【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第872回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、7月24日から公開された『プラド美術館 驚異のコレクション』をご紹介します。
ヨーロッパ屈指の美術館、そのコレクションを紐解く……
2019年に開館200周年を迎えた、プラド美術館。スペイン・マドリードに位置し、世界最高峰の美術館のひとつと評される美術館の全貌に迫るドキュメンタリー映画が公開となりました。
プラド美術館全面協力のもと、時を超えていまなお輝き続ける“美の殿堂”へと誘います。
『プラド美術館 驚異のコレクション』のあらすじ
かつては“太陽の沈まぬ国”とも呼ばれた、スペイン王国。プラド美術館には15世紀から19世紀にかけて、歴代の王族が“知識ではなく心で”買い集めた、約8700点の美術品が収蔵されています。
その家宝の一部を公開する“美の宝庫”は、毎年約300万人もの美術愛好家が訪れる美術館として、その名を轟かせている場。
レコンキスタ(国土回復運動)を果たしたイサベル女王が最初の1点を購入して以来、1868年に女王イサベル2世の治世が終わりを迎えるまで、脈々と受け継がれて来た王室パトネージュ。
圧倒的な経済力をバックにスペイン王国は、なぜ、宮廷画家に意味ありげな肖像画を描かせ、ヨーロッパ全土から絵画を買い付けていたのか。スペイン黄金世紀の美の記憶を辿る……。
『プラド美術館 驚異のコレクション』のみどころ
広大な敷地に膨大なコレクションが収められたプラド美術館を案内するのは、『運命の逆転』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたジェレミー・アイアンズ。
歴史物からファンタジー、サスペンスと幅広い作品で活躍する名優として知られていますが、400年間放棄されていたアイルランドの城を修復して暮らすという、歴史とアートを愛する知識人という一面も持ち合わせている人物です。エレガントで落ち着きが漂う語りは、思わずうっとりと聞き惚れてしまう人も多いのではないでしょうか。
また日本語吹き替え版では、今井翼がナレーションを担当。温かみのある声で、唯一無二の“美の楽園”へと私たちをエスコートしてくれます。
コレクションのなかでも注目なのは、フェリペ4世の寵愛を受け王宮配室長に登り詰めたディエゴ・ベラスケスや、カルロス4世に重用されつつも時代に翻弄されたフランシスコ・デ・ゴヤ、日本でも人気の高いエル・グレコの傑作群。
限界まで接写することで、天才たちの筆遣いまでも克明に映し出し、まるで肉眼で作品を見ているかのような感慨さえ覚えさせられることでしょう。
また普段は関係者以外立ち入り禁止のエリアにもカメラが潜入し、収蔵品の保存や修復に携わる研究員たちの作業風景を垣間見ることができるのも、美術ファンにとっては興味深い限りです。
コロナ禍で海外に出向けないいまこそ、映画を通じて異国情緒を味わってみてはいかが。
<作品情報>
『プラド美術館 驚異のコレクション』
2020年7月24日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ヴァレリア・パリシ
脚本:サビーナ・フェディーリ
企画:ディディ・ニョッキ
出演:ジェレミー・アイアンズ、ノーマン・フォスター卿、ミゲル・ファロミール
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原題:The Prado Museum. A Collection of Wonders
公式サイト http://www.prado-museum.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/