黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に『ニッポン手仕事図鑑』編集長の大牧圭吾が出演。伝統工芸品の存在価値について語った。
黒木)今週のゲストは『ニッポン手仕事図鑑』の編集長、大牧圭吾さんです。これまで数多くの職人の方々を取材されていますが、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか?
大牧)長野県塩尻市にある木曽は、昔ながらの漆器の産地です。木曽漆器と言う伝統工芸品店に取材に行ったのですが、そこには僕の母親くらいの職人さんがいて、つくり手も後継者なのだけれども、使い手も後継者だし、伝え手も後継者なのだということを話してくれました。つくり手だけが後継者ではなくて、同時進行で伝える人、使う人を育ててこそ伝統工芸は残るのだということですね。その言葉がいまでも印象に残っています。
黒木)伝統工芸品はいただいて飾って、ときどき見るという印象がありますが。
大牧)職人さんと会って一緒に体験をして、子どもたちの想いが強くなるほど、「その商品を壊してはいけない」と大切にします。いわゆる日用品は使ってもらってなんぼなのですが、飾ったりしまったりという方向に行きがちです。
黒木)高価すぎて、手づくりとなるとね。
大牧)職人さんは子どもたちに「大事に使ってもらって、その結果壊れるということは、職人がいちばん望んでいることだ」と言います。僕らが伝統工芸品の価値を上げると、その商品を「使わずに保管する」という方向に行きがちです。それは今後の大きなテーマの1つです。
黒木)高価すぎて「大切なときに使おう」と思うのですが、普通に毎日使うことが、職人さんの想いを受け取ることになるのですね。他には、どんな方が印象に残っていますか?
大牧)やはり、いちばんはじめに撮らせていただいた活版印刷の職人さんですね。昔ながらの手法で、鉛の活字を並べて組版をつくって、そこにインクを付けて印刷します。字を並べるバランスの取り方にもコツがあります。シンプルですが、奥深さがありました。
黒木)手触りが違いますよね。しかも、この動画が1回目なのですよね。前例がないから口で説明するしかない。
大牧)感謝しています。工房に呼んでいただいて、僕らの伝統文化を残して行きたいという気持ちを伝えたら、「それであれば協力しよう」と言っていただきました。
黒木)男前ですね。
大牧)その1本の映像ができたことで、次の職人さんが協力してくれるようになった。そして10本集まったら、「うちもぜひ」という人も出て来たのです。この1本がなければ、いまの70本はなかったと思います。
大牧圭吾(おおまき・けいご)/ニッポン手仕事図鑑 編集長
■1977年、長野県安曇野市生まれ。
■映像ディレクターとして、秋田県、長野県、神奈川県、和歌山県など、全国の地方自治体の移住促進PR映像などを手がける傍ら、「ニッポンの手仕事を、残していく」をコンセプトに掲げる動画メディア、『ニッポン手仕事図鑑』を2015年1月に立ち上げ、編集長に就任。日本の未来に残して行きたい技術や文化を、国内外に向けて発信している。
■2017年9月、『子どものためのニッポン手仕事図鑑』を監修し、出版。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳