「大阪都構想」住民投票へ~壮大な試みを否定せずに見守るべき
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。11月にも住民投票が行われる大阪都構想について解説した。
大阪府と大阪市が都構想の制度案を議会に提出
大阪府と大阪市は8月18日、大阪都構想の制度設計図にあたる協定書をそれぞれの議会に提出した。両議会で過半数を占める大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決される見通しで、11月にも住民投票が行われる予定である。
飯田)大阪市を廃止して、4つの特別区に再編するという大阪都構想ですが、紆余曲折を経ました。
佐々木)ずっとやっていて、大阪以外の人には、もはや何をやっているかわからない状況だと思います。維新が言っている都構想についてはいろいろな議論がありますが、根幹にある「国と地方の役割分担を明確にして、地方ができることを増やす」という発想自体はいいと思います。いま地方の税収は多くないので、地方交付税、国の税収からお金を回してもらって、いろいろなことをしているのが現状です。地方交付税は政府の縛りが強くて、地方自治体が自由に使えないと言われています。
地方と国のやるべきことを明確に分ける~地方自治体のやるべきことは何かを考えるきっかけになる
佐々木)今回のコロナで明確になりましたが、沖縄や大阪で感染者が増えていて、その数は地域によってバラバラです。そうすると、やらなければならない対応は変わって来ます。そこである程度、地方に裁量を認めて、国にやれないことをカバーしないといけません。東京は税収が多いから、国がやれない補償までお金を出して回していました。そういうことを考えると、地方の自主性を高めて、地方がやるべきことと国がやるべきことを明確に分けるべきです。国の小さな政府の発想で言うと、防衛や外交など、ある程度やることは決まっているので、それ以外のきめ細かな行政サービスは、地方に分権すべきだという議論は前からあります。これは大阪の話ですが、大阪以外、例えば東京の人でも、地方自治体のやるべきことは何かということを考えるきっかけにした方がいいです。ただ、話がこじれすぎていて、よくわからなくなっているのは残念です。
飯田)もともとの発想として、大阪府のなかに大阪市があり、それを大阪市の1人のトップがやるというのは、サイズ的におかしいと。基礎自治体ならば、もっと細かくてもいいはずだということです。
佐々木)二重行政でそれぞれ同じようなことをやっていて、同じような施設を持っているのが無駄だというのは、その通りだと思います。
飯田)去年(2019年)選挙があって、府知事と市長を入れ替え、各々の議会選挙を一気にやり、維新の会が市議会でも過半数を取ったので一気に進むかと思いましたが、そうではありませんでした。
佐々木)結局、橋下さんも辞めてしまいましたね。
壮大な試みとして否定せずに見守ることが必要
飯田)そんなこともありましたね。ようやくここで動き出して、11月にも住民投票です。
佐々木)どうなるかはわかりませんが、壮大な試みとして見守って行くことが必要だと思います。維新の政治思想をとやかく言うのは簡単ですが、これをやること自体は否定してはいけないと思います。
飯田)下敷きとなっているのは、特別区で言うと、東京23区はまさに特別区ですよね。
佐々木)東京都と23区の関係は何なのか。
東京においても、区と都と国の役割分担が不明確
飯田)今回のコロナ禍においても、保健所は各区、各市にありますが、直接国とつながっているから都には情報が上がりにくいという話がありますよね。
佐々木)世田谷区は、区長がPCR検査を積極的に拡充すると言っています。しかし、PCR検査後の陽性患者の扱いについては、世田谷区ではできないので国にやってもらいますと。そこの役割分担が、あまり明確ではありません。「やるのであれば、世田谷区が最後まで面倒をみた方がいい」と言う人もいるわけで、どこまでが区の仕事、どこまでが都の仕事で、どこから先が国の仕事なのかを明確にすべきです。
飯田)陽性になった人を隔離するとなると、病院かホテルになるので、それを整備するのは都であるけれど、全体の仕組みは国が仕切るのかという話ですよね。
佐々木)そうです。
飯田)コロナ1つとっても、そういうところの制度が壁になっています。
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