WHOの緊急事態宣言を阻止したかった中国の面子と事情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月31日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。新型コロナウイルスによる肺炎で世界保健機関(WHO) が緊急事態宣言をしたニュースについて解説した。
新型肺炎でWHOが緊急事態宣言
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界保健機関(WHO)は専門家による緊急の委員会を開き、感染が他の国でも拡大する恐れがあるとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。緊急事態の宣言は、アフリカ中部コンゴ民主共和国でエボラ出血熱の流行で出された2019年7月以来、6件目となる。
飯田)医療体制の脆弱な国への感染拡大を懸念しているということです。
宮家)数日前も出すか、出さないかと言って、結局出さなかったのでしょう?
飯田)議論するのは3度目ですよね。
宮家)こんなことになることは最初からわかっているではないですか。やはり中国は面子を大事にするのですね。いずれにしろ、これから大変なことになると思います。私はSARSが感染した当時、北京にいたから比較をするのだけれど、経済活動で考えたときに、当時は重慶や武漢など内陸の地域はそれまで孤立していたわけです。しかし、いまや武漢は交通や物流のハブだけではなくて、サプライチェーンのハブでもあるのです。ですからこの町の機能が止まるというのは、しかも今回はいきなり止めましたから、みんなかなり苦労されるのではないかと心配ですね。
このまま物流が止まると中国経済に大きな打撃となる
飯田)製造業の方は、中国からの製品が入って来なくなったとツイッターでつぶやいています。
宮家)別の国で代替生産を始めるという話が出ていますが、こうした封鎖措置はいつまでやるつもりなのですかね。緊急事態が出てしまうと、厳しい規制がさらに取られるわけでしょう。終息宣言はいつ、どのように出すのでしょうか。先日あるところで専門家の話を読んだら、ピークは3月~4月だと言うお医者さんもいるのです。経済活動が数ヵ月止まったら、中国の経済は大変なことになりますよ。もちろん保健医療の関係者の方は大変だと思うけれど、経済、ビジネスをやっている方も大変だろうと思います。
WHOの緊急宣言は回避したかった習近平政権
飯田)WHOのテドロス事務局長は、貿易や渡航を制限する理由は見当たらないとして、渡航制限勧告は見合わせるということを表明しています。それから、WHOのツイッターのアカウントをリツイートしてくださった方がいるのですが、「これは中国の不手際を言うものではないとあらかじめ言っておく」というようなことを、WHOは発表しているようです。
宮家)そんなことわざわざ言わなくても、わかっていますよ。黙って仕事をやればいいのだけれど、WHOはそれほど中国が気になるのですかね。中国からしたら「やめてくれ、そんなことはない、きちんとやっている」と。そういうことをされると、ますます中国の将来、中国の経済、中国の政治に国際的な影響が及び得るわけですからね。内政的に習近平さんは嬉しくはないですよね。
飯田)「コントロールできていないではないか」と。
宮家)それがいつ、どういう形で綻びになるかわからないから、みんな心配なのではないですか?
飯田)その心配みたいなものが、情報を正しく出すよりも、抑え込んだ方がいいのではないかというところにつながっているのですね。
宮家)面子の方が大事ですからね。それはSARSのときも同じです。ぎりぎりまで我慢して隠して、最後にボーンと全部出す。最初から徐々に出して行けば、みんな心配しないのに。
飯田)一部報道では12月半ばの時点で、人から人への感染もすでに確認されていたのではないかという指摘もありますが。
宮家)いまそういうことを言っても仕方ないのですけれど、それはあり得るでしょうね。
飯田)いまはとにかく感染の封じ込めと、重症化の防止です。
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