唐突感を生んだ政府の2つの努力不足~「原発処理水海洋放出」決定
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月15日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。政府が原発処理水の海洋放出による風評被害に賠償などの対応を検討しているというニュースについて解説した。
政府、原発処理水の海洋放出による風評被害に賠償などを検討
梶山経済産業大臣は4月14日、衆議院の経済産業委員会で、政府が決定した東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出について、風評被害が生じた場合には賠償などの対応を迅速に行う考えを示した。
飯田)経産大臣は14日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長と会談をしまして、国際的な懸念払拭に向けた協力の要請もしております。
海洋放出の決定に唐突感がある2つの背景~コロナ一色であった
鈴木)処理水を海洋放出する決断を菅政権がしたということですけれども、この話は1年以上前から報告書でこの方針であることはわかっていたのです。唐突感があると感じてしまうのは、2つ背景があって、1つはやはり新型コロナ一色で、政治状況も含めてどうしてもそこが中心の政策課題になって来ました。
国民との対話を含めて政治的な努力が足りなかった
鈴木)だから、この議論がなかなか進んでいなかったので、唐突感というか、「いきなりですか」というような感じがあるのだけれども、実は1年前からこの方針はあった。ということは、政府のある種の広報であったり、国民とどう対話して行くかということを含めて、コロナがあったとは言え、政治的な努力が足りなかった。だから唐突感もあるのかなという気が、背景としてはします。
漁業以外にもある風評被害~トータルで考えるべき
鈴木)ここ何日かの報道を見ていると、処理水に矮小化されているというか、処理水を流すことの是非、そしてそれによる風評被害。処理水をどうするかという視点で議論されている。確かにそうだとは思いますし、問題の本質はそこなのだけれど、実は処理水だけではなくて、そもそもこの原発事故が起きた福島、まさに東日本大震災から10年、この間に原発にまつわるいろいろな問題があって、それなりにいろいろなものが具体的に進んで、それをみんなが理解しているのかということです。トータルで考えなければいけないと思うのですね。風評被害は漁業だけではなく、他にもある。東日本大震災から今年(2021年)で10年ですが、大熊町などに行ったらわかるけれど、まだ帰還が困難な区域がほとんどで、あの辺の原発事故で避難した市町村のなかで戻って来ている人はまだ少なく、定住率は30%や40%ですよ。
飯田)事故前の人口と比べると。
鈴木)帰還が困難だと言われている大熊町などでは、除染をどうするかというと、「引き続きやります」と地元の自治体は言うのだけれど、「いつまでにどんな形で、どれくらいの範囲の除染が済むのか」ということは計画が煮詰まっていないのです。そうすると、そういうことからして、すべて風評につながって行くわけです。
原発事故は何も解決されていない~政府はすべてを情報公開するべき
鈴木)単なる原発事故の処理水の問題ではなくて、あの原発事故があの地域にもたらしたいろいろな問題があって、これが1つずつ、いまどう進んでいるのか、考えられているのかというトータルなものを出して行くと、また処理水に対しての理解も変わって来ると思うのです。もっと言えば、もっと大変な部分があって、あの被災地は処理水の話だけではなく、原発事故が何も解決されていない、全体が風評をつくっているなと感じるのです。
飯田)現場の方々の東京電力への不信感というのも、事故の対応やその後の説明不足などでの不信感の積み重ねもある。そこには政府も、この問題があるのにしばらく手を付けなかったことに対する不信感なのかも知れないし、全体の構造にはメディアの報道の仕方もあったと思います。その全体の構造に対しての総括や反省がないまま、いまは処理水にフォーカスしているということが確かにあります。
鈴木)いいことも悪いことも含めて、すべては情報公開だと思っています。情報を公開して行くことが前へ進む前提条件だと思うから、そういう意味では、福島の原発事故が抱えているいろいろな負の遺産がモヤモヤとしたまま来ているので、処理水の話も、ある種の疑いのようなものから入っているような気がします。この辺の全体的な総括とか、何がどう進んでいるかということをもっと政府が公表するべきだと思います。
外交努力も必要
鈴木)もう1つは、外交努力を挙げたいですね。韓国や中国がいろいろと言って来るのは目に見えているわけです。頭を下げて「よろしく」と言う必要があるかどうかは別としても、コミュニケーションは取っていたのかなと。この辺の外交のところもチェックしないといけないと思います。
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