ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月30日放送)に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。参議院内閣委員会で審議が行われたデジタル改革関連法案について解説した。
デジタル改革関連法案の審議が行われる
デジタル庁の設置や個人情報保護法の改正を盛り込んだ「デジタル改革関連法案」の審議が、4月27日に参議院内閣委員会で行われた。収集した個人データからその人の行動や関心などの情報を機械的に掴む「プロファイリング」を、個人情報保護委員会が適切に規制できるのかが議論になったということだ。
飯田)この個人情報との絡みというところが、クローズアップされています。
デジタル改革は絶対に外せない~特別給付金の給付時に露呈した日本のデジタルの遅れ
野村)まず、大前提として、これまでデジタルに関する取り扱いが省庁ごとに縦割りになっていて、まったく機能しないという状況に日本人はみんな愕然としたわけです。昨年(2020年)行われた、特別給付金の給付時にあれだけ時間がかかってしまった。よその国は数日のうちに振り込まれているという状況を見たとき、「日本はどうなっているのか」という声が多かったわけです。だから、「とにかく改革はしなければいけない」という前提は絶対に外せないところだと思います。
法律の統一と自治体ごとの条例の整理からスタートすべき議論
野村)実は、個人情報に関する法律は、いま3本立てになっていて、法律の統一が必要です。さらに言うと、自治体ごとに条例がありまして、この条例がものすごい数なのです。その結果、何かをしようと思っても、それぞれの地域の条例をクリアして行かなければいけないので、ことが前に進まないのです。こういう状態では、いまの新しい世界に乗り遅れてしまう。ここは何とかしければいけない。ここからスタートすべき議論だと思います。
飯田)いまの個人情報保護法は、「これはやっていいですよ」というものが法律に明記されていて、それ以外は何もできない。いわゆる「ポジティブリスト方式」と言いますが、これを「最低限ここはやってはいけない」という「ネガティブリスト方式」に変えようとすると、やはりハレーションが起きるのでしょうか?
個人情報を政争の争点にしてはいけない~もう少しきめ細やかな議論をすべき
野村)日本という国は、なぜか知りませんけれど、個人情報が政争の争点になっているのです。昔から「日本人全員が背番号を付けられるのか」という「国民総背番号制」のような象徴的な言葉のなかで、とにかく国に管理されることに対する抵抗感があった。
飯田)国民総背番号制。
野村)戦争を経たときに、日本という国が大きな失敗を犯した。それについて、「強く反省しなさい」とアメリカから言われたわけです。徹底的に反省しなさいと言って、反省するのがインテリの象徴だったわけです。そうなると、国家権力にすべて力を持たせてはいけないという、ある意味では戦争の反動なのです。しかし、それでは世界の競争には勝てませんし、今回パンデミックで明らかになった危機管理という側面でも、ものすごく脆弱な国だということがはっきりしたわけです。そこをもう一度、議論を整理し直さなければいけない。これは政治の問題、政争にしてはいけないテーマだと私は思います。もう少しきめ細やかな議論をすべきだと思います。
国民の安心感を確保できるような「個人情報保護」の仕組みが必要
飯田)「住基ネットでも失敗したではないですか」と、メールで“ハルゾウ”さんという北区の方からいただいています。「マイナンバーと健康保険証の結びつきもうまく行かない。デジタル庁の創設はどうなるのでしょうか」というものもいただいております。
野村)実は縦割りに関するもう1つの問題として、先ほどから出ている「個人情報保護」というところを、もう少し柔軟に運用できるようにして行くことが必要なわけです。冒頭にもお話があったプロファイリングのようなものは、行われたときにきちんと適正に規制できるような仕組みをつくることで、国民の安心感を確保する。これがいちばん大事で、「やってはいけない」というゼロリスクに持って行くのではなく、「リスクを発生させるかも知れないけれど、封じ込める」という、この力量が問われる。ここが国の力につながって来ると思います。
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