コロナ禍を生き延びるために…「仮設の映画館」で映画を公開する意義
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第823回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、仮設の映画館についてご紹介します。
自宅にいながら新作映画を楽しもう!
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で映画館の休館が相次ぐなか、配給会社や映画製作者もそれぞれ厳しい状況に置かれています。社会が停滞してしまっているなか、“映画の経済”を回復させようと新たな取り組みが行われています。
4月25日に開設された「仮設の映画館」は、客足が遠のいている映画館の窮状を鑑みて作られた、オンライン上の映画館。観客には安心して新作映画を楽しめる環境を、劇場・配給・製作者にとっては経済的なサイクルが回るようにと考案されたものです。
オンラインではあれど、あくまでも「映画館で映画を観る」というコンセプトで作られた「仮設の映画館」。サイトの随所に“映画館らしさ”が盛り込まれていて、各映画館の空気感が伝わって来るよう。
それだけでなく、この映画館ならではの「オリジナルマナーCM」まで制作。打ち合わせから撮影、編集まですべてテレワークによる作業で制作したというのですから、これも立派な“上映作品”ですね。
「仮設の映画館」は現在、6つの配給会社と、ミニシアターを中心とした全国およそ50の映画館が参加。4月25日から公開された『春を告げる町』に続き、5月2日には想田和弘監督最新作『精神0』が公開されました。
本作はナレーションやBGMを用いない、想田監督独自のドキュメンタリー手法で制作された“観察映画”の第9弾。“こころの病”とともに生きる人々を捉えたドキュメンタリー映画『精神』の出演者の1人である精神科医・山本昌知氏に再びカメラを向け、精神医療に人生を捧げた人生のその後を描き出しています。
参加する配給会社、映画館は今後も順次増える見込みで、すでに10作品の上映が決定しています。
映画鑑賞料金は、一律1800円。プラットフォームの使用料等を差し引いた後、一般的な興行収入と同様に、劇場と配給とで5:5で分配。さらに、配給会社と製作者とで分配されます。
「仮設の映画館」で観たい作品をセレクトし、さらにサイト上に軒を連ねている全国の劇場のなかから映画館を選択すれば、オンラインで映画を楽しむことができます。全国の映画館をバーチャル体験できるのも、この「仮設の映画館」の醍醐味のひとつです。
通い慣れた劇場を選んでも観るのも良し。まだ足を運んだことがない地域の有名なミニシアターを選ぶのも良し。そして新型コロナウイルスが終息したら、是非とも「本物の映画館」に足を運んでほしい…。
そんな切なる願いが込められた「仮設の映画館」で、あなたも映画体験をしてみて。
『精神0』
2020年5月2日10:00~22日21:00まで[仮設の映画館]にて全国一斉配信(延長の可能性あり)
以降、[東京]シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
製作:柏木規与子
出演:山本昌知、山本芳子
(C)2020 Laboratory X, Inc
公式サイト https://seishin0.com/
仮設の映画館 http://www.temporary-cinema.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/