ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月3日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。中国が行う現状変更について解説した。
国際ルールを守らないと明言する中国への対処
5月2日午前9時35分ごろ、沖縄県・波照間島沖の排他的経済水域で、中国の海洋調査船がワイヤーのようなものを海中に伸ばしているところを、海上保安本部の巡視船が確認した。中国の海洋調査船が沖縄周辺の排他的経済水域で確認されるのは、2019年7月以来だ。
飯田)波照間島の南およそ189キロ、EEZ(排他的経済水域)内ということです。
須田)国際ルール、海洋ルールによると、この種の調査はEEZの管理国の同意を得てからやるということになっているのですよ。中国サイドは日本の同意を得ていないわけですから、ルール違反であることは間違いない。ただ、ここでこんなことをやるのかという話ではなく、大前提として中国は国連海洋法を「守らない」と明言しているわけです。したがって、この種のトラブルが発生したとき、国家間で紛争が発生したときに、それについても国際調停機関であるとか、国際司法裁判所の仲介や審判は受けないと。仮にその結果が出ても、それには従わないということをはっきりと言っています。つまり、これが力による現状変更ということになるのです。
では、これにどう対峙して行ったらいいのか。おそらく今後、この手のことは頻発して来るはずなのです。それにどう向き合うのかということですが、もちろん日本としても単独で抗議をするなり、ペナルティを科すなりするべきです。しかし、やはりこれは多国間でやって行く必要があると思います。
飯田)5月2日は海洋調査船がありましたが、5月1日には与那国と台湾の間を中国海軍のフリゲート艦が通過するなど、本当に現状変更するのだというプレッシャーをかけて来ていますよね。
須田)そうですね。先般のクアッドであるとか、それに代表される中国包囲網に対するメッセージやプレッシャーもあるのでしょうけれども、日本として何ができるのかというところを考える必要があります。5月3日は憲法記念日で、各種マスコミが世論調査をやれば憲法改正の必要性が結果として出て来ているわけですが、一連の中国の動きに対して、日本の有権者がリスクを感じ取り始めているのかなと。そういった問題点があり、目に見えるリアルな形として危機が迫っているからこそ、憲法改正という流れになっているのだと思います。
中国の工作は失敗 日本を“反中”にしている
須田)プレッシャーをかけて来るのはいいのですが、中国はむしろ日本の立ち位置を、反中に追いやっているのではないかということを考えるべきだと思います。
飯田)そういう意味で、工作としては下手なのではないかと。
須田)失敗しているのではないかと思いますね。
飯田)なるほど。でなければ、もはや眼中にないかのどちらかですか?
須田)そうですね。むしろ日本の親中勢力と連携するよりも、実力で現状を変更して行こうと。もっと言えば、台湾統一であるとか、尖閣の問題についても話し合いをすることなく、「力による現状変更をしようとしている」と受け止めてもいいのかなと思います。もし中国が動きを見せた場合に、日本として何ができて何ができないのか、何をやるべきなのかというところを考える必要があります。
飯田)いま必死にいろいろなシグナルを、特にアメリカや日本は出しています。もし台湾に手出しするようなことがあったら、大変なことになると。それに絡んで、日米首脳会談もそうでしたし、その前の2プラス2もそうでした。今度はイギリスも空母を出して来て演習をするとか、だんだんと構図が固まりつつあるのですかね。
須田)大前提として、アメリカは少なくともオバマ政権までは関与政策といって、中国と積極的に経済面でも関係を持つことにより、中国の人権や民主化を促して行くというスタイルをとっていたわけです。しかし、トランプ政権以降、いまのバイデン政権もそうですが、関与政策は間違いだったと位置付けている。今後は強く中国と対峙するという形に舵をきったわけですから、中国もそれに対して動きを加速させる、エスカレートして行くことは間違いない。その間にある日本は何をやるべきなのか、ということを考えるべきだと思いますね。
飯田)そうすると、いままでのような守り方ができるのか。北朝鮮なども念頭に置きながら、敵基地攻撃能力なども議論されて来ていますが、そのようなことも必要になって来るのでしょうか?
中国との経済関係を単純に深められない
須田)そうですね。加えて経済安全保障という言葉が最近出て来ています。いままでのように中国との経済関係を深めて行っていいのか、というところも考えてみるべきだと思います。
飯田)その点で、日経新聞の1面に小さな記事で載っていましたが、
『経済安保担当役員、設置要請へ 政府、主要企業に』
~『日本経済新聞』2021年5月3日配信記事 より
飯田)……という記事も出ています。
須田)純粋に軍事という意味での安全保障と、経済は切っても切れないというところが鮮明になって来ています。例えばデジタルセキュリティ分野などを考えてみると、よく「政冷経熱」という考え方がありますが、そういう考え方ができない状況になって来ていると。人権問題もそうです。「新疆産の綿を使うのか、使わないのか」という部分など、安全保障だけではなく人権問題も絡んで来ていますから、企業にとっていま考えなくてはいけないのは、いいとこ取りはできないということですね。
飯田)そんななかで地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が、参院本会議で可決されましたよね。これを機会に「出ようか」と検討している企業もあるかも知れませんが、リスクは大きいということでしょうか。
須田)そうですね。RCEPのありようも、どうなって行くのかということをきちんと見極めないといけません。RCEPとはある種、関与政策的な考え方のなかでつくられて来たものです。状況が変われば、RCEPのありようや実効性も変わって来ることは間違いないと思います。
飯田)あるいは、枠組みとしてはあるけれども、ほとんど使えないものになってしまう可能性もある。
須田)ある日をもって突然使えなくなるのではなくて、徐々に有効性を失って行くのではないかと。そう考えると現実的ですよね。
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