みずほ銀行のATM障害~原因の根底にあるのは“コストの削減”
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月5日放送)にソシエテ・ジェネラル証券 経済分析担当の会田卓司が出演。みずほ銀行のATM障害について解説した。
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みずほ銀行のATM、システム障害ほぼ復旧。稼働したATM=2021年3月1日午後、東京・大手町 写真提供:産経新聞社
みずほ銀行のATM障害
みずほ銀行は3月4日、2月28日に発生した大規模な現金自動預払機(ATM)の障害の原因は、2021年1月に導入した「デジタル通帳」へのデータ移行作業であったと明らかにした。
飯田)デジタル口座へのデータ移行作業が原因だということですが、どうご覧になりますか?
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会見冒頭、システム障害に関して謝罪、頭を下げるみずほ銀行の藤原弘治頭取=2021年3月1日 写真提供:産経新聞社
デジタル体制の過渡期にあるにも関わらず、投資を抑制して来てしまったため
会田)まだ日本はデジタル体制の過渡期にあるのだと思います。通帳がある普通の口座から、通帳がないインターネットバンクを含めた新しい金融の形に変わる過渡期にあります。過渡期にあるにも関わらず、これまで投資というものが抑制されて来た。日本の企業、金融機関も含めて、投資を抑制して来てしまったわけですから、その矛盾が出て来ているのだと思います。
飯田)システムの抜本的な改革も含めてやらなくてはいけないところを、先送りにして少しずつやって来たということでしょうか?
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【みずほ銀行ATMで障害】障害が発生し、休止しているみずほ銀行の現金自動預払機(ATM)=2021年2月28日、東京・大手町 写真提供:産経新聞社
コストを削減するための投資がメインになってしまった結果
会田)少しずつ、コストを気にしながらやって来たのだと思います。投資もどちらかと言うと、コストを削減するための投資がメインになってしまい、利便性をよくするということや新しいビジネスを拡大する投資ということが抑制されてしまった。その結果として、投資が後ずれしたり、あとで急にやろうとすると、こういうシステムの障害が起こったりするという形になってしまったのです。
飯田)確かに、コストカットが美徳と、ここ20年~30年はそういうニュースしか見たことがないくらいの感じですが、そのしわ寄せがここに来ているということでしょうか?
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終値が3万円超となった日経平均株価を示すボード=2021年2月15日午後、東京都中央区 写真提供:産経新聞社
新しい金融サービス「フィンテック」に向かうためのしっかりとした投資が必要
会田)来ていると思います。しかし、金融としては「フィンテック」と呼ばれる情報技術を駆使した新しい金融商品サービスが、今後の金融拡大の契機になるわけですから、やはりしっかりとした投資を続けて行かなければいけないのだと思います。
飯田)その辺りの必要経費が本当はあるのに、それをカットすることで評価されてしまうような土壌が、ここ20年くらいはあったのでしょうか?
会田)収益を支えるのは、投資の拡大によるビジネスの拡大ではなく、コストの削減がメインになってしまった1つの弊害なのではないかと思います。
飯田)その染み着いた心理を変えないことには、変わって行かないということでしょうか?
会田)変わって行かないと思います。
飯田)道は長そうですね。
会田)長そうですが、こういう問題が起こったことによって企業の心理も変わって行きます。よい方向に向かって行けばいいですね。