安倍前総理が消費増税を避けられなかった「2つの壁」の存在
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月16日放送)に安倍晋三前総理大臣が出演。総理大臣在任時に悩み、実行したさまざまな事柄について語った。
経済政策、消費税増税について
安倍前総理が特別インタビューとして6月14日(月)~18日(金)のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に毎日出演。ここでは安倍政権時代に行った経済政策と消費増税について訊いた。
飯田)数量政策学者の高橋洋一さん、安倍さんのブレーンなどという言われ方をしましたが、最近お会いになりましたか?
数量政策学者・高橋洋一)最近は電話が多いですね。
飯田)安倍さんは議連の集まりなどに講師として出たりしていますが、外交安保なども含めていろいろなところで名前が出ています。
高橋)出ていますね。お元気ですよ。
飯田)今回は経済政策について、特にアベノミクス、それから消費税増税についても伺っております。
経済における最大の責任は、「働きたい人に仕事がある国をつくること」~雇用をつくるには金融政策が必要
飯田)雇用が回復して行くというなかにおいて、そのタイミングで学卒で出て来る若い人たちからすると、それ以前に生まれて来た子たちとはまったく別の環境になって来ました。私も1981年生まれで就職氷河期世代でして、とても苦しんだわけです。安倍さんの政権で、「右傾化している」などということも言われましたが、経済の部分で支持していたのは若い人たちが多いと思いました。経済政策を打つにあたって、若者の雇用については意識されたのですか?
安倍)若い皆さんが、将来に夢や希望を失うような国に未来はないだろうと私は思うのです。経済における最大の責任は、「働きたい人に仕事がある国をつくること」だと思います。我々が政権を奪還するまでの状況は、高校、大学を卒業して、どんなに頑張ってもなかなか仕事がないという状況でした。これを変えなければいけない。
飯田)仕事がありませんでした。
安倍)そこで私たちは、「3本の矢」の政策。自民党政権として、金融政策を含むマクロ政策を選挙で掲げたのは、私たちが初めてだったと思います。かつて「所得倍増計画」というものがありましたが、これは言わば産業政策であり、あのときは金融政策は掲げていません。我々がデフレから脱却しなければならないという状況において、または雇用をつくって行くということにおいては、金融政策が大切だと。
飯田)金融政策が。
安倍)いままでは日本銀行に丸投げをしていて、政治は口を出してはいけないのではないかと言われていた。そこで、金融政策がとても大切だということを再認識しながら、その役割を果たしてもらおうとしたのです。具体的な政策はもちろん日本銀行が行いますが、日本銀行と政府が2%という物価安定目標を共有し、アコードを結んだわけです。
飯田)なるほど。
安倍)その後、黒田総裁になり、異次元の金融政策を行うことによって、デフレではないという状況をつくるなかで、雇用をつくり出すことができた。先ほど申し上げたような、若い皆さんが仕事を選べる状況になった。自分たちの先輩の時代とはずいぶん違う状況になった。これが若い皆さんに支持していただいた大きな理由の1つです。
インターネットの情報は偏っていると批判する人もいるが
安倍)実はもう1つあって、若い皆さんはインターネットを駆使しながら、世界の出来事のいろいろな情報を自分で集めることができます。「ネットの情報は偏っている」と言う人もいるのですが、確かに偏っている情報もありますけれど、情報はたくさんあるのです。そのなかから、「何が真実か」ということを彼らは選び取ることができる。「ただ単にネットで偏った情報を得ている」と言われることくらい不愉快なことはないと、皆さん言っていますね。
飯田)自分たちはいろいろな情報を見ながら、何がベストかというものを選び取っているのだと。
安倍)そういうことですね。
消費増税をした理由~もっと思い切った財政措置が必要だったのかも知れない
飯田)そうやって経済が浮揚して来たというところで、一方、この政権は2回にわたって消費税を増税しました。特に1回目は、「増税後、経済はすぐに回復する」といろいろな経済の専門家の人たちもおっしゃっていたけれども、なかなか回復しなかった。「早過ぎたのではないか」、「もっと伸ばせたのではないか」などと言われましたが、消費増税についてはいかがでしょうか?
安倍)消費税を8%、10%に上げて行くということは、私が総裁になる前に、既に自民党と公明党、そして当時の民主党の三党合意で決められたことです。三党合意は重要なものであり、自民党が野党時代に決めたことです。総裁選挙においても、三党合意を重視するという考えを私は表明していました。ただ、消費税を増税することはデフレ効果があります。しかも、いままでの債務をなくすために使うのですから、デフレ効果が間違いなくあるわけです。
飯田)それを投資などに使うのではない。還元するのではないから。
安倍)借金返しに使うわけですから。それは我々も承知しておりました。しかし、安倍政権がスタートして経済は非常に好調だったのですね。もちろん株価も上がるのですが、雇用も改善して、経済界もある程度の引き上げに応じてくれました。労働市場も徐々に対等になって行くという状況があり、それであれば、既に法律によって決められている消費税を引き上げても大丈夫ではないかと。そのための思い切った財政措置等もやるということで、消費税を引き上げました。
飯田)引き上げた。
安倍)確かにいま飯田さんがおっしゃったように、私たちの予想よりも大きな消費の縮小が見られました。成長が回復したのちも、それまでの勢いが失われたのは事実です。ですから、2回目の消費税の引き上げについては2回延長したのです。これについても「やめればよかったではないか」という方もおられるのは十分承知しているのですが、党内的にも「上げるべきだ」という人もずいぶんいます。「絶対に上げるべきだ」という最強の省庁も存在するわけです。そこで2回目には、ほとんど借金返しに使っていたものを、半分は国民の皆さんに幼児教育の無償化、高等教育の無償化という形でお返しする判断をしました。幼児教育の無償化などは、簡単にはできないのですが、この機会だから私もできたのではないかと思います。さまざまな反省点はありますが、もっと思い切った財政措置が必要だったのかも知れません。
「三党合意」と「自民党内の増税派」の存在
飯田)消費増税については、少し後悔のようなものもありますかね。
高橋)消費税増税ね。私も何回も聞きました。「消費増税しなければ、もっといい点数がつけられるでしょう」と聞かれたのです。「まったくそうですね」と。
飯田)1回目の消費増税のときも、大勢のエコノミストと呼ばれるような人たちは「増税しても大丈夫だ」と言っていました。
高橋)嘘ですよ。「あれは嘘だったでしょう」と言ったら、「そうだったね」ということは言っていました。それでも2回目をやったわけですが。「三党合意があってどうしようもないのだ」ということを言っていました。それと、「自民党のなかだから、増税派がたくさんいるので大変なのだ」ということも言っていました。
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