EUコロナ復興基金設立~合意までに時間がかかった欧州の実情
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月22日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。欧州連合(EU)が新型コロナウイルスによる打撃から欧州経済を立て直すための復興基金の創設に合意したニュースについて解説した。
EUが新型コロナ復興基金の設立で合意
欧州連合(EU)は7月21日、新型コロナウイルスの流行で大きな打撃を受けた経済の立て直しに向け、日本円でおよそ92兆円規模の復興基金を設立することで合意した。
飯田)だいぶ紛糾していたようですが。
高橋)影響の大きい国と、そうでない国との濃淡があるからです。でも一応はできました。この他に各国それぞれが財政出動をしていて、それに加えてですから。コロナウイルスの影響はそのくらい大きいのです。ものすごく大きな経済ショックがあるので、経済活動を少ししたところで、大きな波は避けられないということです。
飯田)EU債のような共同債を出すのですか?
合意が簡単に行かなかった理由
高橋)出します。こういうときに、中央銀行と政府の関係が強く出ます。日本では国債を出すと日銀が買ってしまって、財政負担がほとんどなくなります。しかし、欧州中央銀行(ECB)というものがあって、誰が監督しているのか、納金は誰がもらうのかなどについて細かくチェックが入るので、簡単には行きません。今回のような場合、EUは中央銀行との合わせ技が使いにくいのです。だからもめるのです。EU債を出すと、その負担は誰に行くのかという話になるのでやりにくい。
飯田)各加盟国で均等に負担するという話ですが。
高橋)均等に負担するのですが、それがいいかどうかなど、利害が出ます。こういうときには1つの国の方が簡単です。アメリカや日本は、1つの国で中央銀行を使えるから、コロナ禍での財政出動はヨーロッパに比べて高いです。GDPの10%ぐらい出していますが、他のヨーロッパの国は中央銀行をうまく使えず、5%くらいしか出せません。ヨーロッパは財政出動が低いので、このコロナ復興基金で補うのだと思います。
飯田)92兆円規模ですが、およそ半分が返済義務のない補助金になる。
日本やアメリカは中央銀行を使って気楽に財政出動できる
高橋)そうですね。これは真水というレベルです。真水が大きくなると、中央銀行を使えれば真水の話を意識しなくてもいいのですが、ECBの場合はうまく使えるかどうかわかりません。最後に真水を出したときに、それぞれの国が税金負担になるかも知れないので、慎重なのです。日本やアメリカならば気にすることなく、中央銀行が買ってお札を刷るだけなので、後から税金負担がないため気楽に財政出動できています。
飯田)唯一のリスクとしては、インフレになるということですよね。
高橋)インフレ目標があるから十分です。
飯田)インフレ目標まで行ったら……。
高橋)インフレ目標の2%というのは当分、達成しません。日本もそうです。需要が落ちていて生活様式も変わるから、需要が落ちる方が大きいです。サプライもダメになるのだけれども、需要の方が落ちるのでインフレになりにくいです。だから、こういうときにお金を刷ればいいという簡単なやり方ができますが、ヨーロッパの場合は利害が一致しなくてもめています。
飯田)たしかに昨日(21日)発表された消費者物価指数でも、ほぼ横ばいという。2%にははるかに及びません。
高橋)当分は大丈夫です。
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