中国の人権弾圧に声をあげない日本の政治家

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月26日放送)にジャーナリストの有本香が出演。国家安全法に抗議する香港でのデモ、また中国による人権弾圧について解説した。

中国の人権弾圧に声をあげない日本の政治家

香港の繁華街で行われた、国家安全法導入に対する抗議デモ。抗議者たちは中国共産党の滅亡を求めて「天滅中共」のポスターや「香港独立」の旗を掲げながらデモ行進した=2020年5月24日 写真提供:産経新聞社

中国で審議中の法案をめぐり香港でデモ~180人以上逮捕

香港の繁華街で24日、中国の全人代で審議されている国家安全法について「政府批判が罪に問われ、言論の自由などを奪う」などとして反対するデモが起こった。香港メディアによると数千人が参加した。また、香港警察は排除のため催涙弾を撃ち、少なくとも180人以上を違法集会などの疑いで逮捕した。

飯田)コロナの影響で、9人以上は集まってはいけないと言われていたのですが、どう考えても100人以上の香港警察が密集していました。

有本)これは2019年6月からの流れがあります。そこから香港で何百万人という規模のデモが起きました。2014年に学生たちが起こした雨傘運動というデモがあって、そのときから感じていることがあります。かつて香港が返還され、一国二制度が50年続くと中国側は約束したのだけれど、そのときに、日本でお馴染みの台湾出身の評論家である金美齢さんや、いわゆる台湾独立派の人たちは「そんなもの中国が50年も約束を守るはずはない」と言っていました。そのときに台湾の独立派の人たちが言っていたのは、「香港人はもっと戦って欲しい」ということです。怖いのはわかるけれど、香港が返還されるときに外国へ逃げて他の国の国籍を取り、商売だけ香港へ戻ってやればいいや、ではなくて「政治的に中国と一緒に戦って欲しい」ということをおっしゃっていました。私もそのときは香港の人は非常に現実的で、あまり政治的なことに自分の体を張って命をかけることはしないのかなと思っていました。しかしそうではなく、若い世代が自分の将来や自分の命をかけて「香港の将来のために」と言って闘う姿を数年間見ているのです。人間というのは、現実的な自分のきょうの生活以外のためにも、いろいろなことを志してやれる存在なのだな、ということを改めて知らされたところがあります。

中国の人権弾圧に声をあげない日本の政治家

香港の金融街セントラルで抗議活動する市民ら。香港区議会選挙では民主派が圧勝した=2019年11月25日(共同) 写真提供:共同通信社

中国の人権弾圧について姿勢を示さない日本の政治家たち~アメリカは人権法を制定

有本)それに反して日本なのですが、これを応援する人たちはたくさんいます。しかし、日本の国会のなかでこのことがまともに取り沙汰されないのは極めて残念だと思います。

飯田)諸外国、アメリカは人権法を制定して、弾圧に関わった人たちには個人資産の凍結などを決めました。

有本)個人に対する制裁ということですよね。それから、この関連で言うと、中国が著しい弾圧行為を行っているチベットやウイグル人への人権弾圧も、アメリカは、ここのところ立て続けに法律をつくって、これに対して制裁をする構えです。トランプ政権になってから著しいのですが、いまは議会も共和党の上院がリードしているところがあります。2000年代の初めには、アメリカも中国でのビジネスに前のめりになっていました。そしてアメリカ政界にも、たくさんのパンダ派、親中派と言われる人がいたのですが、このときでも何らかのひどい事件が起きたときは、アメリカ議会や国務省はそれなりの非難の声明を出したり、一部制裁的なことをやったりしているのです。ビジネスはビジネスであるけれど、理念の点で中国のやっていることや価値観は許せないと言わなければいけないという気持ちが、アメリカ政界のなかにはずっとあるのです。これに対して日本がまったくそういう動きに結びついていないまま、きょうここへ至っているのがとても残念だと思います。

飯田)実利ばかりに走るというか、ビジネスの短期的な利益に走っている。

有本)世界というのは、2つの利を求めてしのぎを削っています。1つは利益、1つは理念です。もちろん価値観は多様でいいのだけれど、人が人として基本的に大事にされるということ。あるいは基本的な自由が保障されているということ。これがない世界に私たちは堕ちてしまっていいのかということです。これに対して日本の政治家がものを言わないというのは、何のために政治があるのかということだと思います。

日本企業の製品が強制労働によってつくられている可能性が

飯田)世界中で中国の一連の人権弾圧に関して、さまざまな調査報道が出ています。中国はいろいろな部品を集めて各国製品をつくるのですが、部品のつくられ方がどうなのか。

有本)別のインターネット番組で、在日ウイグル人の方と告発しているのですが、オーストラリアの戦略政策研究所というところが出しているレポートです。ですから、非常に精度も高いと見ていいのですが、このなかに多くのグローバル企業の実名が出て来て、その企業が意図していなくても、ウイグル人の一種の奴隷労働によってつくられた製品を、一部サプライチェーンのなかに組み込んでいるのだと。これはウイグル人を新疆ウイグル自治区から他のところへ連れて行って、中国系企業で強制労働させているものです。そこでできた部品や素材がグローバル企業に供給されている。そのなかに日本の誰でも知っている11社の名前も出て来るのです。これに対して、在日ウイグル人の人がいま質問状を出しています。この回答は、ポツポツと返って来ているようですけれども、私は日本企業の良心にかけて、もし日本企業がそれを知らなかったとするならば、これは調査をかけていただいて、そういう状況があるのだったら、是正して欲しいと思います。そして、こういったことに対してまさに政治家が動くべきだと思います。

中国の人権弾圧に声をあげない日本の政治家

死亡した男子大学生が転落した現場近くで花を手向ける人たち=2019年11月8日、香港・新界地区(共同) 写真提供:共同通信社

日本人はグローバル経済の恩恵の裏側に疑問を持って目を向けるべき

飯田)人権というところもそうだし。

有本)私たちの使うものが、そういうもので成り立っていていいのかというところです。

飯田)それこそ、児童労働でつくられた製品を買わないようにしようという、フェアトレードと重なることですよね。

有本)アメリカは、国内における搾取労働に90年代は批判が集まりました。あれは国内で移民を使った搾取労働があるということで、大企業が槍玉に上げられましたけれど、これがいま、グローバル化しているなかで国境を越えてあるということです。こういうことについて、まさに政治が何らかのメッセージ、何らかの動きを見せるべきだと思います。それから、今回のコロナとも関わりますけれども、日本や日本人はグローバル経済の恩恵を受けているのですが、自分の見えないところでいろいろなものがつくられて、私たちの生活を便利にしてくれていて、しかも価格的にも安い。この状況を疑問に思わなければいけないですよね。

飯田)それがコロナ後の世界のあり方なのかも知れませんね。

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