オリジナリティあふれるミシェル・ゴンドリーの世界
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第832回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
映画だけでなく、さまざまな楽曲のPVやコマーシャル映像を演出。そして脚本家としても活躍する映像作家、ミシェル・ゴンドリー。その独創的な世界観は、新作を発表するたびに観る者を魅了しています。
そこで今回は、ミシェル・ゴンドリー監督作品を4タイトルご紹介します。
どの作品にも、手作り感と遊び心が満載!
1993年に発表されたビョークの「ヒューマン・ビヘイビア」のミュージック・ビデオが評判となり、一躍その名を知らしめたミシェル・ゴンドリー。
その後、ザ・ローリング・ストーンズ、ダフト・パンク、ケミカル・ブラザーズ、レディオヘッドをはじめ、多くの人気ミュージシャンのミュージック・クリップを製作する一方で、さまざまな有名ブランドやメーカーのCMも担当。
そんな活躍にハリウッドからも注目されて、監督・原案を務めたのが映画『エターナル・サンシャイン』です。
バレンタインを間近に控えたある日。ジョエルは喧嘩別れしてしまった恋人クレメンタインと仲直りしようとしていた矢先、彼女が特定の記憶だけを消去する手術を受けたことを知ってしまう。
苦しんだ末、自分もクレメンタインとの波乱に満ちた日々を忘れようと、記憶を消し去ることを決意。しかし、本当は彼女を忘れたくないジョエルの深層意識は、施術に反抗し…。
「恋人との記憶を消す」という発想もさることながら、主人公の“脳内”の恋愛を見続けるという斬新な映画体験が、公開当時も話題となった本作。これほどまでに突飛な設定をピュアなラブストーリーにまで昇華させたのは、ミシェル・ゴンドリー監督だからこそ成し得た技と言えるでしょう。
ミシェル・ゴンドリー監督作品のなかでも色褪せることがない、傑作中の傑作です。
監督だけでなく、初めて単独脚本も務めた『恋愛睡眠のすすめ』。夢見がちでシャイな青年とクールで知的な女性の恋愛模様を、青年が見る夢と現実を交錯させながら描いたロマンティックなラブストーリーです。
仕事も恋愛もうまく行かず、冴えない人生を送るステファンは、父の死をきっかけに、住み慣れたメキシコから母のいるパリに移住することに。ある日、彼の隣の部屋にステファニーという女性が引っ越して来る。
魅力的な彼女に恋をするステファンだったが、引っ込み思案な性格ゆえ、なかなか思いを伝えることができない。そのうちに、思い込みの激しいステファンは、夢のなかで彼女と理想的な恋愛生活を送るようになり…。
ストップモーションアニメーションやダンボールを使ったテレビスタジオなど、手作り感満載の映像はポップ&キュート。まるでミシェル・ゴンドリー監督の“頭のなか”を覗き見るような、遊び心にあふれた1作ですよ。
ミシェル・ゴンドリー監督が「この映画は100%僕の思い出からできている。僕が体験したことを元に冒険したかったんだ」と語る自伝的青春映画。それが、14歳の少年2人の夏休みの体験を描いた『グッバイ、サマー』です。
女の子のような容姿でクラスメイトからバカにされ、恋する女の子にはまったく相手にされないダニエル。彼は多くの悩みを抱えている、画家を夢見る14歳の少年だ。
そんなダニエルのクラスに、目立ちたがり屋で変わり者の転校生がやって来る。彼の名前は、テオ。機械いじりが趣味で、いつもガソリンの匂いを漂わせていた。
周囲から浮いた存在の2人は、すっかり意気投合。息苦しい毎日から脱出するために、ある計画を思いつく。それはスクラップを集めて“夢の車”を作り、夏休みに旅に出ることだった…。
もどかしくも甘酸っぱい青春の日々が、色鮮やかなフランスの街並みや自然とともに映し出される本作。爽やかな感動を呼ぶ、キュートなロードムービーです。
多くの映画製作者が新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けるなか、ロックダウン生活中に短編アニメーションを発表したミシェル・ゴンドリー監督。
「Une petite visite a mon college」というタイトルのアニメーションは、フランスにある彼の名前が付けられた映画学校に提供されたもの。アニメーション化されたゴンドリー監督が、ロサンゼルス、グランドキャニオン、シカゴなどを経由しながら、学校にたどり着くまでの様子がコミカルに描かれています。
「Une petite visite a mon college」は、現在、vimeoで公開中。ハンドメイドな手触り感が伝わって来るチャーミングな短編を、是非、楽しんで。
<作品情報>
■エターナル・サンシャイン(2005年日本公開)
Blu-ray&DVDリリース中 デジタル配信中
監督:ミシェル・ゴンドリー
脚本:チャーリー・カウフマン
原案:チャーリー・カウフマン、ミシェル・ゴンドリー、ピエール・ビスマス
音楽:ジョン・ブライオン
出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、マーク・ラファロ、イライジャ・ウッド、トム・ウィルキンソン、デヴィッド・クロス
原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind
■恋愛睡眠のすすめ(2007年日本公開)
DVDリリース中 デジタル配信中
監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
音楽:ジャン=ミシェル・ベルナール
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、シャルロット・ゲンズブール、アラン・シャバ、ミュウ=ミュウ、エマ・ドゥ・コーヌ
原題:La Science des rêves(フランス語)、The Science of Sleep(英語)
■グッバイ、サマー(2017年日本公開)
Blu-ray&DVDリリース中 デジタル配信中
監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
音楽:ジャン=クロード・ヴァニエ
出演:アンジュ・ダルジャン、テオフィル・バケ、ディアーヌ・ベニエ、オドレイ・トトゥ
原題:Microbe et Gasoil(フランス語)、Microbe & Gasoline(英語)
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/