ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月18日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。新型コロナワクチンの医療関係者への先行接種が開始されたニュースについて解説した。
新型コロナワクチンの国内接種がスタート
2月17日、国内初となる新型コロナウイルスワクチンの医療従事者への先行接種が、国立病院機構東京医療センターで始まった。まずは全国医療機関のおよそ4万人が対象となる。厚生労働省によると、17日の夕方までに全国の8ヵ所の病院で合わせて125人の医療従事者が接種を受けている。
飯田)これまでのところ、目立った副反応は報告されていないようです。
宮家)ようやく始まりましたよね。いいことだと思うのですが、このあと、どのように順調に行くのかということについては、関係者の腕の見せどころだと思います。世界中でワクチンの争奪戦が起きているわけですので、頑張って欲しいと思います。
飯田)システムをつくるということに関して、全国民に打つことを想定しながらやるということになると、相当大きなシステムを組むことになりますよね?
宮家)CNNを観ていたら、アメリカでは1日150万回規模だそうです。すごいですよね。
飯田)そのようなシステムを一気につくるというのは、軍の関与などもあると聞きます。
大切なことは「終わったあとに、どれだけ検証ができるか」
宮家)これは国家非常事態に準ずるわけですから、軍も総動員してシステムを稼働させています。そうなると日本は少し悲しいのですが、国家非常事態宣言などという発想はありませんし、「これはお医者さんの話で、自衛隊は関係ないでしょう」となっています。そうなると、極めて小さい規模のものしかできない。それで医療関係者以外は注射も打てない。そのようになっていたら、当然、国家的危機には対応できません。いまのこの時期にこのようなことを言っても仕方がないのですが、終わったあとに洗いざらいすべて見直す必要があると思います。
飯田)そうですね。
宮家)日本は民度が高く、清潔ですので、感染もこの程度で済んでいるのだとは思います。たまたまCOVID-19というのが、この程度の感染力と致死率だったのでこの程度で済んだのかも知れません。しかし、「これ以上怖いものはもう来ない」ということはありません。いま「対応が後手後手だ」などと批判するのはわかるのですが、最も大事なことは、終わったあとに、どれだけ検証ができて、直すべきことを直すかということです。
東日本大震災の教訓を生かせているのか~危機が訪れるたびに同じことを繰り返す日本
宮家)もうすぐ東日本大震災から10年経つではないですか。たまたま依頼があってその教訓を英語のコラムに書きましたが、ではあの大震災、どれだけ検証をして、どれだけシステムが変わったかと言うと、これが疑問なのです。日本人というのは、熱いうちは大騒ぎをするのですが、冷めてしまったら全然関心がなくなります。そこでしっかりとした検証を粘り強くやらないと、社会は変わらないし、システムも変わりません。結局、旧態依然のまま、危機が訪れるたびに、またゼロから同じことを繰り返してしまう。そこについては、アメリカの方がいいかなと思っています。それをやる力がある民族と、やる力のない民族があることはだけは間違いありません。
「原子力災害対策特別措置法」のもとで、嫌がる人も避難させた~今回も同じことなのだが
飯田)2020年4月、5月の緊急事態宣言のときに、「私権をどう制限するのだ、法律がないではないか」となった際、いろいろな人に取材をしたのですが、ある総務省の官僚に聞いたら、「実はやったことがあるのですよ。10年前に原子力災害対策特別措置法のもとで、嫌がる人であっても『避難してください』と言って動かしたということがあるのです。しかし、あのときのことを、みんなもう忘れているでしょう」と言っていましたが、おっしゃる通りだと思いました。
宮家)あれは「病気」ではないからできるのですよ。
飯田)そうですね。あれは緊急事態だということが、誰の目にもわかることだった。
宮家)ですが、今回の病気も本来的には同じことなのです。国民の命を守るのですから。
あまねく緊急事態に対応できる大皿をつくるべき
飯田)あれはある意味で局所的だった。そして今回のものは全国的であるなど、細かい違いを挙げれば確かにそうなのかも知れませんが。
宮家)それはおっしゃる通りで、法律の主管官庁が違いますから、いくら官邸で取りまとめても、細かいことをやるのは役人なので、自分の持っている法律に関しては絶対に守ります。
飯田)だからこそ、本来は、「あまねく緊急事態に対応できるもの」という大皿をつくっておくべきなのですね。
平時にこそつくっておくべき「その日への準備」
宮家)その枠組みは、本当は何の危機もないときにつくらなければいけないのですが、何もないときは、「その必要は何もないではないか」となってしまう。
飯田)そのような議論は必ず出て来ますね。
宮家)そして何かあったときは「そんな時間はない」と。そうしていたら、いつまで経ってもできないではないですか。
飯田)おっしゃる通りです。それには何の違いがあるのでしょうか? 先を見るとか戦略的にということを、日本人が考えられないわけではないと思うのですが。
宮家)明治の日本はやっていたと思います。
飯田)まさに100年先も見越して、というところですよね。
宮家)誤解を恐れずに言えば、その日への準備ということです。緊急事態として最悪な場合、それは戦争ですよね。それが起きる前提で、「起きてしまったらどうするのだ」ということを考えるのが重要です。日本も昔は暴走してしまったのですが、あのときでも、いろいろな計画を立て準備をするということ自体は、決して軍国主義ではなかったのです。
飯田)確かにあのときは欧米列強によって、本当に国が吹き飛んでしまうかも知れないという重大な危機感のもとで一気につくり上げた。
宮家)それがいま、そのようなことをやってはいけないことになっています。なぜなら日本は戦争をしてはいけないからです。
飯田)これは本当に重大な問題提起だと思います。
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