ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月30日放送)にジャーナリストの有本香が出演。アメリカがミャンマーとの貿易・投資の取り決めを即時停止したニュースについて解説した。
アメリカがミャンマーとの貿易・投資の取り決めを即時停止
米通商代表部(USTR)は3月29日、ミャンマーとの間で2013年に締結した貿易・投資枠組み協定(TIFA)に基づく、すべての取り決めを即時停止すると発表した。この措置はミャンマー国軍によるクーデターや抗議デモの弾圧に対する制裁措置の一環で、同国が民主的手続きで選ばれた体制に復帰するまで、停止措置を続けるということである。
飯田)アメリカがミャンマーとの貿易協定停止ということです。
有本)最初にクーデターが起きたときに、やはりこの番組でお話ししたと思います。あのときの私の見通しというのは甘かったなということで、ここで訂正させていただきます。あのときは、「スー・チーさん側のやっていることに憲法違反がある」と、軍は一応、理屈を立てていたのです。それから、前提として申し上げなければいけないのは、スー・チーさんの政権が完璧に正しいということでもなかったわけです。いろいろ問題はありました。それに対して不満の声もあり、そこを軍が受けたということだったのです。軍というのは、もともと政治的な勢力としてありますから。
ミャンマー軍は「民主国家になったミャンマーの軍」を捨てて、先祖返りしている
有本)軍が「いまのこの状況ではいけない」ということで、軌道修正をしようとした。そういうケースは東南アジアではしばしばあります。お隣のタイなどでも、政権が腐敗して来ると、軍が政権をとりあえず取り返すということがありますが、その一環かなと思っていましたけれど、いまの状況を見ると、ミャンマー軍は「民主国家になったミャンマーの軍」という体裁をかなぐり捨てて、先祖返りしていますよね。こうなったら、国際社会はやはり止めなければいけないと思います。
飯田)市民に向けて無差別に発砲し、戦闘機からミサイルを学校に向かって撃っています。
有本)少数民族の地域に空爆しましたからね。あの地域は複雑なところではありますけれども。これに対してアメリカが、特にブリンケンさんが「ジェノサイドが行われている」と言いました。「ジェノサイド」という言葉を、どのように定義してお使いになっているのかということは少し疑問なところはありますが、ブリンケンさんはご両親ともにユダヤ系であるということで、市民が殺されるようなことについては、非常に敏感なわけです。だから、アメリカはこういう対応を取る。日本も民主化されてから、特に財界なども、ミャンマーに対して積極的でしたが、ブレーキがかかるのは致し方ないでしょうね。
飯田)こうなって来ると、そこにいる邦人の方々も含めて、命の危険も考えなければならない。
12ヵ国の軍のトップが非難声明
有本)それと、27日に主要各国の軍のトップが、「丸腰の市民に殺傷力の高い武器を使用したことを非難する」という共同声明を発表しました。
飯田)12ヵ国が出しました。
有本)ここに日本の幕僚長も。
飯田)そうですね。山崎統合幕僚長も。
有本)一緒に参加しているということで、日本もそういう連携に入るということはいいことですし、このメッセージは、やり方がスマートでした。軍のトップに対して軍のトップたちが諫めるというのは。
飯田)軍同士で自制を。
有本)とてもいいことかなと思うのだけれど、これで情勢がいい方向に向かうかどうかですね。
PKOを出すということも
飯田)ツイッターなどでいろいろな意見をいただくのですが、「もうPKOを出さないといけないのではないか」という意見もあります。
有本)そうかも知れませんね。
飯田)ただ、そうすると国連の安保理決議が必要になって来る。
有本)そうすると、ミャンマーの軍側についてしまう国々もあるわけです。だからなかなか簡単ではないと思いますけれどもね。
スー・チーさん側は「自由と民主を大事にしていて、中国と距離を置いている」ということでは決してない
飯田)当初も有本さんが指摘されていましたが、制裁一辺倒になると、中国側に崩れて行ってしまうぞと。
有本)顕著になっています。ですから、このままだと、中国に寄って行くということはあるでしょう。ただ、もう1つ気をつけなければいけないのは、スー・チーさん側は「自由と民主を大事にしていて、中国と距離を置いているか」というと、決してそうではないのです。ここがミャンマーの難しいところです。豊かな国で、将来有望な国なのだけれども、中国とは、どちらも切っても切れない関係がある。そういうなかで先進国が、どうやってミャンマーを自由主義圏に引き戻して、軍が国民を殺戮するということを止めさせるかどうかということです。
飯田)中国にべったりというのは、「プライドとして許せない」というところが、民主派に向かった理由の1つでもあったはずです。
有本)そうなのですけれど、実態には、なかなかそうはならなかった。それから軍が政治的な力を持っているだけでなく、利権を持っているのです。日本企業も向こうに出て行くと、軍の関係者が持っている会社や軍が持っているコンツェルンとビジネスをやるということですから、その辺りを考えても対応が難しいところはあります。
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