ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月2日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。6月21日から開始されることになった職域接種について解説した。
6月21日から企業・大学での職域接種を開始
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加藤官房長官は6月1日の記者会見のなかで、新型コロナウイルスのワクチン接種を加速させるため、企業や大学などで行う「職域接種」を21日から開始すると発表した。市区町村や自衛隊による高齢者接種などと並行して進め、菅総理が目標に掲げる「1日100万回接種」の実現を急ぐ考えである。
飯田)職域接種で使用するのも、モデルナ製のワクチンだということです。
ワクチンを理解していない朝日新聞の記事~誰かがワクチンを打てば日本全体の集団免疫は一歩進む
佐々木)トヨタや日本航空、住友生命、楽天などはやるということです。いいことだと思うのだけれど、朝日新聞が6月2日の朝刊で、
『職場接種、人員確保や公平性に課題 コロナワクチン』
~『朝日新聞デジタル』2021年6月2日配信記事 より
……という記事を掲載しました。「接種するのが、大企業の正社員に偏ってしまうのは公平ではなくなる、不公平感が高まる恐れがある」と指摘しているのだけれども、朝日はワクチンをまったく理解していないですね。
飯田)理解していない。
佐々木)「自分が打てば自分だけが得をする」のではなく、誰かが打つと、日本全体の集団免疫は一歩進むのです。自分が打っていなくても、他の人が打ってくれれば必ず得をするのです。反ワクチンの問題もよく言われていますが、反ワクチンの人がワクチンを打たないのは個人の自由ですけれど、周りの人が全員ワクチンを打ってくれたら、反ワクチンの人も感染しなくなるのです。だから実は「反ワクチンの人は、一種のフリーライダーだ」と、「タダ乗りしている」という話があります。
打てるところから積極的に打つことが大切
佐々木)これは反ワクチンを批判する言説として言われていますが、逆に言うと、周りの人が打ってくれれば、自分のワクチン接種が遅れたとしても、それは自分にとっても得になるということなのです。だから「ワクチンは公平性など考えずに、打てるところから積極的に打ちまくって、とにかく早く打つことが大事なのだ」ということは、ここ数ヵ月、医療関係者が声を大にして言い続けていることです。なぜその知見を朝日新聞はまったく理解していないのか。
飯田)記事のなかには川崎医大の中野先生の話を引いて、「他人を守るための接種という意味合いを増す」というようなコメントが出ているのですが、見出しは「人員確保や公平性に課題」という、真逆ですよね。
佐々木)川崎医大の中野先生から聞いているのに、なぜこの見出しにしてしまっているのか。
「公平さ」を打ち出し過ぎると、接種の遅れにつながる
飯田)ミクロなというか、1人1人の感情の部分で見ることと、全体で集団免疫を獲得するという公益のようなものが……。
佐々木)全体最適化と部分最適化という言葉がありますけれど、そもそもコロナは壮絶な対局戦なので、「全体最適でいかに被害を減らすか」ということが大事なわけです。華々しい戦果などはないのです。ただ部分最適化で見てしまうと、ある部分を見れば必ず被害は出ている。対局戦だから。
飯田)そこをクローズアップして、酷いことが起きていると。
佐々木)でも全体的に見れば被害は、「以前は1万人亡くなりそうだったのが、いまは1000人に減りました」と、そういう数字が出て来るはずなのですが、そこを見ないということが問題です。
飯田)高齢者に「急げ」と言っているのに、どうしてだということを言う人もいますが、結局、「集団免疫を獲得すれば、高齢者を守ることにもなる」ということですよね。
佐々木)墨田区のように、他の区に先んじて一般接種を始めているところもありますし、やれるところは積極的に先に進めるべきです。そうしないと、「余ったものを一般接種に回してしまうと不公平だから廃棄する」という行政が一部出て来ましたが、ああいうことになってしまうのです。「公平さ」を打ち出し過ぎると、接種が遅れて社会の迷惑になるのでやめて欲しいですね。
先行して接種率の上がっている県には優先的に傾斜配分
飯田)河野大臣は6月1日、先行して接種率が上がって来ている5県ほどに関しては、「優先的に傾斜配分をする」ということも打ち出しています。
佐々木)競争原理を持ち込むというのは、行動経済学的な発想で面白いと思います。人間の行動は、「こうやりましょう」と言っているだけではなかなか動かないけれど、そこに競争原理を持ち込んだり、誘導したりすると意外に「スッ」と動くものです。徐々にこの1年のなかで、そういうやり方を学んで来ているというのは、面白いなと思います。
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