川辺川ダムがつくられなかった理由~7月豪雨が激甚災害に指定
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。7月豪雨を含む一連の大雨被害が激甚災害に指定されたニュースについて解説した。
政府が7月豪雨を含む一連の大雨被害を激甚災害に指定
政府は8月25日に行われた閣議で、九州など広い範囲に被害をもたらした7月豪雨を含む一連の大雨被害を、激甚災害に指定することを決めた。これにより復旧にかかる費用などについて、国の補助率が引き上げられる。
飯田)指定の政令は28日にも施行されます。九州だけでなく岐阜や長野、山形なども含めてということです。
なぜ川辺川ダムをつくらなかったのか
高橋)すごい雨でしたよね。これで思い出すのは、川辺川ダムです。私は10年以上前に、八ッ場ダムと川辺川ダムについての決定は間違いだ、という内容の本を書いています。
飯田)ダムの建設計画があったのを止めてしまった、というものですね。
高橋)止めたのが間違いだということです。2つのダムを調べたときに、7割ほどできていたので、あと2000億円くらい出せばダムが完成したのです。そのメリットを計算すると、5000~6000億円です。今回のこのような災害は、何十年かに1回起きるという前提を置いて、その被害を織り込むということです。何十年に1回ということで、今回、たまたま来てしまったわけですが、かけるコストを考えたらそれを上回るメリットがあるのに、なぜ中止したのかということを、経済学の「サンクコスト理論」の応用問題として書いたことがあります。やはり、熊本県知事がダムをつくらなかったことがいけなかった。他に何かするのであれば別ですが。
飯田)あの当時は、コンクリートから人へと言われたころですよね。ダムをつくらない代わりに、流域の護岸工事をやるというような計画はありましたが、いつまで経っても話が折り合わなかった。
割引率が高く、過少投資になっている日本の公共投資
高橋)他の措置は、お金も時間もかかるのです。だからダムをつくるのが普通の答えです。他の工事と比べると、お金も時間もかかりません。なぜやめたのでしょう。国交省も悪いのですが、公共投資を適正に行うために、B/C(費用便益比)という言葉があります。ベネフィットとコストの比で決めるということです。ベネフィットは将来の利益ですから、現在の価値に戻して、社会的割引率を使って計算します。しかし日本の場合、割引率4%という高い数字を使って国交省が計算しているので、ベネフィットがすごく小さく出てしまい、過小投資になっています。いま、4%などという高い金利はないでしょう。
飯田)そんな利回りはありませんね。
高橋)そこがおかしいと、ずっと国交省に言っていたら、最近ようやく「検討する」と言い出しました。この4%という数字を、15年間も使い続けています。激甚災害に指定するのは当然ですが、割引率もきちんと計算して公共事業をやることが重要です。
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