新型コロナ経済対策に政府はどこまで応えるか~衆参集中審議
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月11日放送)に慶応義塾大学教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。衆参両院の予算委員会で行われる集中審議について解説した。
緊急事態宣言の解除基準や2次補正が焦点となる衆参集中審議
衆参両院の予算委員会は11日、安倍総理が出席し集中審議を行う。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の解除に向けた基準や、2020年度第2次補正予算案の規模や内容などが焦点となる。
飯田)緊急事態宣言の延長の後、総理が国会で説明するのは初めてとなります。午前に衆議院、午後は参議院、それぞれ3時間ほど行われるということです。コロナの話になればいいのですが、検察の定年延長などいろいろな問題があります。
細谷)与野党ともに、まずはコロナの問題です。特に飲食関係や自営業で生活が困窮している方、将来の見通しが不安な方がたくさんいると思います。そういうことを政治家の方々には重く受け止めていただいて、他にもいろいろ議論することはあると思うのですが、ここに集中して、今後の政府がどのような対策を取るべきかを議論して欲しいです。
どこまで政府が補償をするか
飯田)第1次の補正予算は先月(4月)末に通りました。給付金も手に届き始めているという話も出ていますけれども、この給付金は緊急事態宣言が延長される前の前提です。そうすると、また手当てが必要になると考えた方がよいのでしょうか?
細谷)究極的に言えば、国がすべて面倒をみるということになると、それはもう社会主義の国になります。そうなると国の性質自体が変わってしまい、すべての人たちの生活を国が守るということになる。でも、その真逆が新自由主義的なもの、つまり個人責任で、いまのような感染症拡大であってもすべて個人の努力で解決して欲しいということを議論する。この間のどこにバランスを取るか、ということになるのではないでしょうか。国によって、かなり立ち位置が変わると思います。日本は動きが遅かったのですが、イギリスをはじめとして、他の国が大胆に経済的な補償をするということで、日本も増やし始めたのです。それは基本的にはいい方向だと思います。休業を求めるのであれば、政府が一定程度の補償をすることは必要な措置だと思います。
野党の大胆な要求に政府がどこまで踏み込み規模を確定できるか
飯田)その辺りは、1次補正が15~16兆円から少し積みまして、22~23兆円になった。2次補正もさらに求めるとなると、国民民主党の玉木代表などは100兆円規模の2次補正が必要なのだと大きな額を言っていますが、インパクトの部分も重要ですよね。
細谷)そうですね。これもマスクや人工呼吸器をつくるのと同じで、つくりすぎると余ってしまうということになる。でも、とにかくいまは足りないということになっている。大胆でありながら適正な規模ということが、同じような形で求められると思います。そこがどの水準なのかは、これから与野党で議論されるのだと思いますが、少なくとも野党は大胆で大規模な補正を求めて来るでしょうから、それに対して政府がどこまで踏み込んで規模を確定できるかが焦点になると思います。
検察庁法改正案と新型コロナの問題
飯田)一方で、予算委員会が立って総理が出るということになると、コロナ以外の質問も当然出ます。ここへ来て話題になっているのが、国家公務員法の改正案。そのなかに検察庁法の改正案もあって、検察官の定年の延長と。ここに検事総長人事が絡んで、「またお友達人事ではないか」ということが出て来ていますけれども、この議論の展開はどうご覧になりますか?
細谷)いくつか性質が異なる議論が混ざってしまって、それが積極的に動いているのだと思います。安倍政権批判のために使えるのだということで、それを批判の道具に使っている部分。比較的それが国民の共感を得やすいという判断を、野党はしているのです。しかしながら世界的に見ても、例えばトランプ政権のアメリカは大統領選挙を行っていますし、韓国も4月後半に総選挙がありました。つまり世界的に、コロナの問題が政局に翻弄されてしまっている。どの国でも、国民の間には大きな不満やストレスが溜まっていて、その矛先は当然、政府に向かいます。そのときに政府批判ということになりますが、当然ながら民主主義国では、政府の政策は徹底的に検証することが必要です。ですから野党も今回、質のいい批判をして欲しいのですけれども、少なくとも検事長の定年延長問題は以前からあった議論です。法律的にも、それをどう応用するかという定年延長の問題です。そして現在の安倍政権の人事問題。それらの異なるものが混ざってしまっているので、1つ1つを適切な形で批判し、或いは対応して評価するということが必要だと思います。
国家公務員法の改正~政府はもう少し上手な説明の仕方があったのでは
飯田)この法律そのものは施行が2022年と言われていますから、いま問いただされている検事総長と、後任となる検事長の人事で定年延長があったということとは、実は無関係であると。
細谷)そうなのです。定年延長の問題は、高齢化して行くなかで民間企業でも大きな問題です。社会保障、年金の受給年齢が上がって来ます。そうすると、60代の方々が長く働かなくてはいけない。民間企業のなかでもそういう動きがあります。公務員の場合は、それをどのような基準にするかということが、随分前から議論されていました。しかし、どれくらいまで延長するかという問題と、一方でいまの安倍政権の人事が従来とは違うではないかという批判など、いくつかの問題が混ざってしまっていると思います。政府としては、この部分についてもう少し上手な説明の仕方があったのかも知れません。
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