佐藤正久議員~緊急事態宣言の解除に欠かせないもの
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月12日放送)にジャーナリストの有本香が出演。電話ゲストに佐藤正久参議院議員を迎え、緊急事態宣言の解除について解説した。
安倍総理「14日に一部地域の解除を判断する」と述べる
安倍総理大臣)今週の14日に専門家の皆様方からご意見をいただきながら、一部で解除が可能かどうか発表させていただきたいと思うところでございます。
西村経済再生担当大臣は、特定警戒都道府県以外の34県について「多くの県で解除が視野に入って来る」との見方を示した他、特定警戒都道府県についても「新規感染者の数などが著しく改善している都道府県は、解除が視野に入って来る」と述べた。
飯田)新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の一部地域の解除について、質問に答える安倍総理大臣でした。この時間は元陸上自衛隊の化学科隊員で「ヒゲの隊長」こと前外務副大臣、佐藤正久参議院議員と電話がつながっています。よろしくお願いいたします。
佐藤)よろしくお願いします。
飯田)専門家会議の意見を聞いて、解除の判断をするのは14日ということですが、どうご覧になっていますか?
一律の基準は難しい~それぞれのデータが重要
佐藤)特に東京を含めた13の特定警戒都道府県以外である、34県については、もともと5月の連休中に34県の方が東京などへ移動しないように、緊急事態宣言を延ばしたという側面も強かったわけです。14日の段階でそれほど感染者が増えていなければ、解除というのは当然だと思います。大阪の吉村知事が、休業要請や自粛解除の数値目標を出しましたよね。でも、あれは岩手や鳥取には使えないのです。岩手は感染者がゼロなので、ゼロのところにあの基準は使えません。鳥取県は3人です。都道府県ごとに状況が違いますので、全国一律の基準は難しいです。1週間単位での、あくまで参考基準とした数字を、国としては出さざるを得ないと思います。いちばん大事なことは都道府県ごとに違いますから、それぞれが分析するということだと思います。
飯田)最終的には、それぞれの知事の判断を踏まえてということですね。
佐藤)国としては大掴みにやったとしても、最終的には知事がどういう形で休業要請を緩めるか、学校を再開するかということになります。その意味でも、現状を把握するためのデータがないと判断は難しい。厚生労働省が改善しようとしている、感染者数や入院者の状況を把握するためのシステムの整備は、もっと早い段階でやっておくべきだったと思います。
データを把握しなければ闘えない~厚生労働省は感染症情報に対する意識が低い
飯田)東京都の小池知事も報告漏れがあったことを11日に発表し、厚生労働省でも9日に数字の修正がありました。佐藤さんが前々から指摘されていたことですよね。
佐藤)闘いというのは、まず敵を知って、我を知らなければいけないではないですか。どのくらいの感染者がいるのかを掴まないといけないのですが、これは全部検査しなければ掴めません。少なくとも、検査した人間くらいは掴まないと判断できません。例えば飯田さんが陽性になったとします。肺炎の疑いがあれば、入院しなければいけません。でも入院するときに、病院のベッドの空き状況や人工呼吸器などの装置の有無がわからないと、どの病院へ搬送していいかわからないではないですか。すべての運用オペレーションの基本はデータなのです。それを把握できないということは、運用上も問題だし、これから解除を進めるときもデータが基本になります。しかも東京都の場合は、検査した人と陽性だった人の割合を決めるときの、分子と分母の数が合っていなかったなど、いろいろなことがありました。早急に改善しなければいけないと思います。
飯田)端末に入力した後でファックスでも送っていたとか、そもそもいまの時代になぜファックスなのかという運用の問題もありましたが、こういうところも一本化しなければいけないということですか?
佐藤)極めてアナログな状況です。しかも、いまは検査機関が保健所と地方衛生研究所だけではなく、大学病院や民間の検査機関など、場所が増えています。端末ごとに入れてもらわないと把握できないと思います。更に、日本人はどうしても情報を軽く見る傾向があるのですよね。厚生労働省は感染症情報について、もっと真剣に考えるべきです。1月から4ヵ月経ってこの状況では、情報に対する意識が低いと言わざるを得ません。
有事にはある程度の権限集中が必要
有本)いくつかの都道府県が、独自の判断基準で解除するのは当然の流れだと思います。ただ、諸外国の状況を見ますと、日本と違って厳しいロックダウンをして来ました。州ごとの基準で解除するのですけれども、その場合に「州を越えた移動はしないでくれ」という前提があるわけです。こういうことについて国の方から全体を俯瞰する形で、例えば「県を越える移動はやめてくれ」というようなアナウンスは、国としての判断がなくてもいいのでしょうか? 先ほど佐藤さんがおっしゃっていたように、岩手は感染者がゼロです。我々東京の人間が岩手などへ行ってしまうと、それはそれでよくないのではないかなど、いろいろなことが考えられるのですが。
佐藤)国としても一応、要望として県をまたぐ移動は控えてください、というお願いベースなのですよね。しかし台湾の成功例などを見ると、緊急事態では中央がある程度の強い権限を持って、州や県をまたぐ統制をしなければ、感染症は人の移動によって拡大するので難しい側面があります。感染症だけでなく、日本が戦争状態になって日本防衛というときも、中央にある程度の権限がないと対応できないということは、いろいろな面で考えられると思います。
有本)今回の状況から、さまざまな課題が浮かび上がります。それを憲法の議論を含めた形で、国会で大所高所に立った議論が進んで行けばという期待もあります。
州に権限があるアメリカ
佐藤)まさに今回、日本だけでなく、他の国にもいろいろな教訓が出ています。特にアメリカの場合は連邦国家で、州に強い権限があるわけです。休業要請を解除する権限も州、ロックダウンの権限も州になります。連邦としては指示をしても、知事が承諾しなければ連邦の言うようにはならないという教訓が出ていますから、そういうものも参考にしながらやらなければいけないと思います。有本さんは、ハンバーガーはお好きですか?
有本)普通です、食べますけれど。
佐藤)実は、アメリカでは牛肉や豚肉の流通が滞っているのです。アメリカ人はみんな肉が好きですが、スーパーで買う量が制限されて、ハンバーガーに制限がかかっています。トランプ大統領は選挙もありますから、食肉加工工場の再開を大統領令で出したのです。ところが相手は民間で、知事に再開の権限がありますから、知事が承認しなければ再開できないという状況です。国民生活1つを取っても、国の権限と州の権限が違ってしまうとなかなか対応できないという例でもあります。これを教訓として、日本でも次に活かすことが大事だと思います。
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