ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月23日放送)に笹川平和財団上席研究員の小原凡司が出演。尖閣諸島に対する中国の戦略と今後するべき日本の対応について解説した。
中国船、尖閣沖で領海侵犯
沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で20日、中国海警局の船4隻が約2時間にわたって日本の領海に侵入し航行した。尖閣諸島沖での中国公船の領海侵入は2月13日以来で、今年(2020年)5回目となる。
飯田)尖閣諸島沖、かつては接続水域に入っただけでも大きく報道されましたが、最近はメディアでの報道がなくなって来ています。
小原)中国は、新型コロナウイルス感染拡大の陰に隠れてやっているというより、継続してずっとやっています。中国の行動は変わっていない。しかも徐々にエスカレートしています。よくサラミスライスと言われますが、肉屋に並んでいるサラミソーセージを1本盗むとバレるけれど、毎日1ミリずつならばなかなかバレない。気が付いたときには後の祭りという意味です。中国は、徐々に徐々に奪ろうとしている。
日本との協力は維持したい~しかし尖閣諸島のことはまた別
小原)コロナウイルス対策では、日本との協力を呼び掛けていますし、驚くことに中国外交部の報道官がツイッターをやっているのです。中国国内でツイッターは禁止されているのですが、外交部の報道官は日本語や韓国語でもツイートしていて、3月初めには日本語と韓国語、ほぼ同じフォーマットで「一緒に頑張りましょう」と出しています。日本が中国や韓国に入国制限をかけた後、韓国はいきなり手のひらを返して、日本に対しビザが必要だとか発給を取り消すなどと言いました。中国は引き続き日本に関しては協力姿勢で、その後のツイッターでは桜のなかに五重塔があり、小さな女の子が桜へ手を差し伸べているイラストまで加えて、「日本の人も一緒に頑張りましょう、春を迎えましょう」といったツイートをしています。中国はコロナウイルスの影響もあって、国際社会から孤立するのを恐れている。何とか日本との協力を維持したい、よくしたい。それが米中対立にも役に立つのですけれど、実はそのことと尖閣諸島は全然リンクしないのです。中国の目標が変わっていないことを示しているのだと思います。
尖閣諸島に対する行動を中国がやめることはない
飯田)随分前に、尖閣諸島も革新的な利益の1つと言明した。これはウイグルやチベット、台湾と同じ表現だから、諦めることは絶対にないということですよね?
小原)そうですね。いますぐに軍事力を使って獲りに来ることは考えにくいとしても、中国は諦めることをしないのです。獲れるものはいますぐ獲る。獲れないものは脇に置いておくけれど、決して忘れない。獲れるようになったら必ず獲る、この繰り返しだと思います。獲れなかったものは100年後に獲るし、諦めない。それに対する行動はずっと続けているのだと思います。尖閣諸島に関しても、あまり慣らされてしまうと、中国は徐々にエスカレートさせて来る。気が付いたときには後の祭り、ということにもなりかねない問題です。
飯田)尖閣諸島は石垣市の一部で、南西諸島だと考えると、そこには米軍基地が大きく展開している。日米の間を割くことが、尖閣を獲ることにつながると中国は考えているのですか?
小原)いえ、逆に尖閣諸島へあまり挑発行動をかけると、日本が中国に反発します。そうするとアメリカにまた寄ってしまいます。アメリカと日本を切り離すためにも、中国は日本を取り込みたい。ですから中国は尖閣諸島に対して、行動を大きくアピールしたくはない。ただ、変えないということです。
飯田)劇的に何か大きな船を出すとか、頻度をものすごく高めるようなことはせずに、現状を維持して少しずつ増やして行く。
小原)はい。いまの段階では、日本はアメリカとのゲームのなかで重要になるため、日本をあまり怒らせないように、わからないように進めて行くということなのだと思います。
飯田)日本国民としては、わからないように進められたら困るということですよね?
小原)そうです。ですから、そういうことが起こっているのだと、常に意識しておかなければいけません。海上保安庁はこれに対処するための予算を増やしましたし、船を増やす努力もしているので、日本側の対応も理解しておいて欲しいと思います。
宮古島にミサイル部隊を置く意味
飯田)南西諸島の守りで言うと、宮古島にミサイル部隊を置くということです。地対艦ミサイルという形ですから、他国の艦艇が入って来たとき、それに対処するというものですよね?
小原)そうです。ただし離島にある部隊なので、戦闘になったら最初に狙われるところです。しかしいまの段階では、中国もアメリカも戦争はしたくない。だからこそ経済や安全保障、外交問題で政治的なメッセージを送り合っている。軍事的にも政治的メッセージを送る手段として、「南西諸島を含む第1列島線は日本がしっかりと抑えていますよ。ここにちゃんと部隊があって、中国は自由に来ることができませんよ」という意味でもあるのです。それが中国に対して、自由に太平洋へ出て行けないという認識を持たせる。射程200キロほどのミサイルを置くので、沖縄本島と宮古島間の200キロ余りをカバーできるという能力を示します。これで本当に戦争をするということではありません。あくまで、お互いに送り合っている政治的メッセージの一部です。
飯田)よく安全保障の専門家が出す地図で、北京を中心に南北をひっくり返すと日本列島、特に南西諸島が邪魔になるのですよね。北京から太平洋に出るためには。だから、そこで蓋をするということですね。
小原)そうですね。ただ蓋をするといっても、いま海や空では制海権や制空権という言葉はあまり使いません。完全に抑えることは難しい。そこで、優勢を取る。海上優勢や航空優勢という言い方になります。出ようとするのを止めはしないけれど、中国がいまの秩序に反するようなことをしたら、いつでも止めることができるという意味です。
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