みそにまつわるさまざまな研究をする、広島大学の名誉教授・渡邊敦光さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)に出演。古くから食べられているみその歴史、アミノ酸、ビタミン、カルシウムや鉄分など豊富に含まれているという栄養素、意外な健康効果について紹介した。
渡邊教授はアメリカ、イギリスで主に放射線生物学の研究を重ね、退官後も名誉教授として日々研究を続けている。専門は実験病理学と放射線生物学で、長年にわたり、がんがどのように生まれ進展するか、どうすれば予防できるかを研究。1980年からは、みその有効性について動物実験に基づく研究を本格的に始め、著書『味噌大全』(東京堂出版)、『1日2杯のみそ汁で健康寿命を延ばす!』(ナツメ社)などを刊行。
■徳川家康はみそ汁を一日三食も食べていた
上柳:「みそ」って、大河ドラマ的なものを見ていたりすると、鎌倉時代ぐらいは結構みんなみそ汁を飲んでいるイメージがあります。
渡邊:ご飯にみそ汁をかけて食べる「ぶっかけご飯」が始まったのは鎌倉時代です。「いざ鎌倉」の時に呼び出されたらすぐに行かなければいけませんから。
上柳:みそが好きだった、みそ汁が好きだったことで知られる、有名な歴史上の人物っていますか?
渡邊:徳川家康は、三食、具だくさんのみそ汁を食べていたと言われています。
上柳:おお~! そうなんですか!
渡邊:家康は75歳まで生きた、と言われていますよね。
上柳:昔の人たちは「みそは体にいい!」ということを、なんらかの形で知っていたのでしょうかね?
渡邊:知っていたと思います。戦争の時に、みそを持って行くことが当たり前で、スタミナ食だったんです。
上柳:なるほど。
■みそはスタミナ食
渡邊:宣教師が日本に来た時、明治時代で外国人が日本に多く来ましたよね?
上柳:日本を見ましたね。
渡邊:ふんどし一つで日光から江戸まで行って、とにかくその当時の日本人は非常にタフで元気だったそうです。
上柳:持久力があったってことですね?
渡邊:そうです。
上柳:ペラペラの着物を羽織ってブワーッと駆けて、でも割と早い時間に着いちゃうと。そんな日本人に、外国から来た人達はビックリしたわけですね?
渡邊:そのことが実際に本に書いてありまして。一組には肉を食べさせ、もう一組には日本食を、ご飯とみそ汁を食べさせたと。そして、「よーいドン」で競争をさせると、肉を食べさせたグループは途中でへばってしまったそうです。
上柳:粗食と思われる米とみその方が、持続力や体力があったと。当時、そんな実験をやったんですか?
渡邊:そうです。
上柳:面白いですね!
■みそには体に必要な栄養素が全部入っている!
上柳:みそは栄養素としてどんなものが含まれていて、何が体にいいのでしょうか?
渡邊:アミノ酸がたくさん入っていて、ビタミン、ミネラルなど体に必要なものが全部入っているわけです。
上柳:先生の著書『味噌大全』に、どんなものが入っているのか一覧になっていますが、すごいものですね。
渡邊:発酵の力ってものすごいんですよ。
上柳:イソフラボンや、“若返りのビタミン”といわれているビタミンE、疲労回復・スタミナ強化のビタミンB群、余分な塩分の排出を促して高血圧を予防するカリウム。みそは高血圧にもいいのですか?
渡邊:僕らの実験では、ネズミにみそを食べさせて血圧を測ったところ、食塩だけを食べさせた時と比べると、血圧が下がるんです。塩分がいっぱい入っているから、みそを食べたら血圧が上がるという仮説を立てていたんですが。
上柳:そうですよね。
渡邊:だけど、ネズミの血圧は上がらなかったんです。そして最近、2年くらい熟成させたみその中に、血圧を上げないようなものが入っていることも分かってきました。
上柳:他にもまだまだありますね。骨を強くし、神経の高ぶりを抑えるカルシウム、コレステロールを下げるリノール酸。そして、貧血を防ぐ鉄分も。鉄を取るのって大変ですけど、みそに入っているんですね。
渡邊:本当にいろんなものが入っていて、それらが発酵することで、熟成の期間でまたプラスアルファのものができるわけです。
上柳:みそには、まだ分からないことがあるということですか?
渡邊:山ほどあります。僕はみそを研究し始めて30年になりますが、30年経って、ほんの入り口が見つかった感じです。
上柳:ええっ!?
渡邊:学問ってそんなものなんですよ(笑)
■高血圧や生活習慣病には1960年代の日本食がいい
上柳:がんや高血圧、脳卒中といったものにも、実はみそを適量とることがとてもいいんだ、ということが先生の著書の中にたくさん書かれていましたね。これらは一つ一つ、実験をやられているわけですか?
渡邊:実験をしております。例えばアメリカでは1980年ぐらいに、高血圧や生活習慣病が非常に増えてきたんです。それで食生活を改善しようとしたわけです。
上柳:はい。
渡邊:その食事は、1960年代の日本食が一番いいってことになったんです。それから20年後に、例えばがんが減ったり、高血圧が減ってきたり、これは臨床的に証明されたんですよ。
発酵食品であるみそには、体に必要な栄養素がたっぷり入っており、高血圧をはじめ、がん、脳卒中などさまざまな病気の予防など、知られざるパワーがあるという。みそ汁は作るのも簡単。ワカメ、豆腐、ネギといった定番の具材のほかにも、玉ねぎ、卵、きのこ類や鶏肉などいろいろな食材と合う。毎日手軽に、飽きずに食べられ、おいしいだけではない、みそのチカラを知って、健康な体を目指してみてはいかがだろうか。
渡邊敦光名誉教授と、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/