のなかでも、さらに細分化されていますね。
佐々木)しかも小さな店、個人経営のお店が無数にあるのは、日本の飲食文化のすごいところだと思うのです。だから小さな店におじさんたちが集まって、タバコを吸っている店があってもOKなのかなと。逆に、今回の新型コロナウイルスでたくさんのお店が潰れています。体力のないところは来月の家賃も払えない、休業したらしたでその間の家賃もある、開けたら開けたで飲食業は固定費が大きいですよね。従業員を雇ったり、仕入れなどもあるので維持できず、にっちもさっちも行かなくなっている店がたくさんあります。コロナが去った後で気がついたら、食文化の素晴らしい東京から個人経営のお店が全部なくなってしまって、残っているのは大手のチェーン店だけになってしまったら、寂しいではないですか。こういうときこそ小さな、日ごろ行かないお店をみんなで守るということをしたいのですが、守ると言いながらも「3密」だから行ってはいけないという話にもなる。それをどうするのかというジレンマのなかで、いま暮らしているわけです。そう考えると、タバコを吸えるお店があってもいいかなという気がします。一律に健康でなければいけないというのが、コロナだから自粛して店に行くのをやめましょうということと、若干オーバーラップしている気がします。もちろんイコールではなく、コロナの自粛や受動喫煙の問題を否定しているわけではないのですが、一方でその多様性をどこかで確保するという意思も必要ではないかと考えます。
名指しするも補填なし~減る客足
飯田)都知事の会見では、専門家がいて安心だったと評価する人がいる一方で、建設的な批判だなと思ったのが、業態を名指ししておいて補償も何もないというのは、いくら何でも酷過ぎないかというものです。
佐々木)「夜の街」、いわゆるキャバレーやクラブなどですよね。
飯田)夜の街で「酒場」と言うと、1人で飲んでいるのもダメなのかという感じになって、ガクンとお客さんが減ってしまったお店も多いようですね。
佐々木)「買い溜めしなきゃ」と、朝方にスーパーやドラッグストアで行列をつくっているのと、空いている個人経営のお店に行ってひっそりとご飯を食べることの、どちらが「3密」なのだという話です。
飯田)しかも、そういったところの店主は空気を読んで、話しかけないときはじっと黙っていますからね。
佐々木)質のいいバーだと、客は僕1人でバーテンダーさんと飲んでいても、何もしゃべらない。そんなお店に「3密」も何もないだろうと個人的には思うのですが、なかなか言いにくいところです。タバコを吸っているだけでコロナが重症化するから、全員禁煙した方がいいというのは健康的には正しいのだけれど、正しい一方で、言い過ぎると逆に振れ過ぎてしまうという問題点もあります。
飯田)タバコの場合は、個人の趣味に加えて副流煙の問題があるから、表示がしてあれば嫌な人は避けるし、いい人は入るし。
佐々木)潔癖に言い過ぎるのもよくないと思っていて、ある意味グレーな状態を引き受けるのも大事なのではないかと。これは長く続きますし、森さんは来年(2021年)7月にオリンピックをやると言っていましたが、やれないだろうと言っている人もいっぱいいて、下手をすると2年くらいこの状況が続く可能性があるわけです。そう考えると、延々と続く中途半端な状態を維持するためには、完璧な健康志向に行くだけでなく、ある程度は緩めるところもどこかで必要なのかと。その1つとして、健康増進法の増進とはいったい何なのかということを、精神的なストレスも含めて考え直す必要があると思います。
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