菅官房長官が地銀の再編を後押しする“首相目線での理由”
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。菅官房長官が会見のなかで「地銀再編も1つの選択肢」と述べた背景について解説した。
菅官房長官、地銀の再編を後押し
自民党総裁選の候補で本命視されている菅義偉官房長官は、9月2日の出馬会見と翌3日の会見でも、「地方の銀行は将来的には数が多すぎる。再編も1つの選択肢だ」と言及し、これを受け地方銀行や第二地銀の株価が軒並み上昇している。
飯田)菅さんはかつて倒産も辞さず、銀行の不良債権処理を進めた「ハードランディング」論者の梶山静六元官房長官を、師と仰いだ経験があります。
地方経済を活性化するための地銀再編~道州制
須田)バブル崩壊後の不良債権処理のなかで、辣腕をふるったのが梶山静六さんなのですが、その文脈とは違う形で、菅さんは地方銀行問題に深く関心を持っています。2つポイントがあって、1つはやはり自分が総理になった際に、地方経済の活性化や都市部との格差是正という枠組みのなかで、地銀の再編は地方経済の核ですから、その体質を強化して行こうというものです。
経済の広域化のために銀行業界はどうあるべきか~「一県一行」でも多い
須田)もう1つは、2015年から2018年にかけて、金融庁が主導する形で強硬的に地方銀行の再編が進みました。そのときに、異例ながら3年間も金融庁長官に在職した、森信親さんという方がいました。その森さんを全面的にバックアップしたのが、官房長官である菅さんなのです。当時、「菅・森ライン」と呼ばれ、森さんの強引な主導に対して、銀行業界や業界の意を汲んだ一部政治家から相当な反発が出ていたのだけれども、強引に進めることができたのは、菅さんの全面的なバックアップがあったからです。しかし、当時の地方銀行の再編は完了したのかと言うと、必ずしもそうではない。これまでは戦後、例外なところもありますが、ほぼ47都道府県は「一県一行主義」という形で、第二地銀、昔の相互銀行は除くとして、第一地銀と言われるところは1つになった。ただ、それでもオーバーバンキングであり、銀行の数は多すぎたのです。そして、経済の広域化。ここで道州制というキーワードが登場しますが、経済の広域化という流れのなか、そして道州制を睨んでいるなかで、今回の地銀再編という流れがあるのだと理解していただければいいと思います。将来的には道州制、経済の広域化を睨んで、銀行業界はどうあるべきかという組み立てになっているのです。
飯田)長崎で第二地銀と地方銀行が合併しようとしたら、長崎と福岡の銀行だったと思いますが、長崎県内のシェアが多くなり過ぎるので、公取が入って来ました。その辺りも整理しなくてはならないのですね。公取のトップが変わりますけれど。
須田)加えて、公正取引委員会の存在です。なぜあのとき反対したかと言うと、実は、銀行のトップが公正取引委員会に挨拶に行くのが遅れたのです。公正取引委員会はメンツを潰された。そういう空気があったので、慌てて財務省・金融庁の方が「一旦公取へ行け」と。「行かなくてはいけないのですか?」、「それは行かなければいけないよ」ということがあった。だから独禁法がどうとか、地方経済の独占などでなく、官庁・省庁のメンツの問題が影を落としているのです。
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