ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月16日放送)に国際政治学者・慶應義塾大学教授の神保謙が出演。「まん延防止等重点措置」の適用対象に神奈川、千葉、埼玉、愛知の4県が追加されるというニュースについて解説した。
「まん延防止等重点措置」~神奈川、千葉、埼玉、愛知の4県を追加へ
政府は4月15日、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」の適用対象に、感染者が急増する神奈川、千葉、埼玉、愛知の4県を追加する方針を固めた。適用期間は4月20日から5月11日までで、16日にも専門家らによる基本的対処方針分科会を開き、意見を聴取した上で正式決定するとのことだ。
飯田)まん延防止等重点措置ですから、対象を絞ってというところで、例えば神奈川であれば横浜、川崎、相模原の3市となっていますが、どうご覧になりますか?
神保)大阪で感染が拡大していて、首都圏でも変異株の割合が急速に増えているということと、そして連休を迎えるということです。この状況で「先手、先手」の対策が必要だという判断がなされたのだと思います。分科会の尾身会長も、市中の広範囲に感染が拡がってしまっているという問題意識を示していて、特に変異ウイルスは感染率や重症化率も高いことがわかっているので、「対応が遅れると高まる山が抑えられない」という判断だったのだと思います。
ワクチンが高齢者に行き渡る7月ごろまでは我慢しなければならない
飯田)「まん延防止等重点措置」の適用地域が拡大して行く。一方で、この措置が飲食店に対しては制限ができるけれども、それ以外でどこまでできるのかという話があります。
神保)こういう状況になって来ると、「いつ波を抑えることができるのだろう」ということで、結局、ワクチン普及の遅れに対する不満が高まってしまうわけです。しかも、ウイルスがこれからも変異を繰り返すということになると、この流れを止めるのはワクチン接種しかありません。そうすると、高齢者にワクチンが行き渡る夏ごろですかね。「7月くらいまでは我慢しなければいけない」というのがいまのところの目標だと思います。
40代未満が感染の中心となる新たな変異株がブラジルでまん延
神保)心配なのは、いまブラジルで起きている現象です。別の変異株で「P1型」と言うらしいのですが、厄介なことにワクチン耐性もあるという変異株がブラジルでまん延していて、報道では、30~40代が感染の中心で、集中治療室に入る中等症以上の患者の割合も40代未満の方が上回っているということです。こういうことになると、リスクの局面が変わってしまう可能性があります。これはアメリカでも起きている現象らしいのですが、日本でも要注意だと思います。
飯田)いままでは既往症のある方、そして高齢者の方のリスクが高いと言われていたけれども、これは40代未満ということですね。
神保)いま、ワクチンの配分の順序が医療従事者、高齢者からということなのですが、これで30~40代に感染が拡大すると、かなり厳しい状況になってしまいます。7月までは相当我慢して行くしかない、ということかなと思います。
飯田)現役世代なので、外に行く機会は増えざるを得ないですよね。
神保)社会に別の意味で緊張が走ってしまうのかなと。そういうリスクのある局面ではないかと思います。
人口比率を考えると難しい「ワクチンの分配方法」
飯田)ワクチンについても、都道府県に公平に配るということを重視すると、今度は人口の多いところでは、人口比率でなかなか行き渡らない。一方で、例えば島嶼部などは、人口と比べると過剰に配布されてしまうということになってしまう。この辺りの配分方法も平時のままという感じですかね。
神保)そうですね。傾斜配分をして、リスクの高いところから優先的にということがいいのかも知れませんが、民主主義の世界で「公平に分担しなければいけない」ということが、いまのところ優先されているのではないかと思います。
民主主義国が直面するジレンマ
飯田)この辺り、民主主義国が直面するジレンマのようなものがあるわけですかね。
神保)そうですね。アメリカはワクチン接種が3000万人を突破していて、急速に状況が回復する可能性があるということです。これはイギリスもイスラエルも同様ですので、もし、「しっかりとしたロジスティクスができれば、状況は改善する」という兆しをみんなが持って、それで行動を一致して行くことができれば、民主社会でもこれを克服できるといういい事例になるのではないでしょうか。
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