『地獄に堕ちろと言え』~ミャンマー軍が参考にしていると思われる「スリランカモデル」の恐ろしさ

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月11日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。ミャンマー軍が民主派政府などをテロ組織に指定したニュースについて解説した。

国連大学前で行われた、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏らが拘束されたことに対する抗議デモ=2021年2月1日、東京都渋谷区 写真提供:産経新聞社

ミャンマー軍が民主派政府などをテロ組織に指定

クーデターで全権を掌握したミャンマー軍は、民主派勢力が発足させた独自の政府や防衛隊などをテロ組織に指定し、民主派への弾圧をさらに強めている。ミャンマー軍がテロ組織に指定したのは、アウン・サン・スー・チー氏を支持する民主派勢力が発足させた「国民統一政府」や、市民を守る独自部隊である「国民防衛隊」など。また、今回指定された組織に接触した人は、ジャーナリストも含め処罰の対象となる。

飯田)ミャンマー情勢は、市民の殺害も700人を超えて来ているという、大変なことになっています。

奥山)拘束された人がもう4000人近いということです。

飯田)日本人ジャーナリストの北角さんも。

「挙国一致政府」をテロ組織に指定~内戦に突入しつつあるということ

奥山)「挙国一致政府」という軍事政権が対立する民主派勢力に対して、テロ組織に指定したというところが極めて象徴的だと思います。

飯田)そうですね。

奥山)軍事政権側が「対テロ戦」というフレーズに入って来たということが、私たちの認識を変えなければならないところです。ある意味、内戦に突入しつつあるという認識を持たなければいけません。

飯田)内戦に。

奥山)ミャンマーは、1988年と2007年にも反乱のような動きがありましたが、そのときも同じように対テロ戦を行って軍事政権が弾圧しています。彼らが何をどのようにやっているのかということを、我々は知らなければならないと思います。

飯田)彼らというのは国軍側ですね。

奥山)ミャンマー軍が参考にしているのはスリランカです。

飯田)スリランカ。

奥山)インドの下にある小さな島国です。イギリスが統治していたところなのですが、あのスリランカでも、同じような苛烈な内戦がありました。1983年ぐらいから2009年まで、長いことやっていました。最後の内戦のときには、かなり苛烈な対テロ戦をやっていて、ほとんど虐殺に近いのではないかと言われています。そのやり方が、ミャンマーがいまやっていることと似ているということを、指摘しておきたいのです。

ミャンマー第2の都市マンダレーで、国軍のクーデターに抗議して行進するデモ隊(ミャンマー・マンダレー)=2021年3月27日 EPA=時事 写真提供:時事通信

ミャンマー国軍が参考にする「スリランカモデル」

奥山)戦力関係者の間で有名な「スリランカモデル」、「ラージャパクサモデル」とも呼ばれるものがあります。

飯田)ラージャパクサと言うと、大統領ですか?

奥山)いまのスリランカの大統領です。「タミル・タイガー」という反乱勢力がスリランカにいたのですけれど、「私たちはこうしてその勢力を弾圧したのだ」ということを言っています。

飯田)当時ニュースになっていましたよね。

テロに対抗して行くための8大原則

奥山)彼らは歴史上、最初に自爆テロを使ったのではないかと言われるくらい、激しい独立運動を展開して話題になりました。20年~30年にわたるこの内戦を管制したのは、このラージャパクサさんという大統領なのですけれど、彼は「スリランカモデル」として、「テロに対抗して行くための8大原則」というものをインタビューで語っています。

飯田)8大原則。

「弾圧する政府側は揺るぎない政治意志を持て」「国際的な意見を聞かず、目標達成を邪魔させない」

奥山)それがどういうものかと言うと、1つ目に、「弾圧する政府側は揺るぎない政治意志を持て」と。「絶対に屈しないという意志を持て」と言っています。2番目、これは大事です。「国際的な意見を聞かず、目標達成を邪魔させない」と。

飯田)国際的な意見を聞かず。

奥山)目標達成を邪魔させないばかりか、外から言って来る者に対しては「地獄に堕ちろと言え」と言っているのです。恐ろしいですね。3番目に、テロ勢力、いまのミャンマー側にしたら民主派勢力です。「挙国一致政府」側となりますが、「交渉は決してしない」と。

飯田)交渉はしないのですね。

紛争情報に関してはこちらから一方的に伝えるだけ

奥山)絶対に許さないということです。4番目に、「紛争情報に関してはこちらから一方的に伝えるだけ」だと。これは大事で、メディアを独占するということです。

飯田)なかで何が起こっているのかわからない。

奥山)わからないですね。実際に2月1日からクーデターという形で軍事政権が発足しているのですけれども、その時点から段階的に、まず夜の通信を使えないという状況にして、いまはインターネットも外とつながっていない状況になっています。このように、弾圧する地域全体のメディア、情報をすべて独占してしまうという意思を持っています。それはスリランカでも「こういうことが起こっていました」ということで、参考になるものではないかと思います。

飯田)なるほど。

奥山)それから「反乱勢力の完全な敗北を邪魔するような政治介入は阻止する」。そして6番目です。「治安部隊に完全な作戦上の自由を与えて、最高の男たちに仕事をさせろ」と言っているのですよ。そういう形で、弾圧する側にやらせろという怖い話でもあるのです。

飯田)統制をあえてしないということですよね。

奥山)若手指揮官に任せるということです。しかもスリランカは2009年の時点で、これで成功しているのです。このモデルを使っていると断定はできないのですが、おそらくミャンマー側もこのくらいの強い意思を持って、ことに及んでいるのではないかと見ています。

ミャンマーの与党、国民民主連盟(NLD)を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問(ミャンマー・ネピドー)=2020年4月13日 AFP=時事 写真提供:時事通信

「スリランカモデル」を実行しているミャンマー国軍へのアプローチは難しい

飯田)こうなると外からアプローチをして行くのは非常に難しいですね。

奥山)難しいと思います。「これで成功している」というところもありますし、ミャンマー側としては、いくら経済制裁されてもそんなものは何でもないと。「揺るぎない政治意志でやるのだ」という原則がスリランカの方でもありますし、実際にミャンマー国軍の動きを見ますと、4000人拘束しようが、700人殺そうが、関係ないというところです。

飯田)手を緩めない。

奥山)手を緩めない。日本は交渉して「平和に、穏便に」と言いますけれど、やっている当事者としては、生死をかけた争いということになります。こういう厳しい現実が展開されていることは、日本には伝わって来ない部分もあるのですが、そういう考えを持っている人がいて、しかも実行されているという現実を私たちは知らなければならないのではないでしょうか。

中国が香港に対して行っていることも「スリランカモデル」と同じ

飯田)香港もこれと似たような形ですね。

奥山)その通りです。

飯田)民主化勢力と交渉しない。メディア独占ができなかったから、いろいろなことが伝わっては来ましたが、結局は、民主的な自治がほぼ取り上げられてしまう形になっています。

奥山)まさに「揺るぎない政治意志」です。北京の意思というものが貫徹されている部分はありますし、国際的な意見も聞かない。まさに同じです。目標達成は結局、邪魔させていないですよね。香港でも一緒です。そういう意味では、中国も似たような考えを持っているというところだと思います。

飯田)そう考えると、90年代にあったような、予防的な介入のようなことをしないとならないのでしょうか?

奥山)そうですね。逆に民主派勢力は、武力を持たないと弾圧されるだけになってしまうと。

飯田)完全な内戦になるということですか?

奥山)実際にインタビューを見ていると、民主派勢力側も「我々も武力を持たなければいけない」と明言しています。これはまた内戦になってしまう、もしくは武力に優れるミャンマー国軍側が弾圧して終わりということになるのではないでしょうか。非常に厳しい現実があるということを私たちは見なければいけません。

飯田)そして国連を含めて無力であると。

奥山)「国連の介入を認めない」と原則のなかで言っていますし、その通りだということですね。

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