日本企業のターニングポイントとなる「CO2排出量への対処」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月1日放送)にJPモルガン証券・チーフ株式ストラテジストの阪上亮太が出演。日立製作所が米IT企業の「グローバルロジック」を買収したニュースについて解説した。
日立製作所が米IT企業「グローバルロジック」を買収
日立製作所は3月31日、アメリカIT企業の「グローバルロジック」を買収すると正式に発表した。買収額は総額96億ドル(約1兆500億円)で、電機業界では過去最大級となる。
飯田)グローバルロジックはシステム開発会社で、デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業が使うシステム開発を手掛けているということだそうですが、日本の製造業そのもののような会社がこのような動きをするというのは、どうご覧になりますか?
非製造業の分野でのビジネスと、製造業のビジネスを融合して売り込む
阪上)世界的な流れということなのですが、製造業の世界は、「技術が発展して行くと、徐々に利益が出にくくなる」ということがあり、ものづくりだけでは十分に利益を上げられなくなるのです。となると、それ以外の非製造業の分野に進出して行かなければならないのです。「非製造業の分野でのビジネスと、製造業のビジネスをうまく融合して売り込んで行く」という意図だと思います。
飯田)日立製作所はエネルギーなどもいろいろやっていますが、それだけではというところになって来てしまうわけですね。
阪上)そうですね。いま日本企業は、全体的により儲かる方にシフトするというか、集中して行くというビジネスモデルの変革を模索しているのです。日立がこういう動きをするのもその一環ということだと思います。
飯田)なるほど。他方、このような質問も来ています。川崎市の“こういち“さん、「4月1日からいろいろ変わりますけれども、企業の統合や改名もありますよね。ソニーがソニーグループに変わるとか、楽天もグループがつくとか、スシローがフードアンドライフカンパニーズになるとか、名前が変わりますよね。どういう意図なのでしょうか」と。ソニーはホールディングスの方をソニーグループにするということなのでしょうか?
阪上)そういうことになりますね。
飯田)あの会社も、もともとメーカーというイメージだったところから、どんどん業態変化しています。いまは何の業態なのかわからないというようになっていますが。
阪上)いまですと、エンターテインメント、ゲームなどが一方の柱で、他方でハイテク関連の部品をつくるという事業もあります。だいぶ多様化しています。
CO2排出をいかに減らすことができるか~儲かる会社とコスト高だけになる会社
飯田)日立のような重電メーカーに立ちはだかるのが、脱炭素やSDGsなどです。特に日本の場合、メーカーが多いとCO2の排出量も多くなりがちというなかで、日本全体としてどう対応して行けばいいですか?
阪上)世界的な流れなので、二酸化炭素排出を減らす方法を模索して行くしかないですね。二酸化炭素排出に貢献する技術は、日本のいろいろな会社が持っています。それを海外にどれだけ売り込めるかというところが鍵だと思います。
飯田)海外の機関投資家とお話しされることも多いと思いますが、ここはメインテーマになっていますか?
阪上)今後数十年、環境変動対応で各国がどうするか、各企業がどうするかというのは、いちばん大きなテーマという認識があると思います。
飯田)投資する立場からすると、株式選定にも「やっているか、やっていないか」というのは影響しますか?
阪上)しますね。これは完全に二極化の世界です。気候変動に対応することは、企業にとってはコスト増になります。その一方で、コスト増を製品に価格転嫁できる競争力のある会社や、環境対応の技術を持っていれば、むしろそれで儲かる会社も出て来ます。今後、単にコスト増になるだけの会社と、これをきっかけにより儲かるようになる会社に色分けされて行くと思います。
自国に有利な「二酸化炭素排出の物差し」をグローバルスタンダードにする~乗り遅れた日本
飯田)業種によっては、対応するにも、どこまですればいいかが難しいところと、測る物差しがいろいろあるという話も聞きます。
阪上)二酸化炭素排出をどのように図るのか、どうやって減らすのか、これはまだ世界的にも答えが出ていないところだと思います。とりあえずは「目標を掲げて、みんなそれに向かって努力しよう」という段階なので、その物差しをどうつくるか、「自国に有利な物差しをグローバルスタンダードにする」ということが、各国が持っている思惑です。その点では欧州が先行していますので、それにどう追いつくかというところで、アメリカも中国も日本も、相次いで取り組みを強化しているというところだと思います。
飯田)取り組みを強化するというのは、日本のスタンダードをつくって、それをのませようとする一連の戦略なのでしょうか?
阪上)それもありますが、それをやるには遅れをとってしまっているので、自分たちにとって、不利になり過ぎないようなグローバルスタンダードの形成に関与して行くという段階ではないかと思います。
飯田)ダメージコントロールをしなくてはいけない段階ということでしょうか?
阪上)そうですね。
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