“世界でいちばん貧しい大統領”が語る、真の豊かさとは
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第825回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、期間限定配信中の映画『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』をご紹介します。
巨匠エミール・クストリッツァが追いかけた、憧れの男 ホセ・ムヒカの人生
第40代ウルグアイ大統領、ホセ・ムヒカ。質素でありながらも心豊かな暮らしを実践する彼の人生を、巨匠エミール・クストリッツァ監督が追いかけたドキュメンタリー映画『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』。
本作は3月27日から劇場公開されましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言を受けて多くの映画館が休館となったことから、上映の継続が困難となりました。
しかし本作の公式ツイッターに寄せられた「ムヒカのような人にこそ、政治を任せるべき」「日本の政治家も見習え」といった声に後押しされて、「いまこそ観てほしい映画」として、期間限定デジタル配信が決定しました。
丸い体に、優しい瞳。愛車は、ボロボロのフォルクスワーゲン・ビートル。収入の大半を貧しい人々のために寄付し、職務の合間にはトラクターに乗って農作業に勤しむ…。
風変わりだけど自然体で大統領の重責を担っているホセ・ムヒカが、“世界でいちばん貧しい大統領”として注目を集めるようになったのは、2012年のリオデジャネイロでのスピーチだった。
国民のより良い生活のためには自己犠牲もいとわず、予想外の政策を打ち出す彼に、エミール・クストリッツァ監督が2014年から密着。極貧家庭に育ち、左翼ゲリラとして権力と戦い、13年にもおよぶ過酷な勾留生活を経て、2010年3月に大統領に就任。
南米の小国ウルグアイの大統領として国民に愛された、ムヒカの波乱万丈の人生を追う…。
メガホンを取ったエミール・クストリッツァ監督は、故郷ユーゴスラビアの混沌とした時代と庶民の姿をパワフルに描き、世界三大映画祭で絶賛された人物。この“トラクターに乗る大統領”の存在を知ったとき、「彼は世界でただ1人、腐敗していない政治家だ」と直感し、本作の制作に乗り出したとのこと。
民族や宗教の対立によって故郷が引き裂かれてしまった…。そんな自国で起こっている出来事を、映画を通じて世界中に発信し続けているクストリッツァ監督と、政治に情熱をかけるムヒカ大統領。2人が並んでお茶を飲む姿は実に微笑ましく、まるで魂のレベルでつながっているソウルメイトとも呼ぶべき“同志”のよう。
ムヒカ大統領の温かな人柄が伝わって来ると同時に、制作者であるクストリッツァ監督自身も彼に魅了されて行く様子が手に取るようにわかります。
思想、政治、国民、そして家族について。そのすべてを自分の言葉で簡潔に語るホセ・ムヒカ大統領。ノーベル平和賞に2度もノミネートされた彼の存在は、“コロナ後”を生き抜かなければならない私たちの道標となるのではないでしょうか。
波乱万丈の人生も終盤にさしかかった彼の言葉に、いまこそ耳を傾けて。
『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』
2020年5月8日~9月1日まで期間限定デジタル配信中
価格:1500円(税込)
配信プラットフォーム一覧:
TSUTAYA TV/Rakuten TV/ひかりTV/GYAO!ストア/DMM動画/ビデオマーケット/COCORO VIDEO /music.jp
監督:エミール・クストリッツァ
出演:ホセ・ムヒカ、ルシア・トポランスキー、エレウテリオ・フェルナンデス=ウイドブロ、マウリシオ・ロセンコフ
原題:El Pepe, Una Vida Suprema
(C)CAPITAL INTELECTUAL S.A, RASTA INTERNATIONAL, MOE
公式サイト https://pepe-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/