WHOの言うことを気にするな~中国の言いなりになる裏事情
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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月5日放送)に産経新聞客員論説委員・国際医療福祉大学の山本秀也が出演。新型肺炎拡大の背景に見えるWHOと中国の関係について解説した。
日本はWHOの言うことを気にするな!
新型コロナウイルスによる肺炎の拡大をめぐり、WHO(世界保健機関)が迷走している。事態が悪化しつつあった1月23日に緊急委員会を開いたが、緊急事態宣言については「時期尚早」と見送った。26日にはリスクを「中ぐらい」と発表したが、これはミスだったとして「高い」に修正。30日にはようやく緊急事態宣言を出したが、同時に「中国の能力を信頼している。渡航制限の必要はない」と述べ、中国への配慮がうかがえた。
森田耕次解説委員)フランスの新聞ルモンドは「中国がWHOに緊急事態宣言を出さないよう圧力をかけていた」とも報道しています。これはどういうことなのでしょうか。
山本)そもそも、WHOが出す緊急事態宣言というのは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」ということで、これが6回目で、非常に権威があって重いものなのです。各国の衛生検疫機関はWHOの宣言を見てアラートを高めるので、スタンダードになるものを出すのはタイミングが大事なのですが、23日に緊急会合を開いておいて、このときには十分に患者が広がっていたにも関わらず、出せずに見送りました。その後も判定をころころ変えて、宣言を出したらこれを自ら打ち消すような補足説明を繰り返すというところで、迷走ぶりが目立ってしまっているところです。
森田)4日にも執行理事会で特別会合を開いたようですが、WHOのテドロス事務局長が中国への渡航歴のある人物の入国拒否が相次いでいることについて「公衆衛生上の意味はあまりなく、不安や悪いイメージを助長する恐れがある」と各国に自重を求めている状況なのですよね。
テドロス事務局長は中国からの経済援助が大きいエチオピア出身
山本)過剰パニックを控えろというものとは別の議論で、いま感染地域からの入国を制限するのは各国が同時判断でやっているものです。まさに中国外務省のスポークスマンの言っていることがテドロス事務局長の言っていることと一緒で、「中国からの人的往来を制限するのはおかしい。まだ広がっている状況ではない」ということを対外的には言っています。注目すべきなのは、テドロス事務局長の出身地であるエチオピアと中国の関係です。それから、WHOと中国の2つの関係性を見なければ、この発言は読めません。まず、WHOは中国の影響がものすごく強いのです。影響力が効いた例というのが、台湾が国連の加盟国ではないということで締め出されてしまうわけです。そうはいっても病気は国境を越えてくるわけで、入れてくれ、とにかく年次総会には出させてくれということを言うのですが、中国側は台湾の政権が国民党か独立志向の強い民進党かを見て、ときどきに参加を認めるかどうかの蛇口を開いたり閉めたりするのです。前のWHO事務局長はマーガレット・チャンで、この人は香港の衛生トップをしたことのある香港出身の人なのです。私が香港にいたとき、鳥インフルエンザ騒ぎのときに彼女の記者会見には毎日行っていました。この人は鳥インフルエンザのときも対策に当たり、SARSのときには後手に回って叩かれましたが、香港の衛生問題で責任を背負った人です。本当は有能なので全部わかっているのですが、中国の選出で送り込まれると中国政府の言う通りに動いてしまいます。それから、もう1つはエチオピアです。これは歴代政権に中国からの経済援助がどっぷり入っているのです。しかも、人的往来も大変多いのです。実は、エチオピアの元大統領は、私が留学中のときの先輩なのです。駐日大使をやっているときにはご飯をご馳走してもらいました。非常に中国語の堪能な人でした。
森田)その方も中国に留学していて、戻って大統領になったと。そういう人的交流があるのですね。
山本)エチオピアの留学生は多かったと思います。
森田)テドロスさんは中国留学経験者ではないのですよね。
山本)そうですね。今度も宣言を出す直前に訪中して、習近平国家主席と話のすり合わせをした上で言っているわけですから、これはルモンドの報道を信じてしまいますよね。もちろんWHOが何を発するかということは重要で、それを否定するつもりはないのですが、要は自分の国の状況に応じて独自の判断をして感染者の拡大を防いでいく判断をすべきです。日本の場合、主語は日本ですよ。日本政府がしっかりとやらなければ駄目なのです。
森田)WHOの中国との親密さはあまり知られていませんものね。
山本)台湾を締め上げる道具に使っています。
過去に患者隠しを行った中国~未だ不透明な実態
森田)今度、WHOは調査班を出すことにしているようです。
山本)これには感染症の専門家が多数入っていると思います。SARSのときも送りましたが、中国はきちんと協力すべきです。SARSのときには患者さんがたくさん入っている病院から高熱の患者を隠すために、患者を乗せたバスで市内を走り回ったというような笑い話もあります。
森田)そんなことがあるのですか。入院患者を見せないために。酷いですね。
山本)当時も報道されていましたが、聞いて驚きました。高熱を発してクラクラしている人をバスに乗せて走り回るのですからね。まさか今度はやらないだろうと思いたいですがね。
森田)今週中にWHOと各国の専門家からなる調査団が入るようですが、きちんとした調査ができるのかどうか。
山本)心配ですね。中国の場合、透明性がどこまで担保されるというのは如何なる場合もついてくる疑問です。
森田)事務局長のテドロスさんにも驚きました。
山本)はっきりと言いますが、この人には辞めてもらいたいです。
森田)22ヵ国が中国に対して渡航制限措置を取ることをWHOに報告していますが、WHOは渡航や貿易の宣言を勧告していません。
山本)ですので、国の判断でしっかりとやらなければいけません。
森田)感染者の数もWHOでしっかりと把握してもらいたいですね。中国の数字が正しいかどうか不安に思っている方は多いのではないでしょうか。
山本)ただ、WHOは集計役であって独自に調査するわけではないので、数字を元にして各国の公衆衛生の専門家が「こんなものではない」と推計を出すことはあります。1月の前半に中国が40人と言っている段階で、「1,700人はいる」という推計が出ていました。実際にはその数字を遥かに超えましたね。
森田)きちんと調査して、正しい情報を出して欲しいですね。
山本)読みをきちんとやらなければいけないということです。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。