鬼才女性監督が描く、慟哭のリベンジ・スリラー

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第828回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、期間限定配信中の映画『ナイチンゲール』をご紹介します。

鬼才女性監督が描く、慟哭のリベンジ・スリラー

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

ヴェネツィア国際映画祭で賛否を巻き起こした衝撃作をオンラインで!

第75回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門において、審査員特別賞と新人俳優賞(マルチェロ・マストロヤンニ賞)の二冠に輝いたバイオレンス・スリラー『ナイチンゲール』。

コンペティション部門唯一の女性監督作品として注目されながらも、あまりにも過激すぎる内容とバイオレンス描写で物議を醸した衝撃作です。

本作は3月20日に日本公開したものの新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、長らく上映が中止されていましたが、現在は6月15日まで期間限定でデジタルロードショーされています。

鬼才女性監督が描く、慟哭のリベンジ・スリラー

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

19世紀、イギリス植民地時代のオーストラリア・タスマニア地方。盗みを働いたことから囚人となったアイルランド人のクレアは、一帯を支配するイギリス軍将校ホーキンスに囲われ、刑期を終えても拘束されていた。

そのことに不満を持ったクレアの夫エイデンが交渉を試みると、ホーキンスは逆上。仲間たちとともにクレアをレイプし、さらに彼女の目の前でエイデンと子どもを殺害してしまう。

愛する者と尊厳を奪われてしまったクレアは、復讐を決意。先住民アボリジニのビリーに道案内を依頼し、将校らを追跡する旅に出る…。

鬼才女性監督が描く、慟哭のリベンジ・スリラー

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

主人公のクレアを演じるのは、人気海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のリアナ・スターク役でお馴染みのアイスリング・フランシオシ。

タイトルとなっている『ナイチンゲール』とは、“西洋のウグイス”とも言われるほど美しい鳴き声を持つ鳥のこと。オペラ歌手でもあるアイスリング・フランシオシが劇中で歌うアイルランド民謡は美しくも切なく、観る者の心に響き渡ります。

メガホンを取ったジェニファー・ケント監督は、性差別や身分差別、さらに先住民アボリジニの迫害と虐殺の歴史を赤裸々にえぐり出し、リベンジ・スリラーの枠に留まらない“奪われし者たちの怒りの物語”として完成させました。

鬼才女性監督が描く、慟哭のリベンジ・スリラー

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

新型コロナウイルスの感染拡大を受けての緊急事態宣言による休業要請が解除された地域では、引き続き感染予防対策を充分に行ったうえで営業する映画館も出て来ています。

本作についても、岡山のシネマ・クレールと大分のシネマ5にて上映再開を発表。映画を取り巻く“日常”は少しずつ戻って来つつありますが、かつてのような賑わいをみせるようになるまでは、まだまだ時間がかかることになりそうなのが現状です。

劇場に足を運べない人は、是非、オンラインで。そして映画館が再開した暁には、大きなスクリーンで堪能してほしい1作です。

鬼才女性監督が描く、慟哭のリベンジ・スリラー

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

『ナイチンゲール』

2020年6月15日までデジタルロードショー
価格:1500円 + 税
配信プラットフォーム:
ポニーキャニオン/Amazon prime video/acTVila ア・ク・ト・ビ・ラ/GYAO!ストア/DMM.com/ビデオマーケット /music.jp/Rakuten TV/ひかりTV(5月16日~)/クランクイン!ビデオ(6月1日~)
監督・脚本:ジェニファー・ケント
出演:アイスリング・フランシオシ、サム・クラフリン、バイカリ・ガナンバル、デイモン・ヘリマン、ハリー・グリーンウッド、マイケル・シェズビー、ユエン・レスリー
原題:The Nightingale
(C)2018 Nightingale Films Holdings Pty Ltd, Screen Australia, Screen Tasmania.
公式サイト http://www.transformer.co.jp/m/Nightingale/index.html
※各映画館の上映再開については、公式サイトをご確認ください。

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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