仮想敵国が味をしめる悪しき前例になる可能性~イージス・アショア地上配備中止

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月22日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。秋田でのイージス・アショア配備中止を受け、日本国内における今後の防衛戦略について解説した。

配備候補地としてきた新屋演習場周辺の住民代表(右)に「ご迷惑をおかけした」と深く頭を下げる河野太郎防衛相=2020年6月21日、秋田県庁 写真提供:産経新聞社

河野防衛大臣、イージス・アショアをめぐって秋田県に謝罪

河野防衛大臣)イージス・アショアの秋田県での配備に向けて、大勢の皆さまにご尽力を賜って参りましたが、それにも関わらず、今回このような判断をせざるを得なかったことを、防衛大臣として深くお詫び申し上げます。

 

河野防衛大臣は21日、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備手続きを停止したことを受け、配備候補地の1つだった秋田県を訪問し、秋田県の佐竹知事に「防衛省はさまざまな不適切な対応があり、地元にも迷惑をおかけした」と陳謝した。

飯田)秋田県の新屋演習場と、山口県萩市のむつみ演習場の2ヵ所を候補地として設定しておりましたが、突然、停止となりました。どうご覧になりますか?

衆院安全保障委員会でイージス・アショア配備計画停止について答弁に臨む河野太郎防衛相=2020年6月16日午前、衆院第17委員室 写真提供:産経新聞社

ミサイル・ディフェンスが頓挫してしまう~相手国のことを考えない残念な判断

奥山)残念ですね。安全保障関係者では意見が分かれていまして、お金がすごくかかるしというところで、「そもそもイージス・アショアは無理だったのではないか、止めてよかったのではないか」という意見があります。一方、イージス・アショアが防衛の計画として組み込まれていて、「イージス・アショアがあることを前提にミサイル防衛をやろう」と防衛省的にはコンセンサスができていたものを、いきなり止めてしまうということになるので、「ミサイル・ディフェンスそのものを構築できるのか」というところが問われることになってしまう。いままでもミサイル・ディフェンスは守り専門でやって行こうというところもあったのに、ここで頓挫してしまう。「ミサイル防衛はやらないの?」というところですよね。日本国内だけの話ではなく、相手がいての戦略の話ではないですか。相手のことをあまり考えていない、非常に残念な判断だなと思っています。

飯田)その相手からしたら、どう見えるかという話ですよね。「日本がなかでごたごたしているぞ」と。

「イージス・アショア」配備を巡り開かれた住民説明会で発言する防衛省の五味賢至戦略企画課長(左)=2019年6月8日午後、秋田市 写真提供:共同通信社

日本の報道には「いかに相手の攻撃を防ぐか」という意識がない

奥山)単純に言えば、大喜びです。いままではイージス・アショアが配備されて、ミサイルを撃ってもなかに落とせなくなると思っていたのが、配備を止めるということになってしまうので、「これで撃てるではないか」という事態になり、敵側としては有利だということです。こういう戦略を考えるときに、我々がやらなければならないことは、相手に対する「思いやり」なのです。

飯田)思いやりですか?

奥山)ミサイル・ディフェンスというものは、盾をどうするかという話なのですが、盾そのものが「相手にとってどうなのか」ということを我々は想像しなくてはいけないのです。つまり、ミサイル防衛があることによって、相手に「攻撃できないな」と思い留まらせることが、この問題の本質にあるのですが、どうも日本国内のメディアの報道を見ていると、「いかに相手の攻撃を防ぐか」という意識がないことが残念だなと思うわけです。

飯田)思いやるとは親切にすることではなく、相手の思いを汲むというか、想像すると。

奥山)そうです。相手の思いを想像して、こちらに攻撃させにくくする意識の方向が、日本の場合、内向きばかりになってしまっている。「相手にいかに負担を与えるか」という考えになっていないのです。

陸上自衛隊新屋演習場で始まったイージス・アショア配備に関する地質調査=2018年10月29日 写真提供:産経新聞社

これ以上イージス艦を増やすことは難しい

飯田)報道が出たときに「あれ?」と思ったのですが、止めるということは、別のアイデアがあるのかと思ったら、それはないのですね。

奥山)防衛省としては、イージス艦を増やすということなのですが、海上自衛隊としては「これ以上増やすのは無理でしょう」と。いちばんリクルートが難しいのは、海に出っ放しの若い乗組員の人たちです。彼らにとって携帯を使えないということは、とても厳しいことなのです。陸のどこかにイージスを置いて、海上自衛隊の負担を下げる方向に行かなければ、難しいのではないでしょうか。

飯田)自民党の内部などでは、代わりに敵の基地も叩けるようにして、「撃って来させない」ようにすればどうだという議論が出ています。

日ロ外務・防衛閣僚協議を前に記念撮影する、左からロシアのショイグ国防相、ラブロフ外相、河野外相、岩屋防衛相=2019年5月30日、東京都港区の飯倉公館(代表撮影) 写真提供:共同通信社

仮想敵国にとって「地元を騒がせればいい」という悪しき前例になる可能性も

奥山)それは憲法の制約上、我々にはできないことになっていますので、本来ならば維持する場所はしっかり盾をするという路線に乗っていたのですから、このまま行っていただきたかったので、個人的には残念です。いかに相手の負担が増すかというところに、日本国内の防衛議論・戦略議論が行っていないのが残念です。本当は中国・ロシア・北朝鮮という仮想敵国に対して、彼らのいちばん嫌がることを我々はしなければいけないのですが、日本人は真面目ですから、相手の嫌がることを真面目に考えることができない。自分たちのなかだけでうまく回すことによって、「相手が思い留まってくれるのではないか」と考えてしまうところがあります。

飯田)思い留まってくれればいいけれど、とりあえず試してみるかと。

奥山)こういう議論を日本国内ですると、それに味をしめた仮想敵国3国が「地元を騒がせればいいのではないか」となってしまい、悪しき前例になってしまいます。情報戦を仕掛けて地元を焚きつければ、我々が嫌がる武器も日本は止めてくれるのではないかとなってしまい、問題だと思います。でももう止めると決めてしまったので、早いところこの防衛の空白地帯を埋めていただきたいと思います。

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