ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月14日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。政府が酒類販売業者に要請していた飲食店への酒類の販売自粛の“撤回”について解説した。
飲食店への酒販売停止要請、政府が撤回へ
政府は緊急事態宣言下で、酒を販売する事業者に対して、自粛要請を守っていない飲食店との取引を行わないよう要請していたが、与党からも反発が相次いでいることを踏まえて撤回する方針を固めた。
飯田)西村担当大臣が、飲食店への要請の順守を国税庁から卸売りにプレッシャーをかけた、あるいは金融機関経由などという話も出しておりましたけれども、撤回したということです。
特措法では法律的に販売を制限できない
高橋)2つとも、同じ問題なのです。金融機関に対するものと酒類の販売は、両方とも許認可業種で、もとは旧大蔵省の団体です。だから「言うことを聞く」ということが前提になっているのです。ただ、この手の話は法律の範囲内でしかできないのですよ。「法律の範囲でできないことはやってはいけない」という大原則があります。特措法自体が非常に緩い、私権制限がない法律なので仕方ないのです。それなのに、こうやって、監督官庁の言うことを聞く業界だけにやるのはまずいですよ。
飯田)結局、特措法ではできないから、迂回するような話。
高橋)それはダメです。特措法も不十分なのです。憲法の緊急事態条項があって、それに基づく法的措置というのがいちばん望ましいのです。その範囲であれば、何の問題もありません。
制限をするのならば、憲法上の規定が必要
飯田)一部指摘もありますが、営業の自由など、憲法に抵触してしまう。
高橋)本当は憲法上の規定が必要なのです。それに基づく法律措置が必要であり、その上でやるべきことなのです。それをやらずに、やるということはあり得ないですよ。
「優越的地位の濫用をやれ」は、「法律違反をやれ」と言っているようなもの
飯田)金融機関への取引に関しても、銀行の知り合いに聞くと、「自分たちは優越的地位の濫用と取られないように、とても気を付けながら取引しているのに、それを政府が奨励してしまうのか」と話していました。
高橋)独禁法違反でね。それは金融機関だけではなく、お酒の販売業者に対しても同じです。「優越的地位の濫用をやれ」ということは、「法律違反をやれ」と言っているようなものです。それであれば、法律で「緊急事態で仕方がないから、こういう要件でやれ」とか「こういう要件であれば、一時的にはいい」という規定がなければいけません。
飯田)憲法の遵守義務もある官僚の方々は当然、法律の建付けについてはよく知っているはずですよね。
高橋)すぐにわかるはずです。ですので、聞いた途端に「アウト」だと思いました。
やるのであれば「超法規的措置」でやるしかない
飯田)しかし官邸から出て来て、根回しまで済んでいたということですが。
高橋)誰かが言わなくてはいけないのです。「これはできませんから、もしやるのであれば、憲法の規定を変えて緊急事態条項をつくり、それに基づく法律措置をしてください」「それ以外に、我々はこんな超法規的措置はできません」という言い方です。
飯田)受け止め方としては、高橋さんもこれに関しては、超法規的措置だということですか?
高橋)やるのであれば、総理も「超法規的措置でやる」ときちんと言ってね。
飯田)それは相当、政治的な力を使うことになりますよね。
高橋)逆に言うと、今回の緊急事態宣言自体が危ういのです。合理的な根拠があれば、説明できるのです。緊急事態だから、「どうしても超法規的措置を取るしかない」と言い、国民が納得すれば、それはそれであり得るのです。
飯田)仕方がないから超法規的措置を取るのだと。
重症者は減って感染者だけが増えている~感染者の多くはリスクの少ない若者
高橋)それがあやふやだからできないのです。あやふやというのは、重症者の割合が下がって、感染者だけが増えている。感染者はほとんど若者です。若者はリスクがないから動くのです。そういうときに緊急事態宣言をするということ自体が、実は意義が問われているわけです。そこがきちんとしていないから、こういうときにボロが出てしまうのです。
飯田)国民もそうだし、飲食店を経営されている方も、その辺を見透かして「おかしいのではないか」と思いながらやっているところがある。
高橋)感染者が増えているけれども、若い人にとってのリスクは死亡確率を計算すると、交通事故より遥かに低いのです。交通事故より遥かに低いのに、緊急事態宣言というのは、おかしいでしょう。交通事故の確率が低いのに交通制限をするのかということです。
飯田)「車に乗ってはいけない」という。
高橋)それと同じような話ですよね。今回の緊急事態宣言自体があやふやだから、ボロが出てしまうのです。
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