ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月17日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。政府が緊急事態宣言を期限である3月21日で解除する方針を固めたニュースについて解説した。
緊急事態宣言、21日に解除へ
政府は3月16日、新型コロナウイルス特別措置法に基づいて、首都圏1都3県に発令中の緊急事態宣言について、期限の21日で解除する方針を固めた。18日に専門家の意見を聞いた上で、政府対策本部で解除を正式に決定する方向である。
飯田)産経新聞が13日に観測記事のようなものを、スクープという形で出して、きょう(17日)は各紙一面トップで報じています。
佐々木)渋谷でも、新宿でも、もうすごい人ですからね。もはや緊急事態宣言を続けても何の効果もないのではないでしょうか。
飯田)そうですね。
佐々木)逆にお店を閉めなくてはいけないということで、経済が回らないという問題が浮上して来たので、解除せざるを得ないかなという感じですね。今回の一連の政府の対策について、何が問題だったのかを考えると、いちばんはコミュニケーションだったのではないかなと思います。
飯田)コミュニケーション。
さまざまな給付金や補償が出されていることが国民に知られていない~メディアがやるべきこと
佐々木)財政出動をしてお金は出しているのです。GDP比で2割ぐらい出しているのかな、それはOECD諸国のなかでも上の方です。いろいろな給付金や補償が出ているのだけれども、あまり知られていないのですよ。
飯田)そこですよね。
佐々木)ある給付金などは、用意していた予算の数割しか使われていない。そのようなケースがかなりあるという話を聞きます。これは本当はメディアがやるべき話なのです。
飯田)そうですね。
佐々木)困窮者、困窮家庭向けに今回も子ども1人あたり5万円という話が出ています。しかし、この「困窮世帯の人は5万円もらえます」ということを一体どこで知るのか。どこで知って、それをどうやって申請するのかという情報がきちんと伝わっていないのです。経済的貧困は、必ず文化的貧困を伴います。余裕がない人がややこしい書類を書いたり、情報をネットで収集することはできないでしょう。官邸のホームページを見れば、「こういう給付金があります、補償があります」と書いてあるのですが、それを見に行くかというと、なかなか難しいですよね。ワイドショーは余計な政府批判などしていないで、「まず情報を伝達しろ」と思います。この前も朝日新聞の記者がツイッターで、「我々は政府の広報ではない」とつぶやいて物議を醸していましたが。まずはそれをやってから政権批判をして欲しいと個人的には思うのですけれどね。
不正受給を防ぐために難しい手続きにせざるを得ない
飯田)給与の手当、補償というのも、実際に申請した人に聞くと、「書類が煩雑で」と言います。その上、説明もどこにあるのかわからないと。
佐々木)簡単にすると、不正受給が増えてしまうからなのでしょうけれど。
飯田)持続化給付金問題のような。
佐々木)数としては全体のなかですごく少ないと思うのですよ、不正受給なんて。持続化給付金の不正受給もたくさん報道されていますけれど、それほど大きな数ではない。ただ、不正受給が出た瞬間に「政府は何をやっているんだ」とまた怒り出します。とりあえず配って、不正受給についてはあとで警察が対応する、くらいでいいのではないかと思うのですけれど、「いやいや問題がある」と騒ぐものだから、政府の方も慎重になって、ややこしい書類にせざるを得ないのです。そこは完全なる自縄自縛ですよね。
飯田)課税に関しても、課税所得にするというところで、たくさんもらってしまった人は、その後、税金で戻すなりと。いろいろな形での補足をやろうとしているのですよね。
ブランドデザインをつくらないままその場凌ぎで来てしまったことのツケ
佐々木)そうなのですよ。マイナンバーカードをうまく使って、金融資産も補足した上で、リアルタイムに「この人はどういう状態なのかを判断して、すぐに給付金を出す」というのが理想なのですが、それをやると、また「マイナンバーで国民を監視するのか」と怒り出すから、それもできない。あらゆるところで雁字搦めになっているということですね。
飯田)そういうところの問題は、10年~20年前から指摘され続けて来たところだけれど、そういう弱さが一気に出たということですね。
佐々木)きちんとしたブランドデザインをつくらないまま、その場その場の世論に応じたらこうなってしまったので、政府の責任というより、我々日本人の、国民がやって来たことのツケがここに来て出ているということだと思いますよ。
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