ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月18日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。11月17日に行われた菅総理とオーストラリアのモリソン首相との会談について解説した。
菅総理がオーストラリアのモリソン首相と会談
菅総理)日豪間の安全保障、防衛協力を新たな次元に引き上げるべく、交渉を続けて来た日豪円滑化協定につき、今般、大枠合意に至ったことを発表します。
菅総理は11月17日、来日中のオーストラリアのモリソン首相と会談した。中国を念頭に安全保障分野で連携を強化、自衛隊とオーストラリア軍の共同訓練などに関する円滑化協定について大枠で合意するなど、「自由で開かれたインド太平洋」の推進に向け連携して行くことで一致した。
飯田)18日までの2日間の日程でモリソン首相は来日しています。帰国後は、14日間の隔離に入るということです。
佐々木)安倍政権で確立した、自由で開かれたインド太平洋戦略ですね。これが菅政権で変わるかどうかが最大の肝です。慶応大学教授の細谷雄一さんなど、安全保障の専門家からは「変わりつつあるのではないか」という指摘が出ています。その細谷さんの指摘で「なるほど」と思った兆候は、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉を官邸談話で「平和で繁栄した~」と言い換えています。
飯田)14日か何かのぶら下がりでした。
中国と経済では手を結び安全保障では対立する日本
佐々木)バイデン氏との電話会談のときも、菅さんは「自由で開かれた」と言ったのですが、バイデン氏は「インド太平洋の平和と安定」という言葉を使って、「自由で開かれた」とは言いませんでした。このように変わりつつあるのは、日本の事情で言うと、安全保障に関しては、「アジア版NATO」などとも言われていますが、「クアッド」と言われる日米豪印の連携で安全保障の枠組みができていて、これに対して中国がかなり神経質になっています。その一方でRCEPという東アジアの経済協定ができて、これには中国が入っていてインドは入っていません。日本としてはインドと中国両方に入ってもらって、バランスを取りたかったのですが、インドは協力できないというので、中国中心となっていて、経済的には中国寄りに変わりつつあります。その2つが矛盾しているのです。経済では中国と仲よくし、安全保障では中国と対立している。その構図のなかでどうすればいいかわからなくなっていて、とりあえずバランスを取るために、少し親中側にシフトするのかなと思います。
「親中」とは言わないが中国に気を遣うバイデン陣営
佐々木)アメリカ側の事情で言うと、トランプさんがあまりに反中国で、「デカップリングだ」と経済も中国とアメリカで分断すると言っていたので、バイデン政権では、もう少し戻して親中に寄りたいと内心は思っているのではないでしょうか。ただ、アメリカでは、議会中心に中国に対する反発は大きいです。ウイグル、香港問題が特に影響しているので、あまり「中国中国」と言いづらい。ですので積極的に親中だとは言いませんが、そこはかとなく中国に気を遣っているような感じになって来ています。
バイデン政権に寄って、中国には少し親和的な姿勢を見せている~難しいバランス外交
佐々木)そういう状況のなかで、日本としては安全保障も外交もアメリカに依拠せざるを得ない状況があります。トランプさんのときは反中姿勢が明確だったので、それについて行きましたが、バイデンさんでこれをやると日本が孤立して、日本抜きで米中が仲よくなってしまったら、目も当てられなくなります。ですので、少しバイデン政権に寄って、中国には少し親和的な姿勢を見せている感じがします。しかし、これはかなり難しいバランス外交です。
飯田)結局、相手に寄ることになりますよね。
安倍氏を外務大臣に復帰させ、「ビジョンのある外交」を
佐々木)バランス外交と言えば、聞こえはいいですが、それこそ韓国がアメリカと中国の間でバランスを取ろうとして、どちらからも怒られて苦境に陥りましたよね。あれと同じことになりかねません。アメリカが徐々に世界の警察から撤退して行く流れは、オバマ政権時代から変わりません。アメリカなき時代に誰が国際秩序を守るのかと言うと、日本とEUが中心でやって行かざるを得ない。そのことを考えれば、安倍さんを外務大臣に復帰させて、安倍さん中心にビジョンのある外交をやって行く方向に舵を切った方がいいと思います。
飯田)そうすると、「自由で開かれた旗」をもう1度掲げることになりますね。
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