『鵞鳥湖の夜』カンヌに衝撃を与えたノワール・サスペンス

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第908回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、9月25日に公開された『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』をご紹介します。

『鵞鳥湖の夜』

中国の気鋭ディアオ・イーナン監督の5年ぶりの新作!

第72回カンヌ国際映画祭でポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』と並び、アジア発の衝撃をカンヌにもたらして絶賛された『鵞鳥湖の夜』。

『薄氷の殺人』でベルリン国際映画祭金熊賞・銀熊賞(男優賞)をダブル受賞した中国の気鋭ディアオ・イーナン監督の5年ぶりとなる待望の新作が、日本でも公開となりました。

『鵞鳥湖の夜』

『鵞鳥湖の夜』のあらすじ

2012年、中国南部。再開発から取り残された鵞鳥湖(がちょうこ)周辺地域では、ギャングたちの縄張り争いが激化していた。

刑務所を出所して古巣のバイク窃盗団に戻った男チョウは、対立する猫目・猫耳兄弟たちとの争いに巻き込まれ、逃走中に誤って警官を射殺してしまう。

たちまち全国に指名手配され、警察の包囲網に追い詰められたチョウは、自身にかけられた報奨金30万元を妻と幼い息子に残そうと画策。そんな彼の前に現れたのが、妻の代理としてやって来たアイアイという見知らぬ女だった。

鵞鳥湖の水辺の娼婦として生きるアイアイと行動をともにするチョウだったが、やがて警察の捜索を指揮するリウ隊長や報奨金の強奪を狙う窃盗団に行く手を阻まれ、後戻りのできない袋小路へと迷い込んで行く……。

『鵞鳥湖の夜』

『鵞鳥湖の夜』のみどころ

主人公のチョウを演じるのは、ジャッキー・チェンと共演した歴史大作『1911』で知られるフー・ゴー。行く先々で裏切りに出くわす、破滅的な運命に魅入られた男を熱演しています。

そしてチョウと行動を共にするアイアイ役には、グイ・ルンメイ。その儚げでミステリアスな姿は、ため息が出るほど魅力的。映画を観終わった後も、彼女の存在が脳裏から離れない人も多いのではないでしょうか。

そして2人を追うリウ隊長に扮するのは、『薄氷の殺人』でベルリン国際映画祭の最優秀男優賞(銀熊賞)に輝いたリャオ・ファン。中国語圏のトップスターが妙演をみせています。

『鵞鳥湖の夜』

特筆すべきは、シャープでモダンな独自の感性を持ち合わせた、ディアオ・イーナン監督による革新的な演出スタイル。

孤独を抱える主人公の男女、警察の捜索チーム、バイク窃盗団のギャングの行動。彼らを取り巻く環境をセリフで説明するのは最小限で、その行間を語るのは、映像や色彩、音楽。

なかでも極彩色のライトや蛍光ネオンサインが醸し出す妖しいムードが鮮烈で、その“色”が登場人物たちの心情を映し出していることに感嘆を覚えずにはいられません。

芸術性の高い作風でありながら、エンターテインメント作品としても秀逸な1作です。

『鵞鳥湖の夜』

<作品情報>

『鵞鳥湖の夜』

2020年9月25日(金)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか全国ロードショー
監督・脚本:ディアオ・イーナン(Diao Yinan/刁亦男)
プロデューサー:Li Li(李力)
撮影:トン・ジンソン(Dong Jinsong/董劲松)
照明:ウォン・チーミン(Wong Chi Ming/黄志明)
美術:リュウ・チアン(Liu Qiang/刘强)
編集:コン・ジンレイ(Kong Jing Lei/孔勁蕾)、マチュー・ラクロー(Matthieu Laclau/馬修・拉克勞)
音楽:B6
出演:フー・ゴー(Hu Ge/胡歌)、グイ・ルンメイ(Gwei Lun-mei/桂綸鎂)、リャオ・ファン(Liao Fan/廖凡)、レジーナ・ワン(Wan Qian, also known as Regina Wan/万茜)
(C)2019 HE LI CHEN GUANG INTERNATIONAL CULTURE MEDIA CO.,LTD.,GREEN RAY FILMS(SHANGHAI)CO.,LTD.,
英題:THE WILD GOOSE LAKE(原題:南方車站的聚会)
公式サイト http://wildgoose-movie.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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